
愛着のある車なので、時価額を超えても修理費用を支払ってもらいたい!
この記事は、このような考えをお持ちの方のために書きました。
こんにちは!弁護士の山形です。
今回は、対物超過特約のポイントについて解説しています。
時価額よりも修理費用が高くついてしまうような場合でも、加害者が対物超過特約に加入していて、この特約を使えば、修理費用が支払われる可能性がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
本記事を執筆した弁護士
目次
この記事の結論
- Q1. 対物超過特約とは?どのような場合に役立つのか?
- A1. 対物超過特約(対物超過修理費用特約、対物差額修理費用補償特約などとも呼ばれる)は、交通事故の相手方の車の修理費用が時価額を超える場合に、その差額を補償する特約。通常、対物賠償保険では車の時価額までしか補償されず、裁判・交渉でも時価額までしか損害として認められない(最判昭和49年4月15日=全損時の時価額賠償の原則)。しかし、加害者側がこの特約を使うと、時価額を超える修理費用についても保険金が支払われる。被害者にとっては「古い愛車を修理して乗り続けられる」メリットが、加害者側にとっては「交渉がスムーズに進み早期解決できる」メリットがある。
- Q2. 対物超過特約の限度額はいくらか?
- A2. 保険会社によって異なるが、「1事故1台あたり50万円」が一般的。計算式は「(修理費用-時価額)×加害者の過失割合」で、これが50万円を上限として支払われる。例えば、時価額30万円・修理費用50万円・加害者の過失割合70%のケースでは、差額20万円×70%=14万円が特約から支払われる。ただし、チューリッヒやソニー損保など、「無制限」を選択できる保険会社もある。また、無制限であっても、新車価格が実質的な上限となる取扱いが多い。
- Q3. 被害者側から加害者側に対物超過特約の使用を請求できるか?
- A3. できない。対物超過特約を使うかどうかは、加入している加害者側(被保険者)の自由であり、被害者側に請求する権利はない。そのため、加害者が特約に加入していることが判明しても、加害者側が使用を拒めば、被害者は時価額までの賠償しか受けられないのが原則。交渉を進める際は、特約の使用可能性を探りつつも、最悪のケース(特約不使用)を想定した戦略も必要となる。
- Q4. 対物超過特約を使ってもらう際の注意点は?
- A4. 最大の注意点は「事故日の翌日から6ヶ月以内に実際に修理をすること」が条件になっていることが多い点。保険会社によっては1年以内(SOMPO「おとなの自動車保険」など)のケースもあるが、6ヶ月が主流。修理をしないと保険金は支払われないため、「修理費用相当の示談金を受け取って、修理はせず買換する」という処理は原則できない。また、修理前に示談を成立させてしまうと、後から被害者が修理しない方針に変わった場合、特約が使えなくなるリスクがあるため、示談のタイミングにも注意が必要。
対物超過特約って、どんな保険?
