交通事故の過失割合で相手と言い分が食い違ったとき、決め手になるのが実況見分調書です。

  • 相手が事故状況について、事実と違う説明をしている
  • 自分の言い分を裏づける客観的な証拠がほしい
  • 実況見分調書を取り寄せたいが、やり方が分からない
  • 調書を取り寄せたら、自分に不利なことが書かれてい

 

このようなお悩みをお持ちの方のために、この記事を書きました。

弁護士が、実況見分調書の取り寄せ方見取図の読み方不利な記載と戦う方法、そして調書が作られなかった場合の対処までを、実際の裁判例を交えて解説します。ぜひ参考にしてみてください。

本記事を執筆した弁護士

静岡城南法律事務所

德田匡輝(とくだまさてる)

静岡県弁護士会所属 登録番号:64322

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士。日本交通法学会所属。弁護士としては珍しく、特に過失割合の問題に強い。駐車場事故、車線変更、交差点での事故など、保険会社が提示する過失割合に納得のいかない被害者からの依頼が多い。最近では、口コミを聞いた静岡県外からの相談・依頼も多い。

目次

この記事の結論

Q1. 実況見分調書は自分で取り寄せられますか?
A1. 本人でも取り寄せられます。ただし、人身事故として届け出ていること、刑事事件の処分(起訴・不起訴)が決まっていることが前提で、管轄によって手続きや窓口が異なります。弁護士に依頼すれば、警察への照会や検察とのやり取りを代わりに進めてくれるので、手間をかけずに任せられます(弁護士費用特約が使えれば実費も特約でカバーされることが多いです)。
Q2. 物損事故だと実況見分調書はないのですか?
A2. 物損事故では原則として作成されません。ただし、当初は物損扱いでも後から人身事故に切り替えれば、実況見分が行われ調書が作成されます。過失割合を争うなら、人身への切り替えを早めに検討することが重要です。
Q3. 調書は過失割合の争いでどこまで武器になりますか?
A3. 裁判所は、ドライブレコーダーがない事案でも、実況見分調書の見取図や当事者の指示説明をもとに事故状況を認定します。実際に、双方に争いのない調書を根拠に直進車の過失を0%とした裁判例があります(静岡地裁 平成31年3月14日判決)。
Q4. 調書に自分の不利なことが書かれていたら、もう覆せませんか?
A4. 調書は絶対ではありません。作成された状況(一方の当事者の指示説明に偏っていないか、現場の状況が事故当時のまま再現されていたか)や、車両の損傷・事故後の停止位置など物証との矛盾を突くことで、見取図の信用性が減殺された裁判例があります(大阪地裁 平成30年6月28日判決)。不利な記載があっても、あきらめる前に弁護士にご相談ください。

執筆:弁護士 德田匡輝(静岡県弁護士会 登録番号64322/日本交通法学会所属/静岡県交通事故相談所 顧問弁護士〈静岡県知事の委嘱による〉)/最終更新:2026.07.05

実況見分調書とは——過失割合の争いで最重要の証拠になる理由

実況見分調書とは、人身事故が起きたときに、警察官が事故現場で行う「実況見分」の結果をまとめた書類です。当事者の立会いのもとで、車両の位置・進路・速度・衝突地点などを実測して記録します。

過失割合の争いでこの書類が重視されるのは、次の3つの特徴があるからです。

  • 警察官という第三者が、現場で実測して作成する——当事者の記憶だけに頼らない、客観性の高い記録である。
  • 見取図(交通事故現場見取図)が添付される——双方の車両がどこをどう走り、どこで衝突したかが図面で示される。
  • 当事者双方の「指示説明」が記録される——それぞれが「自分はこう走った」と現場で指し示した内容が残る。

供述調書との違い

似た書類に「供述調書」がありますが、これは当事者や目撃者の言い分を文章で録取したものです。実況見分調書は、当事者の説明を現場の位置関係とともに図面化・数値化している点で、過失割合の立証には特に有用です。

