
駐車場内の事故で、保険会社の担当者からこう言われていないでしょうか。
「判例タイムズではこうなっているんで」
停止していたのにぶつけられた。それなのに「あなたの方が過失が大きいです」「あなたにも2割の過失があります」と言われて、納得がいかない——当事務所への駐車場事故のご相談は、ほとんどがこの場面から始まります。
最初に結論をお伝えします。保険会社が根拠にする「基本的過失割合」は、交渉の出発点にすぎません。当事務所には、「あなたが8割悪い」と言われた事故で依頼者の過失ゼロ(10対0)の判決を得た事例も、「停車の証拠がない」と言われながら、防犯カメラ映像を取得して10対0の示談に至った事例もあります。
本記事では、2026年3月30日発刊の判例タイムズ改訂版(別冊判例タイムズ39号。過去の裁判例をもとに事故類型ごとの基本的過失割合を整理した、保険会社も裁判所も目安に使う基準集です)に完全対応した全8類型の過失割合早見表を示したうえで、「なぜ停止していたのに過失を主張されるのか」「どうすれば覆せるのか」を、当事務所の実際の解決事例と裁判例に基づいて解説します。
本記事を執筆した弁護士
目次
この記事の結論
- Q1. 駐車場で停止していたのにぶつけられた。「こちらに過失はない」ですよね?
- A1. 残念ながら、駐車場内の事故では「停止していた=無過失」となるケースはむしろ例外的。公道と異なり、駐車場では他車の後退・転回が当然に想定されるため、裁判所は「衝突時に停止していたか」ではなく「停止するまでにどのような運転をしていたか」(相手の予定進路上まで進行したか、車間距離を空けていたか等)を含む一連の経過全体で過失を評価する(裁判実務で用いられる損害賠償の基準書「赤い本」2025年版・倉鋪卓徳裁判官講演録)。ただし、停止のタイミング・位置・時間などの事情が揃えば0:100が認められる。当事務所にも、0:100で解決した実例が複数ある。
- Q2. 駐車場内の主な事故類型ごとの基本的過失割合は?
- A2. 判タ改訂版(別冊判例タイムズ39号・2026年3月30日発刊)では駐車場内事故が8類型【Ⅷ-1〜Ⅷ-8】に整理された。本文の早見表参照。①出合い頭【Ⅷ-1】=50:50、②通路進行車vs退出車【Ⅷ-2】=30:70、③退出車同士【Ⅷ-3・新設】=50:50、④通路進行車vs進入車【Ⅷ-4】=80:20、⑤進入車同士【Ⅷ-5・新設】=50:50、⑥進入車vs退出車【Ⅷ-6・新設】=20:80、⑦区画内の対歩行者【Ⅷ-7】=90:10、⑧通路上の対歩行者【Ⅷ-8】=90:10。
- Q3. 基本的過失割合どおりにならない代表的なケースは?
- A3. 一方が衝突前に停止していた場合、停止したタイミング(長いほど有利)や位置(距離があるほど有利)によって0%になり得る。駐車区画から突然後退してきた車と通路通過中の車の事故で、通過車に過失なしとした裁判例がある(名古屋高裁 平成26年8月28日判決)。また判タ改訂版自体が、【Ⅷ-4】【Ⅷ-5】【Ⅷ-6】の基本基準の適用前提として「進入動作が客観的に予見し得る状態に至っていたこと」を要求しており、合図なしの急な進入等ではそもそも基本基準が適用されず個別判断となる。
- Q4. 保険会社の提示を覆すには何が必要か?
- A4. 立証ルートは主に4つ。①ドライブレコーダー映像(停止時間・位置関係の立証)、②店舗防犯カメラ(早いところでは1〜2週間で上書き消去。まず店舗に保存依頼し、弁護士会照会等で取得)、③車両の傷痕解析(提携解析業者による事故状況の科学的証明)、④類似裁判例の的確な引用。当事務所はこの4ルートすべてで保険会社提示を覆した解決実績がある(本文で実例を解説)。
早見表:駐車場事故・全8類型の基本的過失割合【2026年判タ改訂版対応】
2026年3月30日発刊の別冊判例タイムズ39号により、駐車場内の事故は従来の5類型から8類型【Ⅷ-1〜Ⅷ-8】に拡充されました。まず、あなたの事故がどの類型かをご確認ください。
| 類型 | 事故状況 | 基本割合(A:B) |
|---|---|---|
| 【Ⅷ-1】 | 通路の交差部分での出合い頭 | 50:50 |
| 【Ⅷ-2】 | 通路進行車A vs 駐車区画から出る車B | 30:70 |
| 【Ⅷ-3】 新設 |
駐車区画から出る車同士(前進・後退問わず) | 50:50 |
| 【Ⅷ-4】 | 通路進行車A vs 駐車区画に入る車B | 80:20 |
| 【Ⅷ-5】 新設 |
駐車区画に入る車同士 | 50:50 |
| 【Ⅷ-6】 新設 |
入る車A vs 出る車B | 20:80 |
| 【Ⅷ-7】 | 車 vs 歩行者(駐車区画内) | 車90:歩行者10 |
| 【Ⅷ-8】 | 車 vs 歩行者(通路上) | 車90:歩行者10 |
ただし、この表の数字はいずれも「双方が動いていたこと」を前提とした出発点です。 あなたの車が停止していた場合や、相手の動きが予見できなかった場合には、この数字のとおりにはなりません。次章で、当事務所の実際の解決事例をご覧ください。
この表の先を知りたい方へ
- 10対0にしたい方の具体的な戦い方と実例 → 駐車場事故の過失割合を10対0にしたい方への解説記事
- 10対0になった裁判例を調べたい方 → 駐車場事故で10対0になった裁判例の解説記事
当事務所の解決事例:保険会社の「当初提示」はこう変わった
駐車場事故の過失割合は、当事務所へのご相談が最も多い分野のひとつです。本サイトでは、保険会社の当初提示から結果が変わった代表的な事例として、8件の解決事例を公開しています。
一点だけ先にお伝えします。過失割合は、事故ごとの状況と証拠で決まります。 表のとおり、8件すべてが0:100に至ったわけではありません——25:75や5:95が到達点だった事例も、そのまま載せています。同じ結果をお約束するものではなく、10対0が難しいのはどんなケースかも後の章で具体的にご説明します。それでもこの8件を並べてご覧いただきたいのは、結果の数字そのものよりも、保険会社の当初提示を覆すまでの「型」が共通して表れているからです。ご自身の事故と似た状況の行を探してみてください(割合はいずれも「依頼者:相手」の順です)。
| 事故状況 | 当初提示 | 最終結果 | 決め手 | 解決まで |
|---|---|---|---|---|
| 駐車動作中、隣区画から相手がバック | 30:70 | 0:100(示談) | ドラレコ | 1週間 |
| 通路停止中、隣区画から相手がバック | 30:70 | 0:100(示談) | 傷痕解析 | 2ヶ月 |
| 出庫後停車中、相手がバック | 50:50 | 0:100(示談) | 防犯カメラ | 2ヶ月 |
| 通路停止中、前車が1区画飛ばし後退 | 80:20 | 0:100(示談) | 防犯カメラ | 約1ヶ月 |
| 歩行者待ち停止中、相手がバック駐車 | 40:60 | 5:95(裁判・和解) | 事故状況図 | 約1年 |
| 通路停止中、前車がバック駐車 | 80:20 | 25:75(裁判・和解) | ドラレコ | 1年 |
| 双方が駐車区画から後退発進 | 50:50 | 25:75(示談) | 裁判例の引用 | 1週間 |
| 通路走行後停止、相手が大回り後退 | 80:20 | 0:100(判決) | ドラレコ | 1年半 |
この表で注目していただきたいのは、結果の数字よりも覆し方です。第一に、決め手となった証拠は事故ごとに異なり、ドラレコが決め手になった事例の方がむしろ少ないこと(防犯カメラ・傷痕解析・裁判例の引用で覆した事例が並んでいます)。第二に、解決までの期間が1週間から1年半まで大きく開いていること——この差を分けたのは、証拠がどれだけ明確だったかです。覆し方の中身は、後述の「4つの立証ルート」で解説します。
なぜ「停止していたのに過失あり」と言われるのか
当事務所への駐車場事故のご相談で最も多い言葉が、これです。
「停止していたから、こちらに過失はないですよね?」
お気持ちはよく分かりますが、実は駐車場内の事故では、「停止していた=無過失」とされるケースはむしろ例外的です。この現実を知らないまま「止まっていたのだから絶対10対0だ」という前提で交渉に臨むと、かえって難航します。
公道上の事故との決定的な違い
公道上での事故では、停止している車には衝突を回避する術がないとして、過失が否定されるケースが一般的です。たとえば信号待ちで停止中に追突された場合、10対0(無過失)となるのが通常です。
しかし、駐車場内での事故はそう単純ではありません。
駐車場での「停止=無過失」は例外的
当事務所の実感として、また赤い本2025年版講義録でも明確に指摘されているとおり、駐車場内での事故で、衝突時に停止していた車の過失がゼロ(10対0)とされるケースは、むしろ例外的です。
この事実を知らないまま保険会社との交渉に臨むと、「停止していたのだから絶対に10対0だ」と強気に出て、かえって交渉が難航するケースもあります。
なぜ「停止していた=無過失」にならないのか
この場面で、A車が停止していたからといって、本当に「過失なし」と言えるのでしょうか?
