交通事故にあって歯を失ってしまった・・・
保険会社から「歯牙欠損については逸失利益は認められない」と言われてしまった。

 

この記事は、このような状況でお困りの方のために書きました。

 

こんにちは!静岡の弁護士の山形です。
今回は、「歯牙欠損」について解説しています。
逸失利益が認められるためのポイントなどについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

本記事を執筆した弁護士

静岡城南法律事務所

山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、一人で年間150件以上の交通事故案件を手掛けている。慰謝料、後遺障害、過失割合に関する交渉・裁判を得意とする。

目次

歯牙欠損の治療に使われる装置

歯が欠損した場合等の治療方法・装置について、代表的なものを紹介します。

インレー

いわゆる詰め物です。セラミックの詰め物の場合は、セラミックインレーといいます。

クラウン

いわゆる被せもので、歯牙の全体を覆うものです。

ブリッジ

欠損した歯の両隣の歯を削って支えとして使って、人工歯を掛け渡す治療法です。

有床義歯

いわゆる入れ歯です。
局部床義歯(一部の入れ歯)の場合、クラスプという金属のバネで支えることがあります。

インプラント

欠損した歯牙の歯槽骨に人工の歯根を埋めて、人工の歯牙を被せるものです。
治療費が高額となるため、事故との因果関係(インプラントをする必要性)を争われることが多いです。

後遺障害等級の認定

次に、歯牙欠損について後遺障害等級が認定されるための条件について解説していきます。

歯牙欠損の後遺障害等級

歯牙欠損の後遺障害等級は、歯科補綴を加えた歯牙の本数によって定められています。
具体的には、以下のとおりです。

3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの・・・14級2号
5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの・・・13級5号
7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの・・・12級3号
10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの・・・11級4号
14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの・・・10級4号

「歯科補綴を加えた」の意味

では、どのようなものであれば「歯科補綴を加えた」といえるのでしょうか?

この点については、「現実に喪失(抜歯を含む)または著しく欠損した歯牙(歯冠部の体積の4分の3以上を欠損)に対する補綴、および歯科技工上、残存歯冠部の大部分を欠損したものと同等な状態になったものに対して補綴したものを意味」する(「改訂版後遺障害等級認定と裁判実務-訴訟上の争点と実務の視点-」高野真人編)と言われていますので、少しでも歯牙に対して補綴が加えられれば、OKというわけではありませんでの注意が必要です。

歯牙補綴を加えた歯牙の数

算入される歯牙

原則算入されるもの

・歯冠部の欠損が大きいため継続歯としたもの
・欠損した歯に代えてブリッジを使ってダミーを入れた場合
・歯冠部の大部分の切除した支台歯
・亜脱臼の場合に抜歯した歯
など

原則算入されないもの

・有床義歯
・ブリッジなどを補綴した場合の支台冠やクラスプの装着歯
・ポストインレーを行うにとどまった歯牙
・乳歯 ※永久歯が生えないという証明がある場合を除く
・第三大臼歯(いわゆる親知らず)
など

喪失した歯牙の数と義歯の数が異なる場合の数え方

歯牙の大きさや歯冠の間隙の関係で喪失した歯牙の数が後に補綴された義歯の数よりも少ないということがあります。
そのような場合は、喪失した歯数によって等級が認定されます。

補綴が行われなくても算入される場合

補綴が行われなかったとしても、歯牙の喪失、抜歯、歯冠部の大部分の欠損等が確認されれば「歯科補綴を加えたもの」に算入されることがあります。

歯牙欠損の逸失利益

歯牙障害の後遺障害が認定されたとしても、ただちに労働能力の喪失に直接つながるとはいえません。
そのため、裁判例をみると、歯牙欠損については、逸失利益が否定されるケースが多いです。

しかし、仕事内容や症状などから歯牙欠損が労働能力に影響を与えるということを立証することで、労働能力の喪失が認定された裁判例もあります。
そのため、歯牙欠損によって、仕事上どんな不都合が生じているのかという点について具体的に主張し、また、実際の仕事の様子を撮影するなどして、その不都合を証明していくことがポイントです。
ただし、仮に、労働能力の喪失が認められたとしても、労働能力喪失率や喪失期間については、他の後遺障害よりも低く認定される傾向があるので注意が必要です。

また、仮に、逸失利益が認められないとしても、慰謝料の増額事由として考慮される場合もありますから、やはり、仕事や日常生活での不具合について、具体的に主張・立証していくことは大切です。

インプラント治療と事故との因果関係

インプラント治療は高額になるため、加害者の側から「インプラント治療までは必要ない」「ブリッジ等による治療で十分」といった主張がなされることが多くあります。

最近の裁判例では、有床義歯やブリッジによる治療とインプラントを具体的に比較して、インプラント治療と事故との因果関係の有無を判断する傾向にあります。

そのため、被害者としては、各治療法の一般論に加えて、なぜインプラント治療が必要なのかという点について具体的に主張・立証していくことがポイントとなります。
場合によっては、医師にも協力してもらって意見書などを書いてもらうと良いでしょう。

将来のメンテナンス費用

義歯等を入れた場合、耐用年数がありますから、将来的にメンテナンスや治療が必要となることがあります。

このような将来の費用について、肯定する裁判例もありますから、もし、これらの費用が生じる可能性が高いのであれば、必ず請求するようにしましょう。
なお、請求する場合には、将来発生する損害を前払いとして請求することになるので、ライプニッツ係数を掛けて計算する必要があります。

まとめ

いかがでしたか?
今回は、「歯牙欠損による後遺障害」について解説しました。
歯牙欠損では、逸失利益やインプラント治療と事故との因果関係などが争いになることが多いので、ぜひ参考にしてみてください。

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山形祐生(やまがたゆうき)

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