裁判所は実況見分調書を参考に事故状況を認定することがある

ドライブレコーダーの映像がない事案では、裁判所は実況見分調書を有力な手がかりとして事故態様を認定することがあります。実際に、ドラレコ映像がないまま、実況見分調書に記載された双方の説明をもとに事故状況を認定し、直進車の過失を0%とした裁判例があります(詳しくは後述)。

物損事故では作成されない——人身への切り替えを検討する

実況見分調書は、人身事故として届け出た場合に作成されます。物損事故では原則として作成されません(簡易な報告書が作成されるにとどまります)。

そのため、けがをしているのに物損事故として処理されていると、後で過失割合を争うときに重要な証拠を欠くことになります。痛み・しびれなどの症状があるなら、早めに人身事故への切り替えを検討してください。当初は物損扱いでも、人身に切り替えれば実況見分が行われ、調書が作成されます。

軽い人身事故では「現場の見分状況書」になることも

人身事故でも、けがが比較的軽い場合(加療期間がおおむね3週間以下など)には、警察が「簡約特例書式」という簡略な様式で処理し、正式な実況見分調書ではなく「現場の見分状況書」という書類が作られることがあります。名称は違いますが、中に交通事故現場の見取図が綴じられていて、車両の位置・進路・距離が記録されている点は実況見分調書と同じです。取り寄せ方も、過失割合の立証に使える点も変わりません。取り寄せた書類の表題が「実況見分調書」でなくても、見取図が付いていれば同じように読み解けます。

なお、車線変更事故の基本的な過失割合や、10対0になるケースの考え方は、以下の記事で詳しく解説しています。

実況見分調書の取り寄せ方(4ステップ)

取り寄せは本人でもできます。ここでは、その流れを静岡県内の事故を例に解説します。下記のとおり、警察・検察という複数の窓口とのやり取りを段階的に進める必要がありますが、弁護士に依頼すれば、この照会や検察とのやり取りを代わりに進めてくれるので、負担なく任せられます。

実況見分調書は事故直後にすぐ受け取れるものではなく、刑事事件の記録の一部として、警察から検察へ送致され、処分(起訴・不起訴)が決まった後に閲覧・謄写(コピー)する形で取得します。流れは大きく4ステップです。

ステップ 内容 期間の目安
① 警察署へ照会 交通事故証明書に記載の管轄警察署へ書面で照会し、「送致先・送致年月日・送致番号・罪名」を確認する 回答まで2週間〜1か月程度
② 検察庁で処分結果を確認 送致先の検察庁に問い合わせ、起訴か不起訴かを確認する(処分が出るまで謄写に進めない) 起訴(確定記録)の場合、送致から数か月かかることもある
③ 閲覧・謄写を請求 処分確定後、検察庁へ閲覧・謄写を請求する。起訴なら「保管記録閲覧請求」、不起訴なら「不起訴記録閲覧・謄写請求」と手続きが分かれる
④ 受取・費用の支払い 検察庁でマスキング処理がされたうえで、謄写して受け取る 全体でスムーズでも1〜2か月、確定記録では数か月

知っておくと役立つポイント

  • 物損から人身に切り替えた場合も取り寄せ可能:交通事故証明書が「物件事故」のままでも、人身に切り替えていれば実況見分調書は作成されており、その事故証明書で照会できます。
  • 管轄によって方法が異なる:静岡県内の事故は、上記の照会→謄写のルートが確立しています。一方、県外の事故は方法が異なり、弁護士会照会(弁護士法23条の2に基づく照会)を使うのが基本で、地域によって謄写の担当も変わります。全国一律ではなく、管轄ごとに確認しながら進めることになります。

費用について

取り寄せには、照会や謄写にかかる数千円程度の実費+謄写料がかかります(金額は管轄・時期により変動します)。弁護士費用特約があれば、これらの実費は基本的に特約でまかなえます。