裁判所が重視する2つの視点
視点①:B車の動きを予見できなかったのか?
駐車場内では、通路上を走行する車が駐車区画に向けて後退することは通常想定される動作です。したがって、A車においてB車の動きを予測できなかったとは言い切れません。視点②:そもそも、なぜA車はその位置で停止したのか?
衝突の瞬間は回避する術がなかったとしても、B車が駐車のために後退することを予測してあらかじめ車間距離を空けていれば、B車の後退進路上に入ることなく、衝突を回避できたはずです。
裁判例の実際の判断
赤い本2025年版講義録で倉鋪卓徳裁判官が分析している裁判例を見ても、後続車両が先行車両の予定進路上に進行して停止した後に衝突されたケースでは、「衝突直前の結果回避措置を取らなかった」ことよりも、「先行車両の想定される進路上まで進行した」こと自体を過失と評価している事例が多いとされています。
つまり、裁判所は「衝突時に停止していたか」ではなく、「停止するまでにどのような運転をしていたか」を含めた一連の経過全体を評価しているのです。
それでも0:100を勝ち取れるケースがある
もっとも、停止していた車の過失がゼロとされるケースが絶無というわけではありません。当事務所でも、駐車場事故で0:100を勝ち取った事例があります。
0:100になりやすいケースの特徴
・先行車の駐車動作が合図なく突然始まった
・先行車との距離が十分にある状態で停止した
・停止してから衝突まで一定時間(例:10秒以上)経過していた
・駐車区画が多く空いていて、先行車の動きが予測困難だった
・先行車が駐車区画から相当距離を後退してきた
これらの事情が複合的に認められる場合、後続車にとって衝突回避が困難だったとして、無過失が認められることがあります。
当事務所の解決事例で、通路で停止していた車両に、駐車区画に入ろうとしていた相手車両が衝突した事故について、裁判で0%:100%(停止車両に過失なし)と認められたケースがありますので、参考にしてみてください。
また、停止車両と先行車両との車間距離が短い場合(停止車両が先行車両に接近していた場合)であっても、以下の当事務所の解決事例のように、停止車両側の過失割合の方が小さくなることがありますので参考にしてみてください。
駐車場内の事故パターンごとの基本的過失割合と例外
通路を進行する車VS駐車区画に入る車【Ⅷ-4】
基本的過失割合と修正要素
通路を進行する車Aと駐車区画に駐車しようとしている車Bとの衝突事故の場合、判タ改訂版【Ⅷ-4】により、基本的過失割合は、Aが80%、Bが20%となります。
駐車場は、駐車のための施設であり、自動車が通路から駐車区画に駐車しようとすることは、駐車場として当然想定されるものであるため、通路の通行よりも優先され、このような過失割合となります。
修正要素として、例えば、Aが徐行していなかった場合にはA:B=90%:10%となります。
また、Bが著しい過失(急発進等)をした場合にはA:B=70%:30%となり、Bに重過失があればA:B=60%:40%となります。
なお、判タ改訂版【Ⅷ-4】は、この基準が適用される前提として、「駐車区画進入車Bの駐車区画への進入動作が、非常点滅表示灯(ハザードランプ)、方向指示器又は後退灯の点灯や車両の向き等により、当該駐車区画のある程度手前の位置で客観的に予見し得る状態に至っていたこと」を求めています。両車の距離が近接した地点で急に進入動作を開始した場合や、駐車区画から相当程度の距離を進行したところで後退による進入動作を急に開始した場合など、Aにおいて予見が困難であった場合には、基本基準(80:20)ではなく個別的な過失相殺率の検討が必要とされています。
0%:100%など基本的過失割合と異なる割合になるケース
似たような事故でも、通路を進行していたAが衝突前に停止していた場合には、基本的過失割合とおりにならない場合もあります。
例えば、停止したタイミング(長いほどAに有利)や停止した位置(Bとの距離があればAに有利)によっては、Aの過失が0%となることもあります。
また、Aの過失が0%にならないにしても、Aの方が有利な過失割合となることがあります。
保険会社は、Aが停止していたとしても、判例タイムズの基本的過失割合に沿った割合を主張してきますので注意が必要です。
当事務所の解決事例で、依頼者様が通路で停止中に駐車区画に入ろうとしていた車が衝突した事故で、裁判で0%:100%になったケースがありますので、参考にしてみてください。
また、AとBとの車間距離が短い場合(Aが詰めすぎの場合)であっても、以下の当事務所の解決事例のように、Aの過失割合の方が小さくなることがありますので参考にしてみてください。
通路を進行する車VS駐車区画から出る車【Ⅷ-2】
基本的過失割合
通路を進行する車Aと駐車区画から出ようとする車Bとの衝突事故の場合、判タ改訂版【Ⅷ-2】により、基本的過失割合は、Aが30%、Bが70%となります。
駐車区画から出ようとする車については、通行部分への進入する際の注意義務があり、進入しようとする通行部分の安全を確認して、通行部分を進行する車の進行を妨げるおそれがある場合は通行部分への進入を控える義務があります(道路交通法25条の2第1項に準ずる注意義務)。
そのため、通路を進行する車の方が優先され、有利な割合となっています。
修正要素として、例えば、Bに著しい過失があればA:B=20%:80%、Bに重過失があればA:B=10%:90%となります。
また、Aに著しい過失(順路違反や通常の進行速度を明らかに上回る速度での進行等)があればA:B=40%:60%、Aに重過失があればA:B=50%:50%となり得ます。
0%:100%など基本的過失割合と異なる割合になるケース
例えば、通路を進行していた車Aが急ブレーキをしても停止できない距離に近づいた段階で駐車区画から車Bが出てきた場合は、Aの過失が0%と判断される可能性があります。判タ改訂版【Ⅷ-2】の解説でも、こうした場合を「通路進行車の過失の有無自体が問題となるもの」として、基本基準によらず個別的に過失相殺率を検討すべきものとされています。
この類型の事故に関する裁判例として、以下のとおり、突然後退してきたBの100%過失を認定したものがあります。
名古屋高裁・平成26年8月28日判決(確定)
本件事故は、A車両がB車両の後方の通路を通過しかかっていたところ、B車両が本件駐車枠から突然後退して来たために発生したものと認められる。したがって、Aに過失はなく、Bは、本件駐車枠から北側通路へ後退により進入する際には、北側通路上の車両等の有無及びその動静を確認すべき注意義務があるのに、漫然と北側通路に後退して進入した過失が認められる。
また、駐車区画から出ようとするBが通路に進入するのに十分な車間距離を空けて、車Aが通路上で停止していたという場合もAの過失が0%と判断される可能性があります。このケースでは、十分な車間距離があったか否かが重要となります。
当事務所の解決事例で、通路で停止していた車の過失が0%で示談した例があります。
駐車区画に入る車VS駐車区画から出る車【Ⅷ-6・新設類型】
基本的過失割合
駐車区画に入ろうとする車Aと駐車区画から出ようとしていた車Bとの衝突事故については、従来、判例タイムズに類型として挙げられておらず、実務上A:B=30%:70%と運用されてきましたが、2026年3月30日発刊の判タ改訂版(別冊判例タイムズ39号)で【Ⅷ-6】として正式に類型化され、基本的過失割合はA:B=20%:80%となりました。出る車(B)の過失が従来の実務運用よりもさらに重くなった点が重要です。
判タ改訂版【Ⅷ-6】は、駐車区画退出車Bが相対的に重い過失を負う理由として、「通路進行車が駐車区画に進入することは駐車場の設置目的に沿った行動であり、駐車区画退出車としても、通路に進入する前の段階では駐車区画内で停止しているのであるから、駐車区画進入車よりも容易に安全を確認し、衝突を回避することができる」と説明しています。
修正要素として、Bに著しい過失(順路違反、退出動作の速度や急激さが著しい場合等)があればA:B=10%:90%、Bに重過失があればA:B=0%:100%となります。
また、Aに著しい過失(切り返し・方向転換の際に衝突まで退出車Bの存在を認識していなかった、急発進した等)があればA:B=30%:70%、Aに重過失があればA:B=40%:60%となります。
