交通事故にあって、医師からPTSDと診断された。
保険会社からPTSDを否定されてしまったので、裁判を検討している。
こんにちは!静岡の弁護士の山形です。
今回は、後遺障害の「PTSD」について解説しています。
PTSDは、保険会社からも争われる可能性の高い後遺障害ですので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
PTSDって?
「PTSD」というのは、心的外傷後ストレス障害のことです。
強烈な恐怖体験によってトラウマを負い、様々な症状が発生して、社会生活や日常生活に支障をきたす疾患です。
生死をさまようような大事故に遭遇した場合など、PTSDを発症することがあります。
裁判での基準と医師の診断
PTSDの診断基準としては、「米国精神医学会のDSM」といわれる基準や「世界保健機構(WHO)のICD」といわれる基準があります。
最近の裁判では、上記2つの基準をベースに、①強烈な外傷体験、②再体験症状(フラッシュバック)、③回避症状(事故現場など事故を思い出してしまう刺激を避けようとする症状)、④覚醒亢進症状(持続的な緊張状態により睡眠障害や集中力の低下)等があるか否か、検討されています。
なお、医師によっては、上記基準によらずに、別の診断基準に基づいて、広くPTSDと診断することもあります。
そのため、PTSDという診断名がついているからといって、裁判でもPTSDが認められるとは限りませんので注意が必要です。
必要な証拠
PTSDの症状を証明するために、診断書、レセプト(診療報酬明細書)、カルテ、看護記録などの医療記録の他に、事故状況について実況見分調書や物損の損害資料などの証拠も必要となります。
また、日常生活や社会生活で生じている支障について具体的に説明した陳述書などの資料も用意すると良いでしょう。
後遺障害等級
PTSDを発症して、回復が見込まれないという場合、後遺障害等級としては、原則として、14級10号(通常の労務に服することは出来るが、軽微な障害を残すもの)、12級(通常の労務に服することは出来るが、多少の障害を残すもの)、9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)が認定されることになりますが、裁判例では、中間的な等級として、例えば11級が認定されることもあります。
非器質性精神疾患
仮に、裁判でPTSDが認定されなかったとしても、(PTSD以外の)非器質性精神疾患の後遺障害が残ったとして、14級などの後遺障害が認定される可能性もあります。
非器質性精神疾患というのは、脳組織に物理的な損傷がない場合に発症した疾患のことで、PTSDの他に、例えば、うつ病などがあります。
そのため、裁判の戦略的としては、PTSDを主張しつつ、仮に、PTSDが認められないとしても、非器質性精神疾患が認められるべきとの主張をしておくべきでしょう。
なお、非器質性精神疾患の場合、素因減額といって、本人の性格や事故以外の要因の影響などが考慮されて賠償額が減額されることがあります。
まとめ
いかがでしたか?
今回はPTSDについて解説しました。
病院でPTSDと診断されたからといって裁判でもPTSDと認定されるとは限りませんので、PTSDを裏付ける証拠をきちんと集めるようにしましょう。