逸失利益って何?
事故後も給料は減っていないけど、後遺障害の補償はもらえるの?

 

この記事は、このような疑問をお持ちの方のために書きました。

 

こんにちは。弁護士の山形です。この記事では、初めて交通事故にあってしまった公務員・会社員の方ために、逸失利益の基本について解説しています。
特に、「後遺障害が認められたけど、給料は減っていない」という方は、参考にしてみてください。

本記事を執筆した弁護士

静岡城南法律事務所

山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、一人で年間150件以上の交通事故案件を手掛けている。慰謝料、後遺障害、過失割合に関する交渉・裁判を得意とする。

目次

この記事の結論

Q1. 公務員・会社員で事故後に減収がなければ、後遺障害逸失利益は一切請求できないのでしょうか?
A1. いいえ、「特段の事情」があれば請求可能です。最高裁昭和56年12月22日判決(民集35巻9号1350頁)は、減収がない場合でも、①本人の特別な努力で収入を維持している場合、②昇給・昇任・転職等で不利益な取扱いを受けるおそれがある場合など、「後遺症が被害者にもたらす経済的不利益を肯認するに足りる特段の事情」があれば逸失利益を認める余地があると判示しました。相手方保険会社が「減収がないから逸失利益ゼロ」と主張してきても、諦める必要はありません。
Q2. 減収がない場合に逸失利益が認められるかは、どんな事情で判断されるのですか?
A2. 実務上は、主に7つの要素を総合考慮して判断されます。元東京地裁民事27部の中園浩一郎裁判官による講演録(赤本2008年版)が、平成10年以降の下級審52件を分析して整理したもので、①昇進・昇級等の不利益、②業務への支障、③退職・転職の可能性、④勤務先の規模・存続可能性、⑤本人の努力、⑥勤務先の配慮、⑦生活上の支障、の7つです。公務員については身分保障の手厚さから定年までの逸失利益が否定されやすい一方、定年後の再就職困難性を理由に、定年後期間について労働能力喪失率どおりの逸失利益を認めた裁判例が多いとされています。
Q3. 逸失利益を具体的にいくら請求できるのか、計算例を教えてください。
A3. 計算式は「基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」です。たとえば症状固定時45歳・年収600万円の会社員が後遺障害12級(労働能力喪失率14%)の認定を受け、67歳までの22年間(ライプニッツ係数15.9369、法定利率年3%)について逸失利益が認められると、600万円 × 14% × 15.9369 ≒ 約1,338万円となります。減収がなくても「特段の事情」が立証できればこの金額を請求できる可能性があるため、保険会社の「ゼロ提示」で安易に示談しないことが重要です。
Q4. 減収がない事案で逸失利益を勝ち取るには、何を証拠として準備すべきですか?
A4. 「本人の努力」と「業務上の支障」を第三者目線で立証する証拠が決定的です。中園裁判官も講演録の結びで「被害者の稼働状況等について勤務先の上司や人事担当者の陳述書を提出し尋問を申請するなど、考慮要素についてのきめ細かな主張・立証が期待される」と明確に指摘しています。具体的には、勤務先上司・人事担当者の陳述書、人事考課表、昇進・異動の記録、後遺障害による支障を映した動画、通院・服薬記録、勤務先の配慮を示す書面等を早期に準備することが肝要です。

執筆:弁護士 山形祐生(静岡県弁護士会 登録番号44537/日本交通法学会所属/静岡県交通事故相談所 顧問弁護士〔静岡県知事の委嘱による〕)/最終更新:2026年4月19日

公務員・会社員の逸失利益とは?基本のキホン

後遺障害が認定されたら逸失利益を請求しよう

交通事故にあってケガをしてしまい、後遺障害が残ってしまうことがあります。
後遺障害があると、事故前と同じように働けず、仕事を休んだり、効率が悪くなったりして、収入が減ってしまうこともあります。
このような場合、後遺障害が無ければ将来的に得られたであろう収入を加害者・保険会社に請求することができます。
この「将来的に得られたであろう収入」のことを「逸失利益」といいます。