なお、判タ改訂版【Ⅷ-6】も【Ⅷ-4】と同様に、駐車区画進入車Aの進入動作が退出車Bから見て客観的に予見し得る状態に至っていたことを前提としています。両車の距離が近接した地点で急に進入動作を開始した場合や、駐車区画から相当程度の距離を進行したところで後退による進入動作を急に開始したため、Bにおいてどの駐車区画に進入しようとしているのか予見することが困難であった場合には、基本基準(20:80)によらず個別的に過失相殺率を検討すべきとされています。
修正要素の一覧(±10〜20)
| 修正要素 | A車(入る車)の過失 | B車(出る車)の過失 |
|---|---|---|
| A車の著しい過失 | +10 | -10 |
| A車の重過失 | +20 | -20 |
| B車の著しい過失 | -10 | +10 |
| B車の重過失 | -20 | +20 |
0%:100%など基本的過失割合と異なる過失割合になるケース
どちらか一方が相手方の車に気がついて衝突前に停止した場合には、基本的過失割合とおりにならない場合もあります。
例えば、停止したタイミング(停止時間が長いほど有利)や停止した位置(距離があればあるほど停止した側に有利)によっては、過失が0%となることもあります。
また、完全に過失が0%にならないにしても、有利な過失割合となることはあり得ます。
保険会社は、停止していようがいまいが、20%:80%や30%:70%、50%:50%といった過失割合を主張してくることがありますので注意が必要です。
以下の記事で紹介している裁判例(東京地裁・平成27年1月20日判決)では、「Y車は、XがY車の前進に気付いてX車を停止させたにもかかわらず、前進を続けて停止したX車に接触したのであるから、本件事故の発生についてXに過失があったとは認められない。」として、駐車区画に駐車中に途中で停止した側の過失について0%と判断していますので参考にしてみてください。
駐車区画に進入中に相手方が駐車区画からバックを開始したという事故について、当事務所の解決事例で交渉により0:100となったケースもありますので参考にしてみてください。
駐車区画から出ようとする車同士【Ⅷ-3・新設類型】
基本的過失割合
駐車区画から出ようとする車同士の事故については、従来、判例タイムズに類型として挙げられておらず、実務上50%:50%が基本とされてきましたが、2026年3月30日発刊の判タ改訂版で【Ⅷ-3】として正式に類型化され、基本的過失割合はA:B=50%:50%となりました。各車両の前進・後退は問いません。通路を挟んで反対側同士の駐車区画から同時に退出しようとして衝突したケースなどが典型です。
判タ改訂版【Ⅷ-3】は、双方の駐車区画退出車は、法25条の2第1項に準ずる注意義務(通路に進入する際に通路の安全を確認し、進入しようとする通路の安全を確認し、他の駐車区画退出車との衝突を回避できるような速度と方法で通行する注意義務)を負うと解され、双方の注意義務は同等のものと解されるから、基本の過失相殺率を50%としたとしています。
修正要素として、Aに著しい過失があればA:B=60%:40%、Aに重過失があればA:B=70%:30%となります(Bも同様)。「著しい過失」の具体例として、判タ改訂版では、著しい前方・後方不注視のほか、一方が標識や路面標示等で指示される順路(通行方向)に反して通路に進入したことが衝突の危険を高めたといえる場合や、一方が駐車区画から通路に進入する際に一定速度以上の速度で退出動作を行った場合が挙げられています。
修正要素の一覧(±10〜20)
| 修正要素 | A車の過失 | B車の過失 |
|---|---|---|
| A車の著しい過失 | +10 | -10 |
| A車の重過失 | +20 | -20 |
| B車の著しい過失 | -10 | +10 |
| B車の重過失 | -20 | +20 |
0%:100%など基本的過失割合と異なる過失割合になるケース
どちらか一方が相手方の車に気がついて衝突前に停止した場合には、基本的過失割合とおりにならない場合もあります。
例えば、停止したタイミング(停止時間が長いほど有利)や停止した位置(距離があればあるほど停止した側に有利)によっては、過失が0%となることもあります。
また、完全に過失が0%にならないにしても、有利な過失割合となることはあり得ます。
判タ改訂版【Ⅷ-3】も、各車両の過失の有無自体が問題となる態様の事故などについては、本基準によらず、具体的な事実関係に即して個別的に過失相殺率を検討すべきであるとしています。また、双方の退出動作の開始に有意な時間差がある場合も、本基準によらず個別的に過失相殺率を検討すべきとされています。
例えば、以下の記事の中で紹介している裁判例(東京地裁・平成23年7月11日判決)では、裁判所は、被告車が後退を開始する前に、原告車(赤い車)が後退を始め、切り返しのため、約10秒、原告車を停止させていたところ、被告車が原告車に衝突したと認定し、原告側の過失を否定していますので、参考にしてみてください。
駐車区画に入ろうとする車同士【Ⅷ-5・新設類型】
基本的過失割合
駐車区画に入ろうとする車同士の事故についても、従来、判例タイムズに類型として挙げられておらず、実務上50%:50%が基本とされてきましたが、2026年3月30日発刊の判タ改訂版で【Ⅷ-5】として正式に類型化され、基本的過失割合はA:B=50%:50%となりました。
典型的には、通路を挟んで向かい合う駐車区画に、双方の車両がほぼ同時に進入しようとして衝突するケースです。判タ改訂版【Ⅷ-5】は、双方の駐車区画進入車が、通路における他の四輪車の進行を妨げないような速度と方法で進行する注意義務を負うと解し、双方が駐車区画への進入を試みる場合には、求められる注意の程度は等しいものとして基本の過失相殺率を定めています。
修正要素として、Aに著しい過失(衝突までもう一方の駐車区画進入車の存在自体を認識していなかった、急発進した、一定速度以上で進入動作を行った等)があればA:B=60%:40%、Aに重過失があればA:B=70%:30%となります(Bも同様)。
なお、判タ改訂版【Ⅷ-5】も、「本基準は特定の駐車区画への進入動作が客観的に予見することができる状況であったことを前提としているため、急激な進路変更等については、そもそも本基準の適用の前提となる注意義務違反の有無について個別的な検討を要する場合も想定される」と明記しています。進入動作の開始に有意な時間差がある場合や、一方の車両が既に駐車区画への進入を開始しているのに他方の車両が同一ないし隣接した駐車区画に進入しようとして衝突したような事案では、個別判断になり得ます。
修正要素の一覧(±10〜20)
| 修正要素 | A車の過失 | B車の過失 |
|---|---|---|
| A車の著しい過失 | +10 | -10 |
| A車の重過失 | +20 | -20 |
| B車の著しい過失 | -10 | +10 |
| B車の重過失 | -20 | +20 |
0%:100%など基本的過失割合と異なる過失割合になるケース
どちらか一方が相手方の車に気がついて衝突前に停止した場合には、基本的な考え方とおりにならない場合もあります。
例えば、停止したタイミング(停止時間が長いほど有利)や停止した位置(距離があればあるほど停止した側に有利)によっては、過失が0%となることもあります。
また、過失が0%にならないにしても、有利な過失割合となることはあり得ます。
佐世保簡裁・平成22年3月23日判決は、駐車場の空いている駐車区画に進入したA車が駐車した直後に、方向転換のため同じ駐車区画に向かって後退してきたB車が衝突したという事故について以下のとおりA:Bの過失割合について0%:100%と判断しました。
常時不特定多数の車両が出入りしているような本件駐車場においては,・・・駐車場に後に入った車両の運転者が先に入った車両の動静に注意し,先行車両の進行を妨げてはならないという義務が発生するものではなく,一般的には,先行車両と後行車両との間に,直ちに優劣関係が存在するものではないというべきである。
これについてBは,まさにB車両が後退しようとしていた駐車区画又は進路上に,後から割り込んでくる形でA車両が進入してきたので,Aには,B車両が後退することは予測可能な状況にあったから,AにもB車両の進行を妨げた過失があると主張している。・・・A車両がウ点で停車している間は,B車両は,後退のための動作を開始しておらず,・・・停車したままの状態であったと認められる。