取り寄せた調書の読み方——見取図と数値のどこを見るか

調書を手にしたら、過失割合に効くポイントを押さえて読みます。見るべきは主に次の3点です。

  1. 見取図の位置関係——衝突時、双方の車両がどの車線の、どのあたりにいたか。特に「ほぼ真横で並走していたか」は、直進車の回避可能性を左右する決定的な要素です。
  2. 衝突地点と双方の進路——どこで、どの角度で接触したか。進路が交差する地点が、相手の車線変更の態様を物語ります。
  3. 速度・距離の記載と指示説明——それぞれの当事者が「自分はこう走った」と現場で指し示した内容(指示説明)。双方の説明が食い違う場合、どこがどう食い違うかが争点になります。

見取図(交通事故現場見取図)の実物

実況見分調書や現場の見分状況書には、こうした「交通事故現場見取図」が付いています。下に示すのは、実際の現場の見分状況書に含まれる見取図の一例です(軽い人身事故で作成されたもの。氏名などの個人情報はマスキングしています)。凡例(基点・衝突地点・スリップ痕・擦過痕などの記号)と実測距離が書き込まれ、双方の車両の位置・進路・衝突地点が数値とともに再現されているのが分かります。

実況見分調書(現場の見分状況書)に添付される交通事故現場見取図の例。個人情報はマスキング済み

「双方が指示説明どおりと認めた調書」は特に重い

見取図が当事者双方の立会いのもとで作成され、双方ともその内容に争いがない場合、その調書は事故態様の認定において非常に重い証拠になります。次の章で紹介する裁判例は、まさにそのような調書が決め手となって、直進車の過失が0%とされたものです。

実況見分調書が決め手になった裁判例と、当事務所の解決事例

【裁判例】双方に争いのない調書で0対100とされた例(静岡地裁 平成31年3月14日判決)

静岡地方裁判所・平成31年3月14日判決

 証拠によれば,本件事故から約2か月後の平成28年11月4日に,当事者双方立会いの下で,当事者双方の指示説明に基づき,警察官によって見分図面を含む実況見分調書が作成されたことが認められるのであって,原告と被告は,いずれも,それぞれが指示説明したとおりに本件実況見分調書が作成されたことを認めているのであるから,本件事故の態様については,本件実況見分調書中の見分図面や当事者双方の指示説明等に基づいて事実関係を認定するのが相当というべきである。
 ・・・原告が法定速度を遵守して原告車両を運転して片側2車線直線道路の第1車線を直進走行していたところ,第2車線をほぼ並走して直進走行していた被告の運転に係る被告車両が安全確認を怠ったまま第1車線への車線変更を開始し,既にほぼ真横にいた原告車両に一方的に衝突してきたのであり,車線変更開始から衝突(接触)まで僅か1.5秒にも満たなかったというのであるから,原告からすればおよそ結果回避可能性がなかった事故というべきであり,本件事故発生に対する過失割合は,原告0%,被告100%と認めるのが相当である。

この事案では、ドライブレコーダーの映像はありませんでした。注目すべきは、実況見分が行われたのが事故から約2か月後だったにもかかわらず、当事者双方の立会いのもとで、双方の指示説明に基づいて作成され、双方とも「指示説明したとおりに作成された」と認めていたため、裁判所が「実況見分調書中の見分図面や当事者双方の指示説明等に基づいて事実関係を認定するのが相当」と明言している点です。

そのうえで裁判所は、調書に基づいて「ほぼ真横を並走していた」「車線変更開始から衝突まで1.5秒未満だった」という事故態様を認定し、直進車には結果回避可能性がなかったとして、過失割合を原告0%・被告100%としました。

調書は「事故の位置関係」と「衝突までの時間」を裏づける証拠として機能します。ドラレコがなくても、調書の見取図と指示説明があれば、事故態様を再現できる場合があるのです。

【当事務所の解決事例】損傷の解析で過失割合を覆した例(愛知県・ドラレコなし)