交通事故で車が破損して、時価額を超える修理費用が掛かってしまうような場合、対物賠償保険では、時価額までしか補償されず、通常、裁判や交渉でも時価額までしか損害として認められません。
これは、最高裁昭和49年4月15日判決などが示した考え方で、車両が物理的に修理可能であっても修理費用が時価額を上回る場合(いわゆる「経済的全損」)には、時価額を超える修理費用を請求することはできないという実務が確立しているためです。
例えば、年式の古い車で時価額が30万円の車が事故に遭い、修理費用が70万円かかったとします。この場合、対物賠償保険から支払われるのは時価額の30万円まで。残りの40万円は、被害者が自己負担するか、修理を諦めて車を廃車・買換するしかない、というのが原則的な取扱いです。
しかし、事故の相手方が対物超過特約を使用すれば、時価額を超える高額な修理費用についても保険金が支払われることになります。
時価額を超える修理費用が支払われるというのは、あなたにとってのメリットですが、一方、特約を使用する事故の相手方にとっても、交渉がスムーズに進み、事件が早く解決するというメリットがあります。保険会社側としても、示談が長期化すると人件費・事務コストが増えますし、紛争が訴訟に発展するリスクもあるため、対物超過特約を積極的に使用する方針の保険会社は少なくありません。
対物超過特約の正式名称と呼び方
対物超過特約は、保険会社によって名称が異なります。以下は代表的な呼び方です。
- 対物超過特約
- 対物超過修理費用特約
- 対物差額修理費用補償特約(チューリッヒ、SBI損保など)
- 対物全損時修理差額費用特約(SOMPO「おとなの自動車保険」など)
- 対物超過修理費用補償特約
名称は異なりますが、いずれも「時価額を超える修理費用の差額を補償する」という基本的な仕組みは共通しています。加害者側の保険会社に特約の有無を確認する際は、「対物超過」というキーワードで聞けば通じることがほとんどです。
対物超過特約の限度額:1事故1台あたり50万円が一般的
対物超過特約の支払限度額は、ほとんどの保険会社で「1事故1台あたり50万円」となっています。確認された各社の限度額は以下のとおりです。
- チューリッヒ:「50万円」または「無制限」から選択可能(対物差額修理費用補償特約)
- ソニー損保:「1台あたり50万円」を限度(対物賠償に自動付帯)
- SBI損保:「50万円」を限度(対物差額修理費用補償特約)
- 三井住友海上:「50万円」を限度
- 東京海上日動:「50万円」を限度(対物超過修理費特約)
- SOMPO「おとなの自動車保険」:「50万円」を限度(対物全損時修理差額費用特約)
- あいおいニッセイ同和損保:「50万円」を限度
実際に支払われる保険金の計算式は、以下のとおりです。
保険金額=(修理費用-時価額)×加害者の過失割合 ※50万円または契約時の限度額を上限
具体例で確認しましょう。
例1:過失割合が加害者100%・被害者0%、時価額30万円、修理費用50万円のケース
- 対物賠償保険から:30万円(時価額相当)×100%=30万円
- 対物超過特約から:(50万円-30万円)×100%=20万円
- 合計:50万円(修理費用全額が保険でカバーされる)
例2:過失割合が加害者80%・被害者20%、時価額50万円、修理費用150万円のケース
- 対物賠償保険から:50万円(時価額相当)×80%=40万円
- 対物超過特約からの計算上:(150万円-50万円)×80%=80万円だが、特約の上限50万円に達するため50万円が支払われる
- 合計:90万円(残り60万円は自己負担またはご自身の車両保険でカバー)
過失割合が被害者にある場合には、差額全額が支払われるわけではないことに注意が必要です。また、上限50万円の枠は事故1件1台あたりなので、修理費用が極めて高額な場合は、一部が自己負担として残る可能性があります。
なお、上限を「無制限」としている保険会社の場合でも、新車価格が実質的な上限となる取扱いが多いため、高級車や輸入車の事故では注意が必要です。
対物超過特約の注意すべきポイント
注意点1:被害者に特約の使用を請求する権利はない
もし、事故の相手方が対物超過特約に加入していても、あなたから相手方に対して、特約の使用を請求する権利はありません。
対物超過特約は、あくまで加害者と加害者の保険会社との間の契約上の特約であり、被害者はこの契約の当事者ではありません。したがって、特約を使用するかしないかは、相手方の自由なわけです。
そのため、相手方が対物超過特約に加入していることが分かったとしても、使用しない場合もあり得るという前提で交渉や裁判を進める必要があります。