そうすると,本件駐車場が常時不特定の車両が出入りする駐車場であること,本件事故当時における本件駐車場の駐車区画のほとんどが空いた状況であったことからすると,Aには,・・・B車両を確認した際,B車両がどの駐車区画に駐車するのか,すなわち,Aが駐車しようとしていた駐車区画にB車両も競合して後退しようとしていたことを予見することは不可能であったというべきである。さらに,Aは,「私が駐車区画に車を止め,ギアをパーキングの位置に入れ,右サイドミラーを見ると,こちらに向かってくる車が見えたので,クラクションを3回ならしました。」と述べているとおり,B車両との衝突を回避するための措置をとったことが認められる。
・・・以上によれば,Aには,B車両の進行を妨げた過失があるとは認められず,本件事故の責任はBにあると認めるのが相当である。
交差部分での出合い頭【Ⅷ-1】
駐車場内の通路の交差部分でAとBが出合い頭に衝突した事故の場合、判タ改訂版【Ⅷ-1】により、基本的過失割合はA:B=50%:50%となります。
これは、直進、右折、左折関係ありません。また、いわゆる「左方優先」も関係ありません。
判タ改訂版【Ⅷ-1】は、駐車場内の通路では駐車区画への進入や駐車区画からの退出のため四輪車が転回や後退など様々な動きをすることが想定されるため、交差部分においては、交差する通路が法の適用される「道路」に当たらず、道交法36条等のような法令上の優先関係及び通行方法に関する義務がない場合であっても、交差部分に入ろうとし、また、交差部分を通行する四輪車は、等しく他の四輪車の通行を予見して安全を確認し、当該交差部分の状況に応じて、他車との衝突を回避することができるような速度と方法で通行する義務を負うと解しており、双方が同等の注意義務違反を負うとして基本的過失割合を50:50としています。
修正要素として、例えば、Aの通路が狭くBが明らかに広い通路を進行していた場合や、B側がT字路の突き当たり路を直進していた(Aが突き当たり路から進入した)場合には、A:B=60%:40%となり得ます。
また、Aが一時停止や通行方向標示等に違反している場合は、A:B=65%〜70%:35%〜30%となり得ます(一時停止・通行方向標示等違反と狭路・明らかに広い通路の修正要素の両方に該当する場合は、一時停止・通行方向標示等違反のみで20%の加算修正とし、一時停止・通行方向標示等違反と丁字路直進の修正要素の両方に該当する場合は、一時停止・通行方向標示等違反のみで15%の加算修正)。
Aに著しい過失(著しい前方不注視、交差部分手前での減速をしなかった場合等)があればA:B=60%:40%、重過失があればA:B=70%:30%となります。
従来の解説で「T字路の右左折vs直進=60:40」としていた類型は、判タ改訂版【Ⅷ-1】の中で「B丁字路直進」という修正要素(+10/-10)として整理されました。T字路の場合、突き当たり路から進入する車(A)は交差する直線道路を通行する車に注意するだけで足りるので、十字路の場合よりも注意がしやすく、直線道路を直進する車(B)としても突き当たり路から進入するAは徐行してくるであろうと期待するのが一般の運転慣行と考えられいてるため、Aの過失が加重される形で処理されます。
車と歩行者の事故(駐車区画内)【Ⅷ-7】
駐車場内の駐車区画(駐車スペース)で車と歩行者が衝突した場合、判タ改訂版【Ⅷ-7】により、基本的過失割合は車:歩行者=90%:10%となります。
修正要素として、隣接する駐車区画で車の乗降をしていた歩行者が事故にあった場合は、車:歩行者=100%:0%になる可能性があります。
また、歩行者が児童・高齢者の場合には車:歩行者=95%:5%、歩行者が幼児・身体障害者等の場合には車:歩行者=100%:0%になる可能性があります。
四輪車に著しい過失・重過失があった場合にはさらに車の過失が加重されます。
車と歩行者の事故(通路上)【Ⅷ-8】
駐車場内の通路で車と歩行者が衝突した場合、判タ改訂版【Ⅷ-8】により、基本的過失割合は車:歩行者=90%:10%となります。
修正要素として、例えば、歩行者の急な飛び出しがあった場合は車:歩行者=80%:20%となる可能性があります。
歩行者用通路標示上での事故の場合は、車:歩行者=110%:-10%(つまり車が全面的に責任を負う)となる可能性があります。
また、歩行者が児童・高齢者の場合には車:歩行者=95%:5%、歩行者が幼児・身体障害者等の場合には車:歩行者=100%:0%になる可能性があります。
四輪車に著しい過失(通常の進行速度を明らかに上回る速度での進行、右左折時や後退時などに進行方向の見通しが悪い場所で徐行しなかった場合等)があれば車:歩行者=100%:0%、重過失があれば車:歩行者=110%:-10%になり得ます。
過失割合を左右する11の考慮要素
駐車場事故の過失割合は、判タの類型や修正要素だけで機械的に決まるものではありません。赤い本2025年版に収録された倉鋪卓徳裁判官の講義録は、過失判断の中核を「①相手車両の動きの予見可能性、②試みた動作の危険性、③駐車場における運転という特殊性」の3点に整理した上で、双方の運転方法の当否を比較して判断するとしています。
当事務所では、これまでの解決経験に加え、同講義録と判タ改訂版の分析を踏まえ、駐車場事故の過失割合に影響する要素を以下の11項目に整理しています。保険会社が判タの基本割合だけを根拠に提示してきた場合でも、これらの要素を具体的に主張・立証することで、提示割合を覆せる可能性があります。
① 駐車場の規模・構造
判タの各基準は、大型商業施設のように収容台数が多く、通路と駐車区画が整然と配置された駐車場を念頭に置いて作られています。したがって、現に起きた事故がそうした典型的な駐車場で発生したものかどうかは、判タの基準をそのまま当てはめてよいかの出発点になります。
数台程度しか停められない小規模な駐車場であっても、駐車場の特殊性(後退・方向転換等が通常想定される場所であること)から、判タの考え方と整合する注意義務が課される裁判例は多数あります。他方で、駐車区画以外の車両通行部分が極端に広い駐車場や、公道との位置関係が特殊な駐車場では、判タが想定する「通路進行車」や「駐車区画進入車」の注意義務をそのまま適用すべきでない場面も出てきます。
公道との位置関係が問題となった裁判例
公道からスーパーの駐車場に入ってすぐの地点で、先に進入した車両が後退して駐車しようとし、後続して駐車場に進入してきた車両と衝突した事案で、裁判所(東京高裁令和3年2月10日・判例時報2503号19頁)は、駐車区画進入車の進入動作は、公道から駐車エリアに進入しようとする後続車両がある場合には、公道の通行の安全に大きな影響を及ぼす運転操作であり、判タの示す駐車場内の事故とは前提を異にする旨を判示し、駐車区画進入車の過失を大きく認めました。
判タが想定している「駐車場内の他の車両・歩行者との衝突回避のための注意義務」は、あくまで一定の構造を持つ駐車場を前提とした枠組みです。公道との近接性、通路と駐車区画の広さのバランス、立体駐車場か平面駐車場かといった構造上の特徴によっては、判タの基本割合そのものを修正する余地があります。
② 駐車区画の位置(出入口付近・進行方向指示の影響)
(ア) 駐車場の出入口付近
駐車場の出入口に向かう方向に進行している車両は、周囲の目には駐車場から退出しようとしているように見える場合があります。そのため、出入口付近まで前進してから駐車区画に向けて後退を始めるような動きは、後続車にとって予測困難と評価されやすく、後退する先行車の過失が重く認定される傾向があります。
もっとも、出入口付近に空き駐車区画が残っていれば、後続車でも駐車動作をある程度予測できると判断される可能性もあります。「この車は駐車場から出ようとしている」と思い込んで車間を詰めすぎると、後続車にも過失が認定されてしまうので注意が必要です。
(イ) 大型店舗駐車場内の右左折レーン・エリア境界付近
広大な駐車場では、エリアごとに右左折レーンが設けられていることがあります。先行車が駐車のために右にハンドルを切った動作が、後続車から見ると「右折して別エリアに向かった」と誤解されかねない動作になることがあり、そのような場合には先行車の過失割合が加重された裁判例があります(東京地裁令和3年6月29日・LLI/DB 判例秘書登載)。
もっとも、私見となりますが、この裁判例では、先行車が通路一車線分以上を空けた位置まで進行したことがポイントであると考えられます。たとえ右折レーン付近で後退を開始したとしても、先行車が後退するために停止した地点と駐車区画との距離が近ければ、後続車において、先行車が駐車のために後退することを予測できたと評価される可能性があります。