次に、当事務所が担当した事例です。こちらは車両の損傷の解析によって事故態様を立証したもので、調書が主役の事例ではありませんが、「客観的な資料から事故態様を再現する」という発想は共通しています。

高速道路の料金所を出たあたり(車列ができていた場所)で、被害者車が直進していたところ、相手車が後方から進入して被害者の前に出て停止し、相手車の前部が被害者車の側面に接触した事案です。相手は被害者にも落ち度があると主張しただけでなく、反訴(逆に被害者へ損害賠償を請求)を起こし、被害者にも2割の過失があると争ってきました。

この事案にはドラレコがありませんでした。そこで、

  • 相手が後方から進入して前に出た=相手の方が速かったこと
  • そのため被害者からは追突に近い態様(側面に後方から押される損傷)で、相手の動きを予見も回避もできなかったこと

を、接触の態様と損傷状況から立証しました。結果、相手の反訴請求は認められず、相手が一方的に賠償金を支払う内容(当方の過失なし)で和解が成立しました。

(解析報告書の一部抜粋)

車両側面の傷の入力方向(後方から前方)を示す解析報告書の一部抜粋

一般的には、後方から前方への入力があった場合、損傷面が「薄い」から「濃い」に変化し、損傷面の付着塗料の面積が広くなります。また、入力方向である前方に向かって塗料の堆積が形成されます(「物損事故事件における立証から解決まで」髙畠希之著)。

不利な調書と戦う——信用性を弾劾する方法

「取り寄せた調書に、自分に不利なことが書かれていた」——このとき、調書は絶対的な証拠ではないことを知っておいてください。調書の記載(特に見取図)の信用性が裁判で争われ、否定された例があります。ここでは、不利な記載とどう戦うかを解説します。

攻めどころ①:作成された「状況」に疑問を投げかける

見取図や指示説明は、次のような場合に信用性が下がります。

  • 一方の当事者の指示説明だけに基づいて作成されている(相手が立ち会っていない、内容を確認していない)
  • 現場の状況が事故当時のまま保たれていた保証がない(交通量の多い場所で、周囲の車両の位置が刻々と変わっていた等)
  • 見分時に当事者が動揺しており、正確に指示説明できる状態ではなかった

逆に、双方の立会いのもとで作成され、双方が「指示説明どおり」と認めた調書を崩すのは容易ではありません(前章の静岡地裁判決が認定に用いたのは、まさにそのような調書でした)。

【裁判例】見取図の信用性が否定された例(大阪地裁 平成30年6月28日判決)

実際に、実況見分調書の見取図の記載の信用性が否定された裁判例があります。

大阪地裁・平成30年6月28日

 本件事故現場付近は、大阪市内でも交通量の多い場所であり、別紙図面の停車車両の位置に車両を停止することは、著しく通行の妨げになるのであって、むしろ歩道に接する位置に停車するのが自然であること、上記のとおり交通頻繁である上、上記実況見分は本件事故の約30分後に開始されたものであることからすると,警察官が本件事故現場に臨場した時点で、停車車両が本件事故当時と同じ位置に停止したままであったのかは疑わしく、別紙図面の停車車両の位置は、被告の指示説明に基づくものである可能性があるところ、被告においては、原告車と接触する直前まで原告車の存在や動静を意識していた形跡がなく、ましてや原告車の左方に停止していた停車車両の位置を正確に認識していたとは考え難いことに照らせば、上述した別紙図面の性質を考慮してもなお、停車車両の位置に関する別紙図面の記載は、その正確性に疑問の余地があるといわざるを得ない。また、別紙図面の被告の指示説明も、原告車が第2車線内に進入したとするものではないし、接触地点が第2車線内であったとするものでもない。以上によれば、被告の主張は採用することができない。

