交渉のときに必要になる治療関係の書類の取得方法や注意点を知りたい。
病院が自賠責診療報酬明細書を作成してくれない。
この記事は、このようなことでお困りの方のために書きました。
こんにちは!弁護士の山形です。
今回は、通院・治療に関するQ&Aについて書いています。一部、弁護士向けのマニアックな内容も挙げてありますが、交通事故にあってしまい、これから通院をされる方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
Q 接骨院の施術証明書を見ると病院の診断書に記載されていない傷病名が記載されていますが問題はありませんか?
接骨院へ通院すると施術証明書が作成されます。病院でいう診断書のようなものです。
接骨院では、病院で診断された傷病について、施術することが基本となります。
そのため、もし、接骨院で作成された施術証明書に病院の診断書に記載されていない傷病名が記載されている場合には、その部位の治療について保険会社から事故との因果関係を否定されて、施術費が支払われないリスクがあります。
このような場合には、病院の診断書に記載されていない傷病については、直ちに病院で診察を受けるなどして事故を原因とするものであることを証明できるようにする必要があります。
Q 転院する場合に注意することはありますか?
相手方保険会社が一括対応している場合(治療費を支払っている場合)には、転院前に、保険会社から病院に連絡を入れてもらうようにしてください。
そうしないと、転院先の病院で保険会社からの連絡があるまで、あなたに対して治療費の支払を求められる可能性があります。
なお、交通事故の治療の途中での転院を受け入れていない病院もありますので、事前に、転院が可能かどうか、病院に確認するようにしましょう。
Q 健康保険を利用する場合の治療費の支払はどうなりますか?
相手方保険会社が一括対応をしている場合であっても健康保険を利用することは可能です。「健保一括」といいます。
この場合、保険会社から治療費の3割が支払われます。
ただし、病院によっては、健保一括に応じないことがあり、その場合は、被害者が直接病院に3割を支払うことになります。
また、そもそも健康保険の利用に応じない病院もあります。
健康保険については、以下の記事も参考にしてみてください。
Q 労災保険を利用する場合の治療費の支払いはどうなりますか?
治療を受ける病院が労災指定病院の場合は、労災保険から治療費が支払われます。
しかし、労災指定を受けていない場合は、一旦、被害者が全ての治療費を支払う必要があります。
労災保険については、以下の記事も参考にしてみてください。
Q 労災の場合に労災保険ではなく健康保険を利用できますか?
通勤中や業務中に交通事故にあってしまった場合で、労災保険を利用できる場合には、健康保険を利用して治療を受けることはできません。
もし、労災なのに健康保険を利用して治療を受けてしまった場合、後日、健康保険に治療費を返還する必要が生じます。
これが示談が成立した後の話だと、健康保険への返金分を相手方の保険会社や労災保険に請求することが困難になってしまいます。
そのため、万が一、労災なのに健康保険を利用している場合には、すぐに病院に申し出て、労災保険診療に切り替えるようにしてください。
もし、病院が切替に応じてくれない場合には、労災保険に対し、あなたが窓口で負担する部分は労災保険からあなたに、健康保険負担部分については労災保険から健康保険へ支払ってもらうように相談してみてください。
いずれにせよ、このような場合には、すぐに、弁護士や管轄の労働基準監督署に相談することをオススメします。
Q 健康保険や労災保険を利用した場合、加害者は治療費の支払を免除されるのですか?
そんなことはありません。
健康保険や労災保険は、交通事故の場合、第三者行為事案として扱いますので、後日、加害者に対し、健康保険や労災保険が立て替えた治療費を請求することになります。
Q 病院が自賠責診療報酬明細書を作成してくれません。どうしたら良いですか?
健康保険や労災保険を利用している場合、病院が自賠責診療報酬明細書の作成に応じてくれないことがあります。
そのような場合の対処方法は、以下のとおりです。
健康保険を利用していた場合は、毎回、病院の窓口で領収書と診療明細書が渡されていたはずですので、これらで代用します。
もし、領収書等を紛失してしまった場合には、領収書は再発行をお願いし、診療明細書については、保険者(国民健康保険なら市区町村、健康保険であれば健康保険組合等)に個人情報開示続を申請して開示してもらいます。
労災保険を利用していた場合は、労働局に個人情報開示手続を申請して、1ヶ月程度すると、労災診療報酬明細を取り寄せることができます。
以上のとおり、病院が自賠責診療報酬明細書を作成してくれない場合には、結構、面倒な手続が必要となる場合がありますので、領収書等をきちんと保管しておくようにしましょう。
Q 保険会社が一括対応してくれない場合、自賠責から直接病院に治療費を支払ってもらうことは可能ですか?
病院の了解が得られれば可能です。
つまり、自賠責に治療費の請求をするためには、自賠責診断書と自賠責診療報酬明細書が必要となりますので、治療費の支払いを待ってもらった状態で、これらの書類を発行してもらう必要があります。
病院が書類を発行してくれれば、自賠責に被害者請求を行い、治療費について直接病院に支払うようにすることができます。
Q 健康保険や労災保険が支払った治療費は過失相殺との関係ではどのように扱われますか?
健康保険の場合
健康保険が支払った治療費は、過失相殺前に控除されます。
つまり、健康保険が支払った分については、過失の有無や程度によってトータルの損害額は変わりません。
そのため、損害としては、窓口で負担した3割部分のみを治療費として請求することになります。
労災保険の場合
健康保険の場合と異なり、労災保険が支払った治療費については、過失相殺後に既払い金として控除されることになります。
ただし、労災保険の場合、費目間控除の制限というルールがありますので、被害者の過失部分の治療費は、既払い金として扱われない(=労災保険が負担する)というメリットがあります。
ちなみに、自賠責診療報酬明細書に病院が労災保険に請求した額が記載されていますが、金額が間違っていることもあるので、相手方保険会社から労災保険求償資料を取り寄せるなどして、正しい金額を確認するようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、通院・治療に関するQ&Aについて解説しました。
少し難しい話もあったかもしれませんが、大事な内容になっています。
もし内容を理解できなかった場合には、弁護士の無料相談などを利用してみてください。