(ウ) 交差点付近や進行方向指定
駐車場内の交差点付近では、駐車区画への進入準備として車体を左右に振る動作と、交差点を右左折する動作とが紛らわしいという問題があります。また、路面の矢印標示や一方通行標識など進行方向を指示する表示がある場合、それに反する動きは、周囲の車両にとって予見困難な動きと評価され、反則側の車両の過失が重く評価される可能性があります。
③ 見通し
見通しの良し悪しも過失判断に影響します。平面駐車場と立体駐車場では見通しが大きく異なることが多く、柱や壁、高く積まれた荷物、駐車中の大型車両などによって互いの車両が認識しにくい状況では、判タの示す基準をそのまま用いるべきではないケースもあります。
見通しが極端に悪い場合には、そもそも「相手方車両の進入動作を客観的に認識し得る状況だった」という判タの適用前提(特に【Ⅷ-6】)が満たされず、個別判断になる余地があります。
④ 駐車場の混雑状況
同じ駐車場であっても、混雑する時間帯の事故かどうかで過失割合の評価が変わることがあります。駐車区画の空き状況は、先行車両がどの駐車区画に入ろうとしているかの予見可能性に直結するからです。
混雑度と予見可能性の関係
・空き区画が1つしかない場合:先行車両がその区画の前を通り過ぎても、後退してその区画に入ろうとする可能性を後続車は容易に予測できる
・駐車区画の多くが空いている場合:先行車両がそもそも駐車しようとしているのか、するとしてどの区画に入るのかが判然とせず、後続車の予見可能性は低くなる
また、通路を挟んで両側に空き区画がある場合、先行車両が一方の駐車区画側に進行してから切り返して反対側の区画に入ろうとする動きは、後続車から見ると「反対側の区画に駐車する動作」と紛らわしく、再び通路に進入してくること自体が予見しにくいケースも多いと考えられます。事故当時の混雑状況を客観的に示すため、当事務所ではドライブレコーダー映像や防犯カメラ映像の保全を早期に重視しています。
⑤ 速度・発進の急激さ
駐車場内を走行する車は、徐行(直ちに停止できる速度)が基本です。判タ基準の中にも、徐行していないことを修正要素としている類型があります。通常の進行速度を明らかに上回る速度で通路を走行していた車や、急な加速・発進をした車に対しては、周囲の車両が動きを予測したり衝突を回避することが難しくなるため、相手車両の過失が加重され、場合によっては過失が否定されるケースもあり得ます。
また、単に速度が高いかどうかだけでなく、停止状態から動き出す際のアクセルの踏み込みの強さ(発進時の加速度)も考慮要素になります。駐車区画から退出する際に強くアクセルを踏んで飛び出すような動作は、周囲から見て回避が困難な動きとなるため、退出車の過失を重くする方向に働きます(この点は、判タ改訂版【Ⅷ-6】で退出動作の速度や急激さが著しい場合に「著しい過失」による加算修正の対象となるとされているところとも整合します)。
⑥ 後続車の停止位置・停止してから後退を開始するまでの時間
駐車場内通路を走行していた車が停止し、ハザードやバックランプが点灯すれば、後続車としても駐車のための後退が開始されることを予測できます。
しかし、停止してから後退を開始するまでの時間が極端に短い場合や、後続車との距離が近接した時点で急に駐車区画への進入動作を開始した場合には、後続車が後退を予測することが難しくなります。判タ改訂版【Ⅷ-6】も、こうした場合には基本基準を適用せず、個別判断とすべきと明記しています。
注意したいのは、赤い本2025年版講義録が指摘するとおり、「衝突時に停止していたか」ではなく、「停止するまでにどのような運転をしていたか」を含めた一連の経過が重要だという点です。衝突前に停止していた車両についても、次のような場合には相応の過失が認定される傾向があります。
後続車に過失が認められやすい停止のパターン
・先行車の後退進路が客観的に予見可能になった後、車間距離を詰めるなどして先行車の予定進路上に進行して停止した場合
・先行車が既に後退動作を開始しているところに、その後方に進行して停止した場合
・ギア変更や後退準備中の先行車のすぐ後ろに停止した場合
停止車両の無過失・軽過失が認められやすいパターン
・先行車両の進入動作が客観的に予見可能になるよりも前から、余裕を持って停止していた場合
・駐車区画の混雑状況等から、先行車の具体的な進路を予見するのが困難だった場合
・停止した地点が、先行車の想定される進路から十分に離れていた場合
したがって、「停止していたから無過失」を主張する際には、停止のタイミング、停止位置、停止してから衝突までの経過時間、停止した時点での先行車の動きを、ドライブレコーダーの映像等で時系列に沿って具体的に立証することが重要になります。
⑦ 後退する距離と進路の予見可能性
駐車のために後退する距離が必要以上に長い場合には、どの駐車区画に進入しようとしているのか後続車から予見困難だったと評価され、後続車の過失が否定されるケースがあります。
たとえば、駐車場出入口付近まで進行した後、駐車区画4つ分の距離を大きく後退し、停止していた後続車両に衝突した事案について、後続車両の過失を否定した裁判例があります(大阪地判平成28年11月30日・LLI/DB 判例秘書登載)。判タ改訂版【Ⅷ-6】も、「駐車区画から相当程度の距離を進行したところで後退による進入動作を開始したため、どの駐車区画に進入しようとしているのか予見困難であった場合」には基本基準(20:80)を適用せず、個別判断とすべき旨を明記しています。
もっとも、私見となりますが、長距離後退の裁判例では、後続車が後退に向けて停止していた点もポイントであると考えられ、後続車が停止しているかどうかや、停止のタイミング、停止位置次第では、後続車の過失が認定される場面も考えられます。
⑧ ハザードランプ・方向指示器などの合図
判タ改訂版【Ⅷ-6】が明記するとおり、駐車区画進入車を優先する基準(入る車20:出る車80)が適用される前提は、「駐車区画進入車の進入動作が、非常点滅表示灯(ハザード)、方向指示器、後退灯の点灯や車両の向き等により、当該駐車区画のある程度手前の位置で客観的に予見し得る状態に至っていたこと」です。
つまり、進入車自身が周囲に対して「これからこの区画に入ります」という「予告」を発していたことが、優先的な扱いを受けるための条件になっています。合図もなく、車両の向きも特定の区画を示していないような状態で急に進入動作を始めた場合、20:80の基本割合そのものが適用されない余地があります。
後退車両の側から見ても、ハザードランプを点けていたかどうかは周囲への注意喚起の有無として評価されます。法律上、後退時にハザードランプを点けることが義務付けられているわけではありませんが、裁判例では、ハザードランプの有無が過失割合を検討する際の一事情として考慮されているケースが多く見られます。
⑨ クラクション等の衝突直前の結果回避措置
衝突直前にクラクションを鳴らすなどの結果回避措置を取ったかどうかも、過失判断に影響します。クラクションを鳴らせば衝突を避けられた状況であれば、鳴らしたか否かが過失割合に影響します(千葉地裁平成23年10月18日・ LLI/DB 判例秘書登載)。
もっとも、ここは位置付けに注意が必要な論点です。赤い本2025年版講義録では、衝突直前にクラクションを鳴らさなかった点の過失として考慮される割合は、検討された裁判例の中で最大で2割にとどまると分析されています。裁判所は、「衝突直前にどうしたか」よりも、「衝突に至る一連の経過で、どこで注意義務違反があったか」を重視する傾向があるからです。
結果回避措置の位置付け
・相手車両の動きを事前に予見できた場合 → そもそも相手の進路上に進行しないという結果回避措置が期待される。衝突直前のクラクションの有無は修正要素程度の扱い
・相手車両の動きを事前に予見できなかった場合 → 衝突直前のクラクションや回避動作の有無が相対的に大きな意味を持つ
また、後退等の移動を伴う回避措置については、別の事故を誘発する危険性もあるため、後退による回避義務まで課すべきかは周囲の状況次第です。クラクションを鳴らす時間的余裕がない状況では、鳴らさなかったことをもって過失と評価すべきではないと考えます。
逆に、相手車両からクラクションによる注意喚起を受けていたにもかかわらず、直ちに停止せずに動作を継続した場合には、その車両の過失を重くする事情として働きます。
⑩ 身体障がい者マークの貼付