第1車線を走行する原告車と第2車線を走行する被告車とが接触した事故で、被告は、実況見分調書を証拠として「原告車が、第1車線に停車中の車両を避けるため、車体の一部を第2車線に進入させた」と主張していました。

しかし裁判所は、①現場は交通量の多い場所で、見取図のような位置に停車すれば著しく通行の妨げになること、②実況見分の開始が事故の約30分後で、警察官が臨場した時点で停車車両が事故当時と同じ位置にあったかは疑わしいこと、③停車車両の位置は被告の指示説明に基づく可能性があるのに、被告が事故直前まで原告車や停車車両を正確に認識していたとは考え難いことを挙げて、「停車車両の位置に関する別紙図面の記載は、その正確性に疑問の余地があるといわざるを得ない」と判断し、被告の主張を退けました。

警察官が作成した見取図であっても、一般論としての信用性の高さがそのまま通用するわけではなく、作成の経緯や現場の状況によっては記載が覆る余地がある——不利な調書と戦ううえで、この視点は重要です。

攻めどころ②:物証(損傷・停止位置)との矛盾を突く

見取図が示す事故態様が、車両の損傷箇所・事故後の停止位置・ドライブレコーダー・物理法則と矛盾していれば、その矛盾を突くことができます。

裁判所自身が、こうした物証から事故態様を認定することがあります。例えば大阪地裁 平成25年6月14日判決は、①事故後に被告車が原告車の前で停止したこと(双方の供述が一致)から「被告車の方が速度が速かった」と認定し、②原告車の右前タイヤ付近と被告車の左前ドア付近という損傷箇所から「ほぼ並走状態のときに接触した」と認定しました。当事者の言い分ではなく、動かぬ物証から事故態様を再現しているのです。

逆に言えば、調書の見取図が停止位置や損傷と食い違っている場合、「見取図の方が信用できない」と主張する余地があるということです。

擦過痕の「入力方向」から事故態様を立証する

名古屋地裁・平成31年3月6日判決/自保ジャーナル・第2049号

 ・・・被告らは、事故態様について、進路変更しようとした被告車にその後方から直進してきた原告車が衝突したものである旨主張し、被告乙山も、被告車の左後方を走行していた原告車が被告車よりも速い速度で走行し、被告車に追い付いて本件事故が発生した旨供述する。
 しかし、・・・原告車の右側面には、後方から前方にかけての入力方向5時からの擦過痕が生じており、かかる損傷は、被告車が原告車よりも速い速度で原告車の後方から衝突したことにより生じたと考えられるところ、被告乙山の上記供述を前提にすると、本件事故発生時、原告車の方が被告車よりも速い速度で走行していたこととなるのであるから、被告乙山の上記供述は、原告車の損傷状況と整合しないものであって、採用し難いといわざるを得ない。

第2車線を走行していた原告車と第3車線から第2車線に車線変更した被告車が衝突したという事故です。

被告は、「進路変更しようとした被告車にその後方から直進してきた原告車が衝突した」と主張していました。
つまり、判例タイムズの【153】図の進路変更車と後続直進車との事故であるから、原告にも30%の過失があると主張していたわけです。

しかし、裁判所は、「原告車の右側面には、後方から前方にかけての入力方向5時からの擦過痕が生じており、かかる損傷は、被告車が原告車よりも速い速度で原告車の後方から衝突したことにより生じたと考えられる」として、被告の主張を認めませんでした。

入力方向というのは、接触時に発生した力の作用する方向のことで、時計の方向(1時~12時)で表されます。
入力方向として示されるベクトルは、両車両の衝突によって発生した2つの力が合わさったものという点に注意してください。
つまり、単純に、相手の車が衝突してきた方向を意味するとは限りません。

例えば、以下のような交差点での衝突事故があったとします。

調査の結果、赤い車への入力方向は11時の方向だったとします。

この入力方向を分析すると以下の図のようになります。

①が入力方向です。
②青い車が赤い車に加えた力の方向です。
③赤い車が青い車に加えた力の反力です。
④赤い車が青い車に加えた力です。

つまり、青い車が11時方向から赤い車に衝突したわけではなく、9時方向からの力(②)と赤い車が青い車に加えた力(④)の反力(③)が合わさって、11時の入力方向となるわけです(①)。

