後遺障害の申請をしたいけど、どういう方法があるのか分からない・・・
事前認定と被害者請求のどっちで行った方が良いのか知りたい。
この記事は、このような状況でお困りの方のために書きました。
こんにちは!弁護士の山形です。
この記事では、交通事故で後遺障害が残ってしまった方のために、事前認定と被害者請求のポイントについて解説しています。
これから後遺障害の申請を検討している方は是非参考にしてみてください。
目次
事前認定と被害者請求
交通事故で後遺障害が残ってしまった場合、自賠責保険や自賠責共済に対して、後遺障害の申請をして、後遺障害の有無や等級について認定してもらうことができます。
自賠責で後遺障害が認定されれば、加害者側の保険会社からも認定された等級を前提に慰謝料や逸失利益等が支払われることが多いです。
また、裁判を行う場合も、自賠責での有利な認定結果があれば、有利に手続を進めることが可能になります。
そのため、通常は、症状固定となったら保険会社との交渉前に後遺障害の申請をすることになります。
そして、後遺障害の申請方法としては、①事前認定手続と②被害者請求の2つがありますので、どちらかを選択して行うことになります。
では、事前認定手続と被害者請求のそれぞれのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
事前認定のメリット・デメリット
事前認定手続というのは、加害者側の保険会社が被害者であるあなたに代わって自賠責に後遺障害の申請をする方法です。
あなたは後遺障害診断書を用意すれば、後は、保険会社が必要な書類を集めて、代わりに申請して、認定結果は、保険会社を通じて知らされることになります。
事前認定のメリット
事前認定の一番のメリットは、手間が掛からないという点です。
病院で作成してもらった後遺障害診断書を相手方の保険会社に送れば、後は、結果を待っていればOKです。とにかく楽です。
病院から診断書やレセプトなどを発行してもらう際には、手数料が掛かりますが、それは保険会社が負担します。
※後遺障害診断書の作成手数料は、後遺障害が認定されない場合は、自己負担となります。
被害者請求の場合は、病院の診断書やレセプトなどの必要書類を自分で用意する必要があるので、手間が掛かるのですが、それが無いのは、大きなメリットです。
事前認定のデメリット
加害者側の保険会社があなたの代わりに申請することになるので、あなたにとって有利な資料を積極的に提出してくれることは期待できません(※)。
※診断書などの必要書類は、有利不利に関係なく提出されます。
また、気持ち的な問題として、いわば敵である加害者側の保険会社に大事な手続を任せることに不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。
被害者請求のメリット・デメリット
被害者請求というのは、被害者自身が自賠責に後遺障害の申請をする方法です。
自分で手続を行いますので、結果も直接あなたに知らされることになります。
被害者請求のメリット
被害者請求は、あなた自身が行うので、手続の透明性が保たれます。
つまり、どんな書類を自賠責に提出したのかが一目瞭然です。
ちなみに、被害者に有利な資料(医師の意見書など)を添付資料として提出することができることを被害者請求のメリットとして記載するサイトもありますが、後で説明するように、事前認定であっても有利な資料を提出することは可能です。
被害者請求のデメリット
被害者請求のデメリットは、簡単に言うと、面倒という点です。
被害者請求を行うための必要書類は多くあり、それを自分で集めるのは大変です。
また、病院に診断書やレセプトを発行してもらうときの手数料を立て替える必要があります。
※診断書やレセプトの発行手数料が全て自己負担になってしまうかのような説明をしているサイトもありますが、正確には、被害者請求であっても、これらの発行手数料は、必要かつ妥当なものであれば、自賠責から支払われることになります。
つまり、一旦立て替える必要がある、というだけですので、病院によって金額は異なりますが、それほど高くなければ、デメリットとして考える必要はないでしょう。
結局どっちが良いの?
本当に事前認定は不利なのか?
インターネットのサイトでは、「事前認定は加害者側の保険会社が行う手続なので、被害者請求に比べて不利な結果になってしまう」などと書かれていることがあります。
しかし、例えば、そもそも後遺障害診断書の内容やレントゲンやMRIの画像などから、明かな後遺障害があると認められるようなケースであれば、事前認定だからといって不利な結果になってしまうということは、考えづらいです。
むしろ、私のこれまでの経験や感覚からすると、事前認定か被害者請求かという手続の選択よりも、後遺障害診断書の内容が充実しているなど、「中身」の方が後遺障害等級の認定のためには重要です。
また、もし、事前認定の結果に納得できないのであれば、異議申立をして、認定結果を争えば良いだけです。
そうれであれば、依頼者の方の資料集めの手間を考えたら、まずは事前認定で進めて、結果が不利なものであれば、異議申立をする、という方法をオススメします。
ちなみに、事前認定のテクニックとして、医師の意見書など有利な資料を用意して、事前認定の際に一緒に自賠責に提出するように、保険会社に依頼するという方法があります。
私の経験上、このような依頼をして断られたことはありませんし、交通事故に慣れた弁護士であれば、よく使うテクニックです。
この方法であれば、事前認定であっても、有利な資料を提出することが可能です。
事前認定から異議申立をするときのポイント
もし、事前認定で後遺障害が否定されたとしても、その理由を知ることができますので、異議申立の際には、不利な結果を導いた理由に的を絞って反論のための材料を集めることができます。
また、例えば、14級を狙う異議申立の場合、事前認定の手続中も通院治療をしていたのであれば、そのことも追加で主張すると良いでしょう。本当に痛みがあるから自費で通院治療しているのだ、という理屈です。
いずれにせよ、事前認定や被害者請求の1回の手続で後遺障害の認定を狙う、というよりも、異議申立までやるつもりで、全体の戦略を考えた方が良いでしょう。
重要なのは手続選択ではなく「中身」
私の場合、依頼者の方には、被害者請求と事前認定のメリット・デメリットを説明させていただいて「面倒でも被害者請求をしたい」ということであれば、被害者請求で進めます。
一方、特にこだわりがないのであれば、保険会社に資料集めをさせて事前認定を行い(その際に、必要があれば依頼者の方に有利な資料を一緒に提出するようにします。)、もし、納得のできない結果であれば異議申立をするようにしています。
ただ、繰り返しになりますが、重要なのは、事前認定か被害者請求かという手続選択ではなく、後遺障害診断書の内容などの「中身」ですので、この点は、忘れないようにしてください!
まとめ
いかがでしたか?
今回は、事前認定と被害者請求のメリット・デメリットについて解説しました。
これから、後遺障害の申請を検討している方は是非参考にしてみてください。
後遺障害については、以下の記事も参考にしてみてください。