駐車場内には身体障がい者用の駐車区画が設けられていることがあります。先行車に身体障害者マークが貼られていなかったため、後続車がその区画には駐車しないと考えたというケースでも、混雑する駐車場では予測可能だったと判断され、身体障がい者マークの有無は過失割合に影響しなかった裁判例があります。
もっとも、私見となりますが、駐車場が混雑しておらず、付近に一般の駐車区画が空いている場合には、身体障がい者マークの有無が過失割合に影響する可能性があります。
⑪ いったん駐車区画に収まった後の再退出
見落とされがちですが、実務上しばしば問題になるのが、いったん駐車区画内に車輪の全てが収まった車両が、駐車位置修正のために再び通路に出てきて、通路進行車と衝突するケースです。
この場面については、赤い本2025年版講義録で倉鋪裁判官が、旧判タ38号の注記(【335】=現行の駐車区画退出車vs通路進行車(【Ⅷ-2】相当)の基準を参考にして過失判断を行うべきとの注記)を踏まえて検討を加えています。これはあくまで「外形的に駐車区画進入行為を完了したように見える」車両についての注記であり、複数の駐車区画にまたがって進入しただけで実際には切り返し後退の準備行為に過ぎない場合などは対象外です。
この類型では、駐車区画内に収まってからの時間の経過、その間の動き、前照灯や後退灯の状況などの具体的事情を踏まえて、通路進行車から見た予見可能性を検討することになります。駐車区画に収まった直後にその前を通過すれば衝突の危険性があることは比較的容易に認識できますし、何度か駐車位置の修正のために進入と退出を繰り返している場合であればなおさらです。逆に、駐車が完了したものと認識して一定時間が経過した後であれば、通路進行車の予見可能性は低くなります。
保険会社の提示を覆す4つの立証ルート|当事務所の実例で解説
理屈が分かっても、証拠がなければ保険会社は動きません。当事務所が実際に保険会社の提示を覆した8件で使った立証方法は、次の4つのルートに整理できます。
ルート1:ドライブレコーダーがある場合
事故状況を最も直接的に立証できる証拠です。ポイントは「映っていること」ではなく、映像から何を立証するかです。
- 停止時間:通路走行後に停止したところ、前の車が大回りでバックして衝突した事故(福岡)。ドラレコから「衝突前に約10秒停止していた」ことを立証し、裁判で0:100の判決を獲得しました(保険会社の当初提示は80:20。詳細は後述のコラム参照)。
- 位置関係と回避可能性:駐車動作中に隣の区画から相手がバックしてきた事故では、「回避不可能なほど接近した位置関係で相手が後退を開始した」ことを映像で示し、依頼から1週間で0:100の示談が成立しました(当初提示30:70)。
- 基準の適用自体を争う:停止中に前車がバック駐車で衝突してきた事故では、保険会社が判タ【336】図(当時)を根拠に80:20を主張。「停止していた車に判タの基準は妥当しない」ことと相手の無確認バックを映像で立証し、裁判で25:75まで覆しました。
ルート2:ドラレコがない場合①——店舗の防犯カメラ
コンビニやスーパーの駐車場なら、防犯カメラが事故を捉えている可能性があります。ここで最も重要なのはスピードです。
店舗の防犯カメラ映像は、早いところでは1〜2週間で上書き消去されます。 まずは事故直後に店舗へ「映像を保存しておいてほしい」と依頼してください。保存さえされていれば、その後の取得手続には余裕があります。
店舗が映像データを個人にそのまま提供してくれることは多くありませんが、弁護士が交渉することで任意に提供を受けられる場合があり、それが難しい場合も弁護士会照会という法的手続(取得まで1〜2ヶ月程度)で開示を受けられることがあります。
当事務所の実例では、「停車の証拠がない」として50:50を主張された事故で、弁護士会照会によりコンビニの防犯カメラ映像を取得して10秒以上の停車を立証し、0:100の示談(2ヶ月)。前車の「1区画飛ばしの大後退」を防犯カメラで立証して80:20の提示を0:100まで覆した事例(約1ヶ月)もあります。
(店舗防犯カメラの取得実務はこちらの解説記事でも詳しく解説しています)
ルート3:ドラレコがない場合②——車の傷痕解析
映像が一切残っていなくても、諦める必要はありません。双方の車の傷の付き方(高さ・方向・擦過痕)から、事故状況を科学的に証明できる場合があります。
当事務所の実例では、停止の事実そのものを争われた事故(当初提示30:70)で、提携する専門解析業者に傷痕の解析を依頼し、「依頼者の車が停止していたこと」「相手の主張する事故態様は傷の付き方と物理的に整合しないこと」を明らかにして、0:100の示談に至りました(解決まで2ヶ月)。
費用についても触れておきます。解析業者への依頼費用は20万円前後かかり、弁護士費用特約に加入していれば通常は特約でカバーされます。特約がない場合、物損のみの事故でこの費用を自己負担するのは現実的ではありません。
傷痕解析の方法について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
ルート4:物的証拠がない場合——裁判例と論理で戦う
映像も鑑定もなくても、覆せる場合があります。
双方が駐車区画から後退発進して衝突した事故(いわゆる「お互い様」として50:50を提示されやすい類型)では、類似の事故状況で25:75とした裁判例(東京地裁平成25年4月24日)を根拠として示し、交渉開始から1週間で25:75の示談が成立しました。物的証拠は一切ありませんでした。
また、歩行者待ちで停止中にバック駐車の車に接触された事故では、現場での詳細な聞き取りから事故状況図を作成し、「外輪差を誤った相手の一方的不注意」という事故の構造を裁判で立証。40:60の提示を5:95まで覆しました。
保険会社の担当者が譲歩しやすいのは、「上司と契約者(加害者本人)を説得できる材料」があるときです。あなたの事故状況と同種の裁判例を的確に示せるかどうかが、交渉の成否を分けます。
コラム:裁判所の和解案20:80を蹴って、0:100の判決を取った話
前述の福岡の事例(当初提示80:20)では、訴訟の途中で裁判所から「20:80での和解はどうか」という提案がありました。当初の保険会社提示からみれば大幅な改善です。ここで和解に応じるという判断も、一般的にはあり得ます。
しかし、ドラレコ映像により衝突前に約10秒間停止していたことが立証できており、当方に過失を認めるべき事情は見当たりませんでした。依頼者と協議のうえ、「仮に敗訴しても控訴する」という方針まで共有して和解を断り、判決を求めました。
結果は0:100の完全勝訴。相手方は控訴せず、判決は確定しました。
和解案を蹴るのはリスクを伴う判断です。しかし、証拠の強さを正確に評価できていれば、「どこまで戦えるか」を依頼者と共有したうえで、判決まで進むという選択ができます。逆に、和解に応じることが依頼者の利益になる事案も多くあります。蹴るか受けるかは、証拠の強さの冷静な評価で決まります——これは過失割合の事件を数多く扱っているからこそできる見極めだと考えています。
0:100が難しいのはどんなケースか——それでも過失を減らす戦い方
当事務所は「どんな事故でも10対0にできます」とは言いません。裁判所の判断傾向として、次のようなケースでは0:100のハードルが高いのが現実です。
- 双方が動いていた事故(退出車同士【Ⅷ-3】・進入車同士【Ⅷ-5】など):基本が50:50から出発するため、0:100は構造的に困難です。当事務所の実例でも、双方後退発進の事故は25:75が到達点でした。それでも「お互い様の50:50」からは大きく動かせます。
- 停止を完全には立証しきれない場合:停止の事実やタイミングの立証が不完全だと、裁判でも20〜25%程度の過失が残ることがあります。
- 停止するまでの運転経過に問題がある場合:相手の後退が予見できたのに車間を詰めて停止した、相手の予定進路上に進行して停止した——このような場合、「衝突時に止まっていた」だけでは過失は消えません(前述の11考慮要素⑥参照)。
だからこそ、ご相談の際には「勝てる見込みと、現実的な着地点」を最初に率直にお伝えします。見通しが立たない場合には、その旨をはっきり申し上げることもあります。
そしてもう一つの現実は費用です。駐車場事故は物損のみのことが多く、賠償額自体は大きくありません(当事務所の実例には修理費約6万円のために約1年裁判で戦ったケースもあります)。弁護士費用特約があれば、こうした賠償額の小さい事件でも、費用を気にせず適正な過失割合を追求できます。 特約の有無が分からない方は、弁護士が代わりに保険会社へ確認することもできますので、お気軽にご相談ください。