どのような擦過痕であれば、どのような入力方向があったといえるのかということを理解するには、専門的な知識が必要になります。
そのため、入力方向から事故態様を立証しようとする場合、可能であれば、専門の鑑定を依頼して意見書を証拠として提出することをオススメします。
鑑定費用は高額なので、物損事故の場合には、費用対効果が微妙なこともあります。
しかし、もし、弁護士費用特約を利用できる場合には、鑑定費用も弁護士費用特約から出せることが多いので、積極的に利用することを検討してみてください。

車の傷跡から事故状況を証明する方法については、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

 

実況見分調書がない場合の選択肢——事故状況図の作成

物損事故で調書が作られなかった、あるいは何らかの事情で調書が得られない——そんな場合でも、事故状況を主張する手段はあります。

当事務所では、提携する専門解析業者(株式会社東海DC)に依頼し、当事者へのヒアリングと現場の状況をもとに「事故状況図」を作成することができます。言葉だけでは伝わりにくい事故の動きを、図にして主張を可視化する方法です。

ただし、正直にお伝えしておくべき点があります。この事故状況図は、警察が現場で作成する実況見分調書に比べれば、信用性の面では劣ります。当事者の説明をもとに後から作成するものだからです。調書の代わりになるものではなく、「客観的な調書が得られない場合に、こちら側の主張を分かりやすく整理・補完するための手段」として位置づけるのが正確です。

実況見分に立ち会うときの注意点

ここまでは「後から取り寄せる」話でしたが、これから実況見分に立ち会う方のために、基本の注意点をまとめます。

  • 立会いを拒否しない。実況見分は、あなたの言い分を記録に残す貴重な機会です。
  • 現場で相手と議論しない。感情的なやり取りではなく、警察官に対して事実を落ち着いて説明します。
  • 署名する前に見取図を確認する。車両の位置・進路が自分の認識と合っているかを必ず確認し、違えばその場で申し出ます。いったん「指示説明どおり」と認めた調書を後から覆すのは容易ではありません。
  • 立ち会えなかった場合。けがで入院しているなどで立ち会えなかったときは、相手の説明だけで見取図が作られている可能性があります。その場合こそ、損傷や停止位置など物証との整合性のチェックが重要になります。

弁護士に依頼する意味+まとめ

実況見分調書は、過失割合の争いで最も頼りになる証拠のひとつですが、取り寄せ・読み解き・不利な記載への反論のいずれにも専門的な判断が関わってきます。弁護士に依頼すると、次のことを任せられます。

  • 記録の取り寄せ——警察への照会から検察庁での謄写まで、管轄ごとに異なる手続きを代わりに進めます(弁護士費用特約が使えれば実費も基本的にカバーされます)。
  • 調書の評価——見取図や指示説明のどこが過失割合に効くかを読み解きます。
  • 反論の組み立て——不利な記載に対し、作成状況への疑義や物証との矛盾から反論を設計します。

過失割合でお困りの方は、証拠が薄れる前に、お早めにご相談ください。

なお、車線変更事故で10対0を主張する場合の考え方(主張の組み立て方・証拠別の立証方法・保険会社が示談交渉を代行できない点)は、以下の記事で網羅的に解説しています。

この記事に関するよくある質問

Q. 実況見分調書は自分で取り寄せられますか?
A. 本人でも取り寄せられます。ただし、人身事故として届け出ていること、刑事処分(起訴・不起訴)が決まっていることが前提で、管轄によって手続きや窓口が異なります。弁護士に依頼すれば、警察への照会や検察とのやり取りを代わりに進めてくれるので、手間をかけずに任せられます。弁護士費用特約が使えれば、実費も基本的に特約でカバーされます。

