愛車のポルシェが追突されて下取り価格が下がってしまった・・・
保険会社が評価損を認めない・・・
この記事は、このような状況でお困りの方のために書きました。
こんにちは!弁護士の山形です。
今回は、ポルシェの評価損について過去の裁判例を検証し、解説しています。保険会社との交渉で修理費用だけではなく、評価損についても請求したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ポルシェの評価損
事故で下がった車の価値を補償してもらうためには評価損を請求する!
自慢のポルシェが事故にあったら悔しいですよね。
事故で車が破損した場合、修理をすることで車が事故前の状態に戻るであれば、その修理費用が支払われれば損害はカバーされることになります。
そのため、保険会社は「修理さえすれば良いでしょ」という対応をすることが多くあります。
しかし、修理をしても、機能や外観に欠陥が残ったり、事故歴があることで下取り価格が低下することもあります。
このような事故当時の車の価格と修理後の車の価格との差額を「評価損」といいます。
特に、登録から間もない車や高級車については評価損が認められる傾向にありますから、このような車が事故に遭ってしまった場合には、評価損を請求することを検討しましょう。
評価損の算定方法
評価損の算定方法としては、以下の4つの方法があります。
①減価方式・・・事故当時の車の価格と修理後の車の価格との差額を損害とする方法
②時価基準方式・・・事故当時の車の価格の一定割合を損害とする方法
③金額表示方式・・・車の種類、使用期間、被害の内容・程度、修理費用等の諸事情を考慮して損害を金額で示す方法
④修理費基準方式・・・修理費の一定割合を損害とする方法(例えば修理費用の20%を評価損とみなす算定方法です。)
裁判所は、多くのケースで④修理費基準方式、次いで③金額表示方式を採用して評価損を算定する傾向にあります。
つまり、修理費用の金額を重要な要素として考えているわけです。
それでは、次に、具体的な裁判例について見ていきましょう。
ポルシェの評価損に関する裁判例
大阪地裁・令和2年2月5日判決
車名:ポルシェ・パナメーラ4
初年度登録からの期間:3年6ヶ月
走行距離:1万3704km
修理費用:71万4301円
評価損:7万1430円(修理費用の10%)
【特記事項】
・損傷が生じた部位は、後部フェンダーという部品を交換することによって修理することができない部分であった。
・事故後に車を売却した際に、右後部フェンダーの板金修理歴が売買代金の減額要素とされた。
大阪地裁・令和元年10月17日判決
車名:ポルシェ・カイエンGTS
初年度登録からの期間:3年3ヶ月
走行距離:1万9494km
修理費用:40万9752円
評価損:10万円(修理費用の約25%)
さいたま地裁・平成30年10月30日判決
車名:ポルシェ・シュトロゼック・メガ・ウルトラ
初年度登録からの期間:21年
走行距離:3万1800km
修理費用:35万円
評価損:15万円(修理費用の約42%)
【特記事項】
・被害車両はいわゆる希少車であり、車の外部塗装は,艶消し黒(マットブラック)であったところ、部分塗装による色むらについて評価損として認定されている。
大阪地裁・平成29年5月25日判決
車名:ポルシェ・マカン
初年度登録からの期間:4ヶ月
走行距離:5000km
修理費用:176万円
評価損:52万8000円(修理費用の30%)【特記事項】
・修理箇所に車両骨格部分である右センターピラーが含まれている。
大阪地裁・平成28年6月10日判決車名:ポルシェ・ケイマン
初年度登録からの期間:3年2ヶ月
走行距離:2万1072km
修理費用:169万円
評価損:16万9000円(修理費用の10%)【特記事項】
・原告から証拠として提出された見積書では、事故前の評価額が400万円、事故後の評価額が300万円とされていたが、裁判所は採用しなかった。
東京地裁・平成28年3月10日判決
車名:ポルシェ911
初年度登録からの期間:7年
走行距離:1万9389km
修理費用:117万9252円
評価損:11万7925(修理費用の10%)
東京地裁・平成27年6月19日判決
車名:ポルシェ・カイエン
初年度登録からの期間:5ヶ月
走行距離:5704km
修理費用:131万7805円
評価損:39万5341円(修理費用の約30%)
【特記事項】
・原告が証拠として提出した一般社団法人日本自動車査定協会の事故減価額証明書の査定額は56万3000円とされていたが採用されなかった。
裁判例を踏まえた検討
先ほど紹介した最近の裁判例に加えて、紹介しきれなかった過去の裁判例の傾向をまとめると、ポルシェの評価損については、以下のようなことが分かります。
- 修理費に対して10%から30%の範囲で評価損を認めるケースが多い。
- 新車同然の新しい車や希少価値のある車の場合には、修理費用に対して高い割合の評価損が認められることがある。
- 初年度登録からの期間が長かったり、走行距離が長い車については、評価損が認められないか、認められても修理費の10%に限られることが多い。
- 日本自動車査定協会が作成する事故減価額証明書や業者が作成する査定書は、採用されない(=裁判所は、証拠として重視しない)ことが多い。
したがって、これらの裁判例の傾向を踏まえたうえで、評価損について保険会社に請求することをオススメします。
事案にもよりますが、例えば、修理費用の40%程度の評価損を主張して請求し、最終的な落ち着き処として20%、30%あたりを狙ってみたらいかがでしょうか?
まとめ
いかがでしたか?
今回は、ポルシェの評価損について裁判例をふまえた検討結果を解説しました。
愛車のポルシェが事故で破損してしまった、という方はぜひ参考にしてみてください。