10対0を主張するときの注意点——あなたの保険会社は示談交渉を代行できません
見落とされがちな制度上の注意点があります。あなたに過失がまったくない(10対0を主張する)事故では、あなたが加入する任意保険会社は、相手方との示談交渉を代行できません。保険会社が示談交渉をできるのは、自社が保険金を支払う立場にある場合——つまり、あなたにも過失がある場合に限られるためです(弁護士法72条との関係)。
つまり「10対0を主張する」とは、交渉のプロである相手の保険会社の担当者と、あなた自身が直接向き合うということでもあります。相手の担当者から判例タイムズの基準を持ち出されたとき、その適用前提(双方が動いていたこと・進入動作の予見可能性)を突き崩す反論を自力で組み立てるのは、容易ではありません。10対0を目指す事件で弁護士への依頼をご検討いただきたい理由は、まさにここにあります。弁護士費用特約があれば、多くの場合、費用の自己負担なく依頼できます。
駐車場事故の過失割合について交渉を有利に進める方法
過失割合について、保険会社との交渉を有利に進めるポイントを解説します。
保険会社は、事故状況ごとに、上記のような判タ改訂版(別冊判例タイムズ39号)の基本的過失割合を主張してくることが多いです。
しかし、保険会社が主張する基本的過失割合は、車同士の事故の場合、双方車両が動いていたことを前提とするものです。
ですから、もし、あなたの車が衝突前に停止していた場合には、必ずしも基本的過失割合とおりになるとは限らないことを主張することが大切です。
そして、その主張をするときには、その根拠として、あなたが主張する事故状況と同じような事故状況に関する裁判例を挙げることが重要です。
そういった材料があれば、保険会社の担当者も上司の決済や契約者の納得を得やすいからです。
また、判タ改訂版では、【Ⅷ-4】【Ⅷ-5】【Ⅷ-6】において、基本基準の適用前提として「進入動作が客観的に予見し得る状態に至っていたこと」が明記されています。この前提を満たさない場合には基本基準によらず個別判断となるため、相手車両の動きの予見困難性を主張・立証することが有効な交渉戦略となります。
また、交渉を有利に進めるためには、保険会社との交渉を弁護士に依頼することも効果的です。
それは単に弁護士が交渉に慣れているから、というだけではなく、「裁判をされるかもしれない」というプレッシャーを与えることができるからです。
被害者自身やその保険会社の担当者が交渉している状況では、通常は、いきなり裁判となることは想定されません。
しかし、弁護士が間に入ってくれば話は別です。相手方保険会社や加害者としては、弁護士が入ってきた以上、交渉はまとまらなかった場合には、裁判になる可能性のことを考えなければなりません。
相手方保険会社や加害者本人としては、裁判まではしたくないと考えることが多いです。
駐車場内の事故の場合、被害金額も小さく、わざわざ裁判をするのは費用対効果的にメリットがないからです。
そのため、相手方保険会社や加害者が裁判を避けるために、譲歩してくることも考えられるわけです。
過失割合を有利に主張するために必要な情報
ここまで解説してきた考慮要素や修正要素を踏まえて過失割合を争うには、客観的な証拠を揃えることが不可欠です。赤い本2025年版講義録でも、倉鋪卓徳裁判官は裁判官の立場から、過失割合を争う際に必要な情報について詳しく述べていますので、我々が裁判で戦略を立てるうえで、とても参考になります。
① 事故状況に関する情報
過失割合の交渉や裁判では、駐車場の規模・形状・構造といった状況について、図面や写真を交えて説明することにより、事故状況を具体的に伝えやすくなります。
また、車両の情報(車種・全長・車幅等)を車検証等で示すことも、円滑な審理に資します。
② 主張根拠となる客観資料
過失割合の主張においては、「自分は悪くない」と主観的に主張しても意味がありません。相手車両にどのような注意義務があり、どう違反したかを具体的に示すための客観的な資料が必要です。
最重要証拠:ドライブレコーダー
駐車場事故においては、ドライブレコーダー映像が最も重要な証拠です。当事者双方の車両の動きや、停止のタイミング、駐車場の状況(空き区画の位置、混雑度など)を一度に立証できる強力な証拠となります。
ドラレコ映像がない場合でも、事故直後の写真、損傷部位の写真、現場の実況見分調書などを組み合わせて事故状況を立証していくことになります。
保険会社との交渉でよくあるのが、「事故の状況がよくわからないから判タの基準どおりに〇:〇です」と言われるパターンです。ここで引き下がってしまうと、本来主張できた事情も評価されません。
駐車場事故では、①現場の構造・混雑状況、②相手車両の動き方のタイミングと距離、③ハザードの有無、合図の有無、順路違反の有無、④相手の著しい過失・重過失にあたる事情など、過失割合に影響する事情が山ほどあります。これらを整理した上で、証拠とともに具体的に主張することで、保険会社の提示する過失割合を覆せる可能性が高まります。
まとめ:2026年最新版・駐車場事故の過失割合の要点
- 2026年3月発刊の判タ改訂版(別冊判例タイムズ39)により、駐車場事故の類型が5種類から8種類に増加。
- 新類型①「出る車同士」=50:50、②「入る車同士」=50:50、③「入る車vs出る車」=20:80が基本割合として明確化。
- 修正要素として「著しい過失・重過失」で±10〜20の調整がなされる。一方通行違反、急発進・急加速、著しい後方不注視、相手車両の存在を認識していなかった等の事情があれば、基本割合を覆せる可能性。
- 判タに載っていない事故でも諦めないこと。判タ基準の考え方を参照しつつ、事故特有の事情を具体的に検討することで適切な過失割合を主張できる。
- 「停止していたから0:100」は駐車場事故では例外的。停止するまでの動き(相手車両の予定進路上まで進行したか、車間距離を空けていたか等)が過失判断で重視される。
- 過失割合に影響する11の考慮要素(規模・構造、駐車区画の位置、見通し、混雑状況、速度・発進加速、停止時間と停止位置、後退距離と進路の予見可能性、合図、結果回避措置、障がい者マーク、区画収まり後の再退出)を個別に検討すべき。
- ドライブレコーダー映像が最重要証拠。映像がない場合も、写真や実況見分調書など客観資料を揃えて主張する必要がある。
- 保険会社の当初提示のまま示談する必要はない。当事務所には、80:20の提示が0:100の判決で終わった事例もある。決め手はドラレコ・防犯カメラ・傷痕解析・裁判例の4ルート。
※本記事は、赤い本2025年版に収録された倉鋪卓徳裁判官の講演録「駐車場内における事故の過失相殺(別冊判例タイムズ38号を踏まえて)」および、2026年3月30日発刊の判タ改訂版(別冊判例タイムズ39)【Ⅷ-3】【Ⅷ-5】【Ⅷ-6】の内容を踏まえて執筆したものです。個々の事案における過失割合は、具体的な事故状況に応じて異なります。
※本記事で紹介した解決事例は、当事務所が取り扱った事案の一部です。結果は事故状況・証拠・交渉経過によって異なり、同様の結果を保証するものではありません。
この記事に関するよくある質問
Q1. 駐車場で停止していたのにぶつけられました。過失はゼロになりますか?
A. 駐車場内の事故では「停止していた=無過失」は例外的です。裁判所は停止するまでの運転経過全体(相手の予定進路上まで進行したか、車間距離等)で過失を評価します。ただし、停止のタイミング・位置・時間などの立証により0:100が認められた実例は当事務所にも複数あります。
Q2. バックしてきた車にぶつけられました。バックした側が全面的に悪いのではないですか?
A. 「バックだから悪い」という単純なルールはありません。判タ改訂版では事故状況ごとに8類型の基本割合が定められており、たとえば退出車同士なら前進・後退を問わず50:50が出発点です。ただし相手の後退が予見困難な急な動きだった場合などは、基本割合が適用されず有利な判断となる余地があります。
Q3. 過失割合が10対0になるのはどんな場合ですか?
A. ①衝突前に十分な距離・時間をもって停止していた、②相手の動作(急な後退・合図なしの進入等)が予見困難だった、③それらを客観証拠で立証できた場合です。当事務所にも、80:20や50:50の提示から0:100で解決した実例が複数あります(結果は事案により異なります)。
Q4. ドライブレコーダーがありません。もう諦めるしかないですか?