逸失利益の計算式は次のとおりです。

後遺障害逸失利益の計算式

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

労働能力喪失率は、自動車損害賠償保障法施行令別表に応じた目安が定められており、たとえば14級で5%、12級で14%、9級で35%、5級で79%、1級〜3級で100%となっています。

また、令和2年4月1日施行の民法改正により、法定利率が年5%から年3%に引き下げられ(民法404条2項)、中間利息控除の利率も年3%となりました(民法417条の2)。これにより、令和2年4月1日以降に発生した事故の逸失利益は、改正前よりも増額する方向で計算されることになります。

減収がない場合でも逸失利益は請求できるのか?

公務員や会社員の場合、交通事故でケガをして、後遺障害を残しながら、その後、復職して、事故前と同様、あるいはそれ以上の収入を得ているということがあります。
つまり、後遺障害は残ったけど、減収がないということです。
このような場合も、逸失利益が認められるのでしょうか?

結論としては、ケースバイケースとなります。

過去の裁判例では、減収がなくても逸失利益が認められたケースもありますし、減収がないからという理由で逸失利益が認められなかったケースもあります。

なお、会社員のケースですが、当事務所が扱ったケースで事故後の減収がない(収入が大幅に増加している)という事情のもとで逸失利益が認定されたケースがありますので参考にしてみてください。


以下、最高裁判例と下級審裁判例の傾向を踏まえて、どのような事情があれば逸失利益が認められるのかという点について、解説していきます。

ちなみに、逸失利益は認められなくても、後遺障害慰謝料は認められますので、必ず請求するようにしましょう。

減収がない場合の逸失利益をめぐる2つの最高裁判例

減収がない場合の逸失利益を考えるうえで避けて通れないのが、次の2つの最高裁判例です。

① 昭和42年判決|「差額説」的立場

最判昭和42年11月10日・民集21巻9号2352頁は、交通事故により身体障害等級5級(労働能力喪失率79%)の後遺障害を残した被害者について、復職後に格別の収入減がなかったという事案で、「損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであるから、労働能力の喪失・減退にもかかわらず損害が発生しなかった場合には、それを理由とする賠償請求ができないことはいうまでもない」として、逸失利益を否定しました。

この判決は、いわゆる「差額説」(後遺障害がなければ得られたと考えられる収入と、後遺障害を残した状態で現に得られる収入の差額を損害と捉える考え方)を形式的に当てはめたものと評価されています。

② 昭和56年判決|「特段の事情」論の登場

その後、学説の展開等を踏まえ、最判昭和56年12月22日・民集35巻9号1350頁は、身体障害等級14級(労働能力喪失率5%)の後遺障害を残した公務員の逸失利益について、次のように判示しました。

「かりに交通事故の被害者が事故に起因する後遺症のために身体的機能の一部を喪失したこと自体を損害と観念することができるとしても、その後遺症の程度が比較的軽微であって、しかも被害者が従事する職業の性質からみて現在又は将来における収入の減少も認められないという場合においては、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はない」

一見被害者に厳しい判決にも見えますが、重要なのは、「特段の事情」として次のような場合を例示した点です。

最判昭和56年12月22日が示した「特段の事情」の例

① 事故の前後を通じて収入に変更がないことが、本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであって、かかる要因がなければ収入の減少を来たしているものと認められる場合

② 労働能力喪失の程度が軽微であっても、本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし、特に昇給、昇任、転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあると認められる場合

など、後遺症が被害者にもたらす経済的不利益を肯認するに足りる特段の事情

昭和56年判決の「特段の事情」論は傍論であることに注意

実は、昭和56年判決も結論としては逸失利益を否定しており、「特段の事情」論は傍論(判決の結論を導くために直接必要な判示ではない部分)であると指摘されています(元東京地裁民事27部 中園浩一郎裁判官 講演録「減収がない場合における逸失利益の認定」・赤本2008年版)。