Q. 物損事故だと実況見分調書はないのですか?
A. 物損事故では原則として作成されません。ただし、当初物損扱いでも人身事故に切り替えれば実況見分が行われ、調書が作成されます。過失割合を争うなら、人身への切り替えを早めに検討してください。

Q. 調書を取り寄せるのにどれくらい時間がかかりますか?
A. 警察への照会に2週間〜1か月、その後の処分確認と謄写手続きを含め、スムーズでも1〜2か月程度が目安です。捜査中の場合は取得できません。起訴済みの確定記録では数か月かかることもあります。証拠が薄れないうちに、早めに動くことをおすすめします。

Q. 調書に不利なことを書かれていたら、もう覆せませんか?
A. 調書は絶対ではありません。作成された状況(一方の当事者の指示説明に偏っていた、現場の状況が事故当時のまま再現されていなかった等)への疑義や、車両の損傷・事故後の停止位置など物証との矛盾を突くことで、見取図の信用性が否定された裁判例があります(大阪地裁 平成30年6月28日判決)。あきらめる前にご相談ください。

Q. ドライブレコーダーがなくても過失割合を覆せますか?
A. 可能な場合があります。実況見分調書の見取図・当事者の指示説明、車両の損傷の入力方向、事故後の停止位置などから事故態様を再現できることがあります。実際に、ドラレコのない事案で直進車の過失を0%とした裁判例があります(静岡地裁 平成31年3月14日判決)。

過失割合を得意とする事務所です

当事務所は交通事故の中でも特に過失割合の交渉や裁判を得意とします。
過失割合が争点となる案件に力を入れている法律事務所は全国的にも珍しいかと思います。

静岡県にある事務所ですが、お陰様で口コミが広がり、過失割合について、静岡県外の方からも多くのご相談・ご依頼をいただいております。

他の弁護士からは保険会社が提示する過失割合で諦めるように言われたというケースでも当事務所に交渉や裁判をご依頼いただいて有利な割合になったケースが多数あります。

当事務所では、専門解析業者(株式会社東海DC )と提携しているため、車の傷痕やドライブレコーダーの映像を解析し事故状況を検証して、過失割合について徹底的に争うことも可能です。
※解析業者への依頼は有料となりますが、弁護士費用特約がある場合には、基本的には弁護士費用特約によって費用が補償されます。

安心してご依頼いただける体制を整えておりますので、過失割合でお悩みの方はぜひ当事務所にご相談ください。

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弁護士費用

保険会社等からの回収金額の11%+22万円(税込)

相談料と着手金は無料です。

交渉等が解決した後の完全後払いになります。
※訴訟等の手続に移行する場合は追加費用が発生します。

弁護士費用特約を使える場合には、保険会社が弁護士費用を代わりに支払ってくれますので、ほとんどのケースで実質無料で交渉や裁判等を弁護士に依頼できます。

弁護士費用特約を利用しても、保険料は変わりませんので、可能な場合には利用することをお勧めします。

「弁護士費用特約を使えるか分からない」という場合には、弁護士が代わりに保険会社に確認することもできますので、お気軽にご相談ください。

保険代理店様からのご相談

当事務所では、交通事故被害者の方からだけではなく、保険代理店様からのご相談についても無料で対応しています。
これまでも全国の保険代理店様からご相談いただいた実績があります。
まずは、契約者様の代わりにご相談してみたいという保険代理店様も、LINE電話メールでお問い合わせください。

よくある質問

Q静岡県以外の地域に住んでいるのですが、静岡県以外の地域からの相談・依頼は可能ですか?
A

静岡県以外の方からのご相談・ご依頼もお受けしております。当事務所へのご相談・ご依頼のうち半分程度が静岡県外の方からのものです。

電話、メール、LINE、zoomなど、ご希望の方法でご相談いただけます。また、ご依頼後も同様の方法で打ち合わせができますので、仮に、裁判になったとしても、事務所にお越しいただく必要はありません。