A. 諦める必要はありません。店舗防犯カメラの取得(弁護士会照会等)、車両の傷痕解析、類似裁判例の引用という立証ルートがあり、当事務所にはドラレコなしで0:100の示談に至った実例も複数あります(結果は事案により異なります)。
Q5. コンビニやスーパーの駐車場で事故に遭いました。事故直後にまず何をすべきですか?
A. まず、その日のうちに店舗へ「防犯カメラ映像を保存してほしい」と依頼してください。店舗の映像は一定期間で上書き消去されるため、何よりも保存依頼が先です。保存さえされていれば、映像の取得(弁護士による交渉・弁護士会照会)は後から進められます。あわせて、相手の連絡先・保険会社の確認と、現場・双方車両の損傷の撮影をしておくと立証に役立ちます。
Q6. 2026年の判例タイムズ改訂で何が変わったのですか?
A. 別冊判例タイムズ39号(2026年3月30日発刊)で駐車場内事故が5類型から8類型に拡充されました。「出る車同士=50:50」「入る車同士=50:50」「入る車vs出る車=20:80」の3類型が新設され、基本基準の適用前提(進入動作の予見可能性)も明文化されています。
Q7. 物損だけの小さな事故ですが、弁護士に依頼する意味はありますか?
A. 弁護士費用特約があれば、多くの場合、費用の自己負担なく依頼できます(特約の利用のみでは保険等級に影響しない扱いが一般的ですが、契約内容によります)。賠償額の小さい物損事故でも過失割合をしっかり争えます。特約がない場合は費用倒れの可能性も含めて最初に率直にご説明します。
Q8. 保険会社に「判例タイムズではこうなっている」と言われました。受け入れるしかないですか?
A. 判例タイムズの基本的過失割合は「双方が動いていたこと」を前提とした目安であり、出発点にすぎません。停止の事実や相手の動きの予見困難性を立証することで異なる割合になった実例・裁判例が多数あります。
過失割合を得意とする事務所です
当事務所は交通事故の中でも特に過失割合の交渉や裁判を得意とします。
過失割合が争点となる案件に力を入れている法律事務所は全国的にも珍しいかと思います。
静岡県にある事務所ですが、お陰様で口コミが広がり、過失割合について、静岡県外の方からも多くのご相談・ご依頼をいただいております。
他の弁護士からは保険会社が提示する過失割合で諦めるように言われたというケースでも当事務所に交渉や裁判をご依頼いただいて有利な割合になったケースが多数あります。
当事務所では、専門解析業者(株式会社東海DC )と提携しているため、車の傷痕やドライブレコーダーの映像を解析し事故状況を検証して、過失割合について徹底的に争うことも可能です。
※解析業者への依頼は有料となりますが、弁護士費用特約がある場合には、基本的には弁護士費用特約によって費用が補償されます。
安心してご依頼いただける体制を整えておりますので、過失割合でお悩みの方はぜひ当事務所にご相談ください。
無料相談のご案内|24時間受付(全国対応)
メールやLINEで無料相談
事務所にお越しいただくことなく、メールやLINEで無料相談が可能です。
メールやLINEでの無料相談を希望される方は、メール相談、LINE(いずれも24時間受付)から、自由にご相談内容を送ってください。
※事情によって、ご相談・ご依頼をお断りさせていただくこともありますので予めご了承ください。
電話、Zoom、事務所での面談による無料相談
電話、Zoom、事務所での面談による無料相談を希望される方は、
お電話(054-689-7792)(平日の9時~17時30分受付)
予約ページ(24時間受付)
LINE(24時間受付)から予約をお願い致します。
予約ページ、LINEからご予約いただいた場合には、日程調整のご連絡をさせていただきます。
※事情によって、ご相談・ご依頼をお断りさせていただくこともありますので予めご了承ください。
弁護士費用
保険会社等からの回収金額の11%+22万円(税込)
相談料と着手金は無料です。
交渉等が解決した後の完全後払いになります。
※訴訟等の手続に移行する場合は追加費用が発生します。
弁護士費用特約を使える場合には、保険会社が弁護士費用を代わりに支払ってくれますので、ほとんどのケースで実質無料で交渉や裁判等を弁護士に依頼できます。
弁護士費用特約を利用しても、保険料は変わりませんので、可能な場合には利用することをお勧めします。
「弁護士費用特約を使えるか分からない」という場合には、弁護士が代わりに保険会社に確認することもできますので、お気軽にご相談ください。
保険代理店様からのご相談
当事務所では、交通事故被害者の方からだけではなく、保険代理店様からのご相談についても無料で対応しています。
これまでも全国の保険代理店様からご相談いただいた実績があります。
まずは、契約者様の代わりにご相談してみたいという保険代理店様も、LINE、電話、メールでお問い合わせください。
よくある質問
Q静岡県以外の地域に住んでいるのですが、静岡県以外の地域からの相談・依頼は可能ですか?
静岡県以外の方からのご相談・ご依頼もお受けしております。当事務所へのご相談・ご依頼のうち半分程度が静岡県外の方からのものです。
電話、メール、LINE、zoomなど、ご希望の方法でご相談いただけます。また、ご依頼後も同様の方法で打ち合わせができますので、仮に、裁判になったとしても、事務所にお越しいただく必要はありません。
これまで、北海道、青森、福島、福井、富山、石川、東京、埼玉、群馬、栃木、千葉、神奈川、山梨、静岡、愛知、長野、岐阜、滋賀、京都、大阪、三重、奈良、兵庫、広島、島根、香川、宮崎、福岡、沖縄にお住まいの方からご相談・ご依頼いただいた実績がありますので(令和6年7月現在)、その他地域にお住まいの方もお気軽にご相談・ご依頼ください。
Qケガはなく、物損(車の修理費用など)の過失割合だけが問題になっているのですが、相談・依頼することはできますか?
弁護士費用特約に加入されていれば、物損だけの事故についてもご相談・ご依頼いただくことは可能です。
※弁護士費用特約に加入されていない場合、お怪我のない方のご相談・ご依頼をお断りさせていただいておりますのでご了承ください。
Q小さな事故で、特に保険会社との間で揉めていないのですが、弁護士に相談しても良いですか?
もちろん、問題ありません。
弁護士に依頼することで、小さなケガであっても示談金額が増額される可能性がありますし、保険会社との対応を全てお任せできるというメリットがありますのでお気軽にご相談ください。
Q弁護士費用で費用倒れ(赤字)になることはありませんか?
ご相談内容を詳しく伺ったうえで、もし、少しでも費用倒れの可能性がある場合には、必ずご依頼前にご説明させていただきます。万が一、増額した金額よりも弁護士費用が高額となる場合は、増額した金額が弁護士費用の上限となりますので、損をすることはありません。
なお、弁護士費用特約をご利用の場合は、費用倒れになることはありません。
Qどの段階から費用が発生しますか?
相談では一切費用は発生しません。弁護士との間で委任契約書を作成して、正式にご依頼いただいて、弁護士が交渉等の活動を開始した段階から費用が発生致します。
Q日中は仕事で忙しいので、弁護士事務所に行ったり、電話をしたりすることが難しいのですが・・・
ご依頼後の弁護士との連絡手段をメールやLINEにすることが可能です。
Q裁判まではしたくないのですが、交渉で示談することは可能ですか?
裁判まで行うか、交渉で示談をして終わらせるかは、依頼者の方が決めることになりますので、交渉での解説を希望される場合には、裁判にはなりません。なお、当事務所では、8割ほどが交渉で解決しています。
Q解決までには、どれくらいの時間が掛かりますか?
事案にもよりますが、交渉の場合、交渉開始から1ヶ月程度で示談して終わるケースが多いです。ただし、後遺障害の申請をしたり、過失割合に争いがあって実況見分調書等を取り寄せる場合には、プラス2、3月程度かかります。
また、裁判の場合は、早くても半年程度は掛かります。当事務所が過去に扱った裁判では、平均すると1年~2年で終わるケースが多いです。
Q弁護士に相談したら必ず依頼しなければいけないのでしょうか?
もちろん、相談だけで依頼しなくても問題ありません。むしろ、複数の弁護士に会って相談したうえで、最も信頼できる弁護士に依頼することをお勧めします。
Q他の弁護士に依頼しているのですが、変更して依頼はできますか?
現在、依頼している弁護士との契約を解除していただいたうえで、ご依頼いただくことになります。また、弁護士費用特約を利用している場合には、ご自身の保険会社に担当弁護士を変更したい旨を伝えて了承を得てください。


