傍論とはいえ最高裁が示した判断ですから、その後の下級審の実務は、昭和56年判決が示した「特段の事情」の例を出発点に、さまざまな考慮要素を洗練させてきました。「特段の事情」の立証責任は被害者側にあるというのが実務の扱いなので、保険会社が「減収がないから逸失利益ゼロ」と主張してきたときに、被害者側が黙ってしまうと、本当にゼロで終わってしまいます。「特段の事情」をいかに具体的に主張・立証できるかが、この問題の勝負どころです。

逸失利益の認定で考慮される7つの事情

元東京地裁民事27部の中園浩一郎裁判官は、赤本2008年版(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』)において、平成10年以降の減収なし事案52件の裁判例を分析し、下級審が「特段の事情」の有無を判断する際の考慮要素を次の7つに整理しました。実務上も、この7要素が事実上の指針として機能しています。

逸失利益の認定で考慮される7つの事情

① 昇進・昇級等の不利益
② 業務への支障
③ 退職・転職の可能性
④ 勤務先の規模・存続可能性等
⑤ 本人の努力
⑥ 勤務先の配慮等
⑦ 生活上の支障

それでは、順番に具体的な裁判例とともに解説していきます。

① 昇進・昇級等の不利益

事故後、昇進・昇級等で不利益が発生した場合、あるいは、降格された場合、逸失利益が認められる方向の事情として考慮されます。

このような場合、減収は無くても、実質的には経済的な不利益が発生しているわけですから、逸失利益が認められやすくなるわけです。

過去の裁判例では、たとえば大阪地判平成10年3月26日(交民集31巻2号497頁)は、「勤務先が将来の幹部候補と考えていたが、事故による後遺障害のため、その可能性が無くなった」という事情を考慮し、逸失利益を認めました。また、東京地判平成13年7月31日(自保ジャーナル1415号)は、運送会社の事務職の事案で、「事故後、勤務先から業務で車を運転することを禁止されたため、営業職に復帰できず、支店長への昇進が困難になった」という事情を考慮しています。

② 業務への支障

減収が無くても、後遺障害により業務に支障が生じている場合には、将来的に減収が発生する可能性が高いといえますから、逸失利益が認められる方向の事情として考慮されます。

過去の裁判例では、たとえば東京地判平成11年5月19日(交民集32巻3号785頁)は、測量事務所に勤務する建築士について、「後遺障害のため製図の能率が3分の1に低下したことや現場で高所に登れなくなった」という事情から逸失利益を認めました。

中園裁判官は、業務支障の立証について「後遺障害の部位・内容・程度と被害者の業務の具体的内容との対応関係を踏まえ、業務の内容に応じて具体的に指摘することが有効である」と示唆しています。

③ 退職・転職の可能性

後遺障害により勤務継続が困難になり退職すると収入が途絶えますから、当然に減収が発生することになります。
また、後遺障害があると、再就職の際に不利になったり、条件が悪くなることもあり得ます。
そのため、現在の勤務先での勤務継続が不確実で退職・転職の可能性がある場合には、逸失利益を認める方向の事情として考慮されます。

過去の裁判例では、名古屋地判平成17年4月13日(自保ジャーナル1609号)が、「事故後、派遣会社の期限付契約社員として勤務している」という事案で、「一般の会社員より勤務継続が不確実で退職・転職の可能性が高い」として逸失利益を認めています。

公務員については、民間企業の会社員と比較して、勤務先が安定しており身分保障が手厚いため、定年までは勤務を継続できる可能性が高いとされます。実際に、中園裁判官の分析でも、「定年までの期間は逸失利益を否定または喪失率を低く抑え、定年後期間について後遺障害に対応する労働能力喪失率どおりの喪失率を認める」という二段階認定が公務員事案で多く見られます。

たとえば、札幌地判平成11年12月2日(交民集32巻6号1918頁)は、国立大学の学務部教務課に勤務する53歳男性が、1眼失明・神経精神障害・骨盤変形等で併合1級の認定を受けた事案で、定年(60歳)までの7年間は「減収なく給与面での不利益もない」として逸失利益を否定する一方、定年後67歳までの7年間については「再就職不可能」として労働能力喪失率100%をそのまま認定しています(基礎収入は賃金センサスを使用)。