ただし、実務上は、保険会社は早期解決のために対物超過特約を積極的に使用する傾向があります。特に、被害者が「修理して乗り続けたい」という強い希望を持っており、その希望が合理的と認められる場合(故障車を買い替える余裕がない、愛着のある車、希少車で代替不可能など)、保険会社も特約使用に応じやすくなります。
注意点2:限度額・使用条件を必ず確認する
事故の相手方の保険契約の内容にもよりますが、無制限に修理費用が認められるわけではなく、限度額が設定されている場合があります。前述のとおり、多くの保険会社では「1事故1台あたり50万円」が限度です。
また、支払限度額が無制限で設定されていても、新車価格が上限とされている場合もあります。
さらに、以下のような使用制限がかかっているケースもあります。
- 相手方が法人・個人事業主で事業用車両を保有している場合は不担保となる特約がある
- 車両が二輪自動車・原動機付自転車の場合は不担保となる特約がある
- 特約の対象運転者に含まれない人が運転していた場合は使えない
そのため、相手方が対物超過特約に加入している場合には、その使用条件や限度額等について、加害者側保険会社に確認したうえで、交渉を進めることが大切です。
注意点3:事故日の翌日から6ヶ月以内に実際に修理をしたことが必要
一般的に、対物超過特約は、事故の翌日から6ヶ月以内に実際に修理をしたことを条件としていることが多いです。SOMPO「おとなの自動車保険」のように1年以内のケースもありますが、6ヶ月が主流です。
この「実修理要件」は、対物超過特約の最大の注意点と言えます。なぜなら、以下のような取扱いが原則できないためです。
- 修理せずに現金だけ受け取る(「修理費用相当額の金銭賠償」だけの処理は不可)
- 修理費相当額の示談金を受け取った後、修理しないで買換する(特約の対象外)
- 長期間修理を先延ばしする(6ヶ月を超えると特約が使えなくなる)
対物超過特約を使用する側(加害者側)としては、修理前にもかかわらず、修理費用の金額を支払うという内容で示談してしまうと、示談成立後になって、被害者が修理をしないという方針になった場合に対物超過特約を使用できなくなってしまう場合がありますので、注意が必要です。
被害者側としても、修理しない方針の場合は特約を使えないため、「修理するか、時価額までの賠償で諦めるか」の二者択一になります。このような場合は、ご自身が加入している車両保険や新車特約の利用を検討することも選択肢です。
注意点4:相手方が被害者の保険を使う場合との関係
被害者側が車両保険に加入している場合、以下のいずれかを選択することになります。
- 加害者側の対物超過特約を使って修理する(被害者側の保険等級は下がらない)
- ご自身の車両保険を使って修理する(ご自身の保険等級が下がる可能性がある)
一般には、加害者の過失割合が100%または高い場合は、加害者側の対物超過特約を使う方が被害者にとって有利です。一方、被害者側にも過失割合がある場合、両方を併用する(対物超過特約で一部、車両保険で一部をカバー)ことも検討できます。この場合、ご自身の保険会社にも相談し、等級ダウンと保険料アップを考慮した上で判断しましょう。
対物超過特約と関連する損害項目
時価額を超える損害について問題となる論点は、対物超過特約以外にもあります。以下の記事も参考にしてください。
- 評価損(格落ち損):事故歴がついたことで車の市場価値が下がる損害。修理費用とは別に請求可能な場合がある
- 代車費用・レンタカー代:修理期間中、買換時期間中の代替交通費用
- 新車特約:事故で車が破損した場合に、新たに車を購入するための費用を補償するご自身の保険特約
- 車両保険:加害者が無保険の場合や、対物超過特約が使えない場合の補完として有用
まとめ:対物超過特約は加害者側が加入していないか必ず確認を
対物超過特約は、時価額を超える修理費用が発生した場合に、被害者が愛車を修理して乗り続けることを可能にする極めて重要な特約です。全国の任意保険加入者の多くが自動付帯または選択加入しており、加入率が8割を超える保険会社もあります。
時価額を超える修理費用が掛かってしまうような事故の場合には、加害者側の保険会社に「対物超過特約に加入していますか?」と確認することをオススメします。
もっとも、対物超過特約の使用の可否、限度額、実修理要件、示談のタイミングなど、実務上の判断は複雑です。物損事故だからと諦める前に、弁護士に相談することをお勧めします。当事務所では、物損のみの事案でも相談を受け付けており、弁護士費用特約を使えるケースでは実質無料で対応可能です。
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弁護士費用特約を利用しても、保険料は変わりませんので、可能な場合には利用することをお勧めします。
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