これまで、北海道、青森、福島、福井、富山、石川、東京、埼玉、群馬、栃木、千葉、神奈川、山梨、静岡、愛知、長野、岐阜、滋賀、京都、大阪、三重、奈良、兵庫、広島、島根、香川、宮崎、福岡、沖縄にお住まいの方からご相談・ご依頼いただいた実績がありますので(令和6年7月現在)、その他地域にお住まいの方もお気軽にご相談・ご依頼ください。

Qケガはなく、物損(車の修理費用など)の過失割合だけが問題になっているのですが、相談・依頼することはできますか?
A

弁護士費用特約に加入されていれば、物損だけの事故についてもご相談・ご依頼いただくことは可能です。

※弁護士費用特約に加入されていない場合、お怪我のない方のご相談・ご依頼をお断りさせていただいておりますのでご了承ください。

Q小さな事故で、特に保険会社との間で揉めていないのですが、弁護士に相談しても良いですか?
A

もちろん、問題ありません。
 弁護士に依頼することで、小さなケガであっても示談金額が増額される可能性がありますし、保険会社との対応を全てお任せできるというメリットがありますのでお気軽にご相談ください。

Q弁護士費用で費用倒れ(赤字)になることはありませんか?
A

ご相談内容を詳しく伺ったうえで、もし、少しでも費用倒れの可能性がある場合には、必ずご依頼前にご説明させていただきます。万が一、増額した金額よりも弁護士費用が高額となる場合は、増額した金額が弁護士費用の上限となりますので、損をすることはありません。
 なお、弁護士費用特約をご利用の場合は、費用倒れになることはありません。

Qどの段階から費用が発生しますか?
A

相談では一切費用は発生しません。弁護士との間で委任契約書を作成して、正式にご依頼いただいて、弁護士が交渉等の活動を開始した段階から費用が発生致します。

Q日中は仕事で忙しいので、弁護士事務所に行ったり、電話をしたりすることが難しいのですが・・・
A

ご依頼後の弁護士との連絡手段をメールやLINEにすることが可能です。

Q裁判まではしたくないのですが、交渉で示談することは可能ですか?
A

裁判まで行うか、交渉で示談をして終わらせるかは、依頼者の方が決めることになりますので、交渉での解説を希望される場合には、裁判にはなりません。なお、当事務所では、8割ほどが交渉で解決しています。

Q解決までには、どれくらいの時間が掛かりますか?
A

事案にもよりますが、交渉の場合、交渉開始から1ヶ月程度で示談して終わるケースが多いです。ただし、後遺障害の申請をしたり、過失割合に争いがあって実況見分調書等を取り寄せる場合には、プラス2、3月程度かかります。
また、裁判の場合は、早くても半年程度は掛かります。当事務所が過去に扱った裁判では、平均すると1年~2年で終わるケースが多いです。

Q弁護士に相談したら必ず依頼しなければいけないのでしょうか?
A

もちろん、相談だけで依頼しなくても問題ありません。むしろ、複数の弁護士に会って相談したうえで、最も信頼できる弁護士に依頼することをお勧めします。

Q他の弁護士に依頼しているのですが、変更して依頼はできますか?
A

現在、依頼している弁護士との契約を解除していただいたうえで、ご依頼いただくことになります。また、弁護士費用特約を利用している場合には、ご自身の保険会社に担当弁護士を変更したい旨を伝えて了承を得てください。

本記事を執筆した弁護士

静岡城南法律事務所

德田匡輝(とくだまさてる)

静岡県弁護士会所属 登録番号:64322

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士。日本交通法学会所属。弁護士としては珍しく、特に過失割合の問題に強い。駐車場事故、車線変更、交差点での事故など、保険会社が提示する過失割合に納得のいかない被害者からの依頼が多い。最近では、口コミを聞いた静岡県外からの相談・依頼も多い。

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