私の経験を踏まえた感覚としても、公務員の場合、定年までの期間については認められたとしても、本来の基準よりも低い金額となる傾向があるように思います。もっとも、定年後の再就職時の不利益を合わせて主張することで、トータルで相当額の逸失利益を獲得できる可能性は十分にあります。

④ 勤務先の規模・存続可能性等

勤務先の規模・存続可能性等も、勤務を継続することができなくなるかもしれない、という観点から、逸失利益の可否を判断する際の考慮要素となります。

過去の裁判例では、東京地判平成13年2月16日(交民集34巻1号237頁)が「勤務先が父親が経営する同族会社で、経営基盤が盤石とはいえない」という事情を、大阪地判平成15年1月24日(自保ジャーナル1512号)が「勤務先が従業員の6分の1のリストラを発表している」という事情を、それぞれ逸失利益を認める方向で考慮しています。

⑤ 本人の努力

減収が生じないように、また、勤務先に迷惑を掛けないために、本人が努力をしていることが逸失利益を肯定する方向の事情として考慮されることがあります。
例えば、痛み等の症状に耐えながら勤務を継続している、症状を軽減させ、あるいは悪化を防ぐための努力をしている、業務上のハンディキャップをカバーするための努力をしている、というような場合です。

過去の裁判例では、名古屋高裁金沢支部判平成16年11月29日(自保ジャーナル1577号)が「残業し、平日の夜や土日を返上して仕事をしている」という事情を、岡山地判平成12年3月23日(交民集33巻2号610頁)が「もともと建築会社で宮大工を志していたが、事故後断念して退職し、2級建築士の資格を取得して、積算・設計の仕事をしている」という事情を、それぞれ逸失利益を認める方向で考慮しています。

⑥ 勤務先の配慮等

後遺障害により業務に支障が生じているにもかかわらず減収が無いのは、勤務先の配慮や温情によるものであるといえる場合には、逸失利益を肯定する方向の事情となります。

過去の裁判例では、大阪高判平成17年12月27日(自保ジャーナル1632号)が、営業担当の被害者に対し、「勤務先が、後遺障害のため営業での車の運転を禁止した反面、タクシー代を負担している」という事情を考慮しています。

中園裁判官は、「労働能力喪失の事実から勤務先の配慮・温情を推認するのではなく、勤務先の配慮や温情そのものを証拠に基づき直接的に立証・認定することも検討されるべき」と指摘しており、立証の精度を上げるうえで示唆に富む指摘です。

⑦ 生活上の支障

日常生活に支障が生じている場合、逸失利益を肯定する方向の事情として考慮される場合があります。
もっとも、生活上の支障と仕事上の支障は関係ないという考え方もあるので、この点は、あくまで補助的な要素と考えて良いと思います。

中園裁判官も、「後遺障害による生活上の支障が間接的にであれ労働に影響を及ぼすなどして経済的不利益を生じさせる場合には、これを逸失利益を肯定し又は増加させる事情として考慮することは許される」と整理しています。

減収なしの公務員で逸失利益が認定された参考事例と計算イメージ

先に紹介した札幌地判平成11年12月2日(交民集32巻6号1918頁)のほかにも、下級審には公務員について定年前の期間も含めて一定割合の労働能力喪失を認めて逸失利益を認定した例があります。「公務員だから減収ゼロ=逸失利益ゼロ」という保険会社の画一的主張を覆すための有力な論拠です。

以下は、当事務所でよく扱うパターンを想定した計算シミュレーションです。

【計算例①】後遺障害12級・年収600万円・45歳会社員の場合

基礎収入:600万円
労働能力喪失率:14%(後遺障害12級)
労働能力喪失期間:22年(67歳まで)
ライプニッツ係数(22年・年3%):15.9369

逸失利益 = 600万円 × 14% × 15.9369 ≒ 約1,338万円

【計算例②】公務員・二段階認定(定年まで5%、定年後14%)のイメージ

症状固定時55歳・年収700万円の公務員・後遺障害12級の想定で、定年60歳までは喪失率を抑え、定年後67歳まで14%を認めるパターンです。

【定年まで5年間】700万円 × 5% × 4.5797(5年係数) ≒ 約160万円
【定年後7年間】基礎収入として賃金センサス(例:500万円)× 14% ×{10.6350(12年係数)-4.5797(5年係数)}= 500万円 × 14% × 6.0553 ≒ 約423万円

合計 ≒ 約583万円(保険会社の「ゼロ提示」からは大幅な増額)

【計算例③】後遺障害14級・年収500万円・40歳会社員(喪失期間5年)

基礎収入:500万円
労働能力喪失率:5%(後遺障害14級)
労働能力喪失期間:5年
ライプニッツ係数(5年・年3%):4.5797

逸失利益 = 500万円 × 5% × 4.5797 ≒ 約114万円

保険会社が「減収なし=逸失利益ゼロ」と主張してくる場合と、「特段の事情」を主張立証できる場合とでは、数百万円〜1,000万円以上の差が生じる可能性があります。

有利な事実を証明する方法|被害者側代理人のきめ細かな立証が鍵

減収がない場合に逸失利益を認められるためには、上記のような肯定する方向で考慮される有利な事実を証明することが大切です。

この点について、中園裁判官は、講演録の結びで極めて示唆に富む指摘をしています。要約すると次のような内容です。

52件の裁判例を調査・分析して感じたのは、これらの考慮要素が必ずしも十分に立証・認定されていないのではないかということである。判決においては、考慮要素に関する具体的事実を証拠に基づき直接的に認定する方が説得力が増す。その前提として、被害者側の訴訟代理人には、たとえば、被害者の稼働状況等について勤務先の上司や人事担当者の陳述書を提出し尋問を申請するなど、考慮要素についてのきめ細かな主張・立証が期待される

これは裁判官自身が被害者側代理人に向けて発したメッセージとして非常に重要です。「労働能力喪失率どおりに推認してほしい」式の主張では足りず、7つの考慮要素について一つひとつ具体的証拠で立証していくべき、ということです。

具体的には、勤務先の上司や人事担当者に協力していただいて、勤務状況等について陳述書を作成したり、証人として裁判所にお越しいただくことが考えられます。
また、実際に勤務先でどんな仕事をしていて、どんな支障が生じているのか分かるように、動画を撮影することも考えられます。

特に決められた方法はないので、後遺障害によって生じている仕事上の支障を裁判官や保険会社に理解してもらえるような証拠を用意するようにしましょう。

被害者ご自身で確認できる証拠チェックリスト

以下は、減収がない事案で逸失利益を主張する際に、被害者ご自身で準備・確認していただきたい証拠類の一覧です。

減収なし事案での証拠チェックリスト

□ 上司・人事担当者による陳述書(後遺障害による業務上の支障、勤務先の配慮の内容を具体的に記載)
□ 人事考課表・勤務評価記録(事故前後の評価の変化が分かるもの)
□ 昇進・異動・役職の変更履歴(昇進の遅れ、降格等の記録)
□ 業務内容を撮影した動画・写真(製図・運転・現場作業等、支障が可視化できるもの)
□ 通院記録・服薬記録(症状が継続している客観的裏付け)
□ 残業時間記録・勤務時間記録(本人の努力の可視化、周囲の配慮の可視化)
□ 勤務先の就業規則・給与規程(昇給・昇進の仕組み、身分保障の範囲)
□ 転職・再就職時の条件悪化を示す資料(求人票、過去の同業者の条件等)
□ 業務上の配慮を直接示す書面(タクシー代負担の領収書、業務軽減の社内通知等)

交渉・裁判でよくある失敗パターン

減収なし事案で被害者側が陥りがちな失敗として、次のようなものがあります。

  • 「減収していないから仕方ない」と諦めて、保険会社の提示額で示談してしまう — 特段の事情の立証を試みずに示談に応じてしまうのは、最も多い失敗です。
  • 本人の努力を「当たり前のこと」として主張しない — 痛みに耐えて残業している、平日の夜や土日に仕事を持ち帰っている、といった事実は、「特別の努力」として逸失利益を肯定する方向に強く働きます。
  • 勤務先への協力依頼を避けてしまう — 「会社に迷惑をかけたくない」という気持ちは分かりますが、陳述書の取得がないと裁判官が事情を把握できません。弁護士を通じて丁寧に依頼すれば、協力を得られるケースは多いです。
  • 労働能力喪失率からの推認だけに頼ってしまう — 中園裁判官が指摘するとおり、「○級認定=○%喪失=逸失利益あり」という論法は、判決の説得力を欠き、加害者側の納得を得られません。個別の考慮要素を直接証拠で立証する姿勢が重要です。
  • 定年後の再就職リスクを主張しない — 特に公務員・大企業会社員の場合、定年までの期間が争点になりがちですが、定年後の再就職時の不利益を併せて主張することで、逸失利益を長期間・一定割合で認めてもらう余地が生まれます。

こんな方は今すぐご相談を

以下のいずれかに当てはまる方は、示談する前に一度、交通事故に強い弁護士への相談をおすすめします。

  • 保険会社から「減収がないので逸失利益はゼロです」と言われた方
  • 公務員・大企業会社員・準公務員で、後遺障害が認定されたのに逸失利益を争われている方
  • 事故後、配置転換・降格・昇進の遅れなど、直接の減収以外の不利益を受けている方
  • 痛みに耐えて仕事を続けているが、正当に評価されていないと感じる方
  • 勤務先の配慮でなんとか業務をこなしているが、将来の定年後・再就職時が不安な方

なお、ご自身またはご家族が加入している自動車保険等に「弁護士費用特約」が付いていれば、多くの場合、弁護士費用は保険で賄われ、実質自己負担なしで弁護士に依頼することが可能です。まずは保険証券をご確認ください。

当事務所は、交通事故被害者側に特化した法律事務所です。対面のご相談に加え、Zoom・電話・メール・LINE(24時間受付)でのご相談にも対応しており、静岡県内はもちろん、全国からのご相談・ご依頼をお受けしています。

まとめ

いかがでしたか?

今回は、公務員・会社員の方で、後遺障害が認定されたのに減収が生じていないケースについて、2つの最高裁判例(昭和42年判決・昭和56年判決)と中園浩一郎裁判官(元東京地裁民事27部)が整理した7つの考慮要素を軸に、下級審の具体的な裁判例・証拠チェックリスト・計算シミュレーションまで踏み込んで解説しました。

中園裁判官自身が指摘しているとおり、減収なし事案では、7つの考慮要素について被害者側代理人がきめ細かに主張・立証することが、勝敗を分けます。保険会社の「減収なし=ゼロ提示」に押されて示談する必要はありません。

特に、「後遺障害が認められたけど、給料は減っていない」という方は、示談前に一度、専門家にご相談ください。

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Q小さな事故で、特に保険会社との間で揉めていないのですが、弁護士に相談しても良いですか?
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Q裁判まではしたくないのですが、交渉で示談することは可能ですか?
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Q解決までには、どれくらいの時間が掛かりますか?
A

事案にもよりますが、交渉の場合、交渉開始から1ヶ月程度で示談して終わるケースが多いです。ただし、後遺障害の申請をしたり、過失割合に争いがあって実況見分調書等を取り寄せる場合には、プラス2、3月程度かかります。
また、裁判の場合は、早くても半年程度は掛かります。当事務所が過去に扱った裁判では、平均すると1年~2年で終わるケースが多いです。

Q弁護士に相談したら必ず依頼しなければいけないのでしょうか?
A

もちろん、相談だけで依頼しなくても問題ありません。むしろ、複数の弁護士に会って相談したうえで、最も信頼できる弁護士に依頼することをお勧めします。

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