交通事故の被害者参加制度についてご存知ですか?

この記事では、交通事故の被害に遭われた方が、刑事裁判にどのように関わり、自身の権利を行使できるのかを弁護士が詳しく解説します。

加害者への適切な処罰や、損害賠償の実現に向けた有効な手段となる被害者参加制度を理解し、今後の行動にお役立てください。

本記事を執筆した弁護士

静岡城南法律事務所

山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、一人で年間150件以上の交通事故案件を手掛けている。慰謝料、後遺障害、過失割合に関する交渉・裁判を得意とする。

目次

この記事の結論

Q1. 交通事故で「被害者参加制度」が使えるのはどんなケース?
A1. 過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪など、加害者が起訴された人身事故全般が対象(刑事訴訟法316条の33第1項4号、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条・3条・4条・5条・6条等)。「故意犯に限られる」というのは誤解で、過失による交通事故でも、加害者が起訴されれば、被害者・遺族は刑事裁判に参加できる。物損のみの事故や、加害者が不起訴・略式手続(罰金)で終わった事案は対象外となる。
Q2. 被害者参加すると、具体的に何ができる?
A2. (1)法廷の検察官席の隣で公判に出席(刑訴法316条の34)、(2)情状に関する証人への尋問(同316条の36)、(3)被告人質問(同316条の37)、(4)事実・法律の適用についての意見陳述=「被害者論告」(同316条の38)、(5)検察官への意見陳述(同316条の35)の5つの権利を行使できる。被害者本人が法定刑の範囲内で独自の求刑も可能(検察官の求刑を上回る求刑も認められる)。これは傍聴とは全く異なる「当事者」としての関与となる。
Q3. 損害賠償命令制度は交通事故で使える?
A3. 原則として使えない。損害賠償命令制度(犯罪被害者保護法24条以下)の対象は故意の犯罪行為等に限定されており、過失運転致死傷罪は対象外。危険運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法2条・3条)は故意犯であり、「故意の犯罪行為により人を死傷させた罪」に該当するため対象となるが、実務上は飲酒・あおり運転など極めて悪質なケースに限られる。通常の人身事故では、損害賠償は別途、保険会社との示談交渉または民事訴訟で進めることになる。
Q4. 弁護士費用はどうなる?経済的に苦しい場合は?
A4. 資力(預貯金等-6か月以内の治療費等)が200万円未満であれば、国選被害者参加弁護士制度を利用でき、国費で弁護士を選任できる(法テラス経由)。資力要件を超える場合でも、弁護士費用特約があれば自己負担なしで依頼可能なケースが多い。さらに公判出席のための旅費・日当・宿泊料は、資力にかかわらず「被害者参加旅費等支給制度」で支給される。「お金がないから諦める」必要はない。

執筆:弁護士 山形祐生(静岡県弁護士会 登録番号44537/日本交通法学会所属/静岡県交通事故相談所 顧問弁護士[静岡県知事の委嘱による])/最終更新:2026年4月30日

1. 交通事故における被害者参加制度とは

交通事故の被害に遭われた方やご遺族が、加害者の刑事裁判に直接関与できる制度が「被害者参加制度」です(刑事訴訟法316条の33以下)。平成19年の刑事訴訟法改正により創設され、平成20年12月1日から施行されています。

従来の刑事裁判は検察官と被告人を中心に進行しており、被害者は基本的に「傍聴席で見守るだけ」という立場でした。しかし、被害者参加制度を利用すれば、被害者・遺族は法廷内で検察官の隣に着席し、被告人質問や意見陳述を行う「当事者」として刑事裁判に関わることができます。

1.1 被害者参加制度の目的と意義

被害者参加制度の目的は、刑事司法における被害者の権利・地位の確立にあります。具体的には次のような意義があります。

  • 被害者の声を量刑判断に反映させる:被害者・遺族が直接、自身の被害や処罰感情を述べることで、量刑判断に被害者側の視点が反映されやすくなります。
  • 真相解明への貢献:被害者自身が被告人質問を行うことで、検察官が踏み込みにくい論点を追及できる場合があります。
  • 司法手続を通じた精神的回復:「言いたいことを法廷で全て言えた」という事実が、被害者・遺族の心理的回復に寄与することがあります。

1.2 交通事故で被害者参加が認められるケース(対象犯罪)

ここで多くの方が誤解しているのが、対象犯罪の範囲です。一部の解説では「故意犯に限られる」と書かれていることがありますが、これは誤りです。刑事訴訟法316条の33第1項は、被害者参加の対象犯罪を以下のとおり定めています。

条文上の対象犯罪 交通事故での具体例
1号 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪 あおり運転で衝突し死傷させた事案で殺人罪・傷害致死罪等が問われたケース、危険運転致死傷罪
2号 刑法176条(不同意わいせつ罪)、177条(不同意性交等罪)、179条(監護者わいせつ罪・監護者性交等罪)、211条(業務上過失致死傷罪・重過失致死傷罪)、220条(逮捕監禁罪)、224条から227条までの罪 自動車以外による重過失致死傷(例:自転車事故で歩行者を死傷させた事案)等
3号 前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(1号に掲げる罪を除く) 強盗致傷など複合的な罪
4号 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律4条、5条、6条3項・4項の罪 過失運転致死傷罪(同法5条)※起訴されたもの、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(同法4条)、無免許運転加重(同法6条3項・4項)

※ 危険運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法2条・3条)は、4号には列挙されていませんが、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪に該当するため、1号により被害者参加の対象となります。

つまり、典型的な人身事故で問われる「過失運転致死傷罪」も被害者参加の対象です。実務上、人身事故事案で被害者参加申出がなされるケースは少なくありません。

一方、対象外となるのは、(1)物損のみの事故、(2)加害者が不起訴になった事案、(3)略式起訴(罰金処分)で公判が開かれない事案、(4)交通反則通告制度で処理された事案、です。重傷事故であっても加害者が起訴されない限り、刑事裁判自体が開かれないため被害者参加もできません。

なお、現在の交通事故では、自動車運転中の過失による人身事故に「業務上過失致死傷罪」(刑法211条)が適用されることは原則としてありません。平成19年(2007年)6月12日施行の改正刑法により「自動車運転過失致死傷罪」(旧刑法211条2項)が新設され、自動車運転中の過失による死傷事故は同罪に移管されました。さらに、平成26年(2014年)5月20日施行の自動車運転死傷行為処罰法により、「自動車運転過失致死傷罪」が同法5条の「過失運転致死傷罪」に再移管され、現在に至っています。業務上過失致死傷罪が適用されるのは、自動車以外(例えば自転車での重大事故等)で「業務」と評価できる活動中の事故です。

1.2.1 申出ができる人(被害者等の範囲)

申出ができるのは、(1)被害者本人、(2)被害者が死亡した場合またはその心身に重大な故障がある場合は、その配偶者・直系の親族・兄弟姉妹、(3)未成年者の親権者などの法定代理人です(刑訴法316条の33第1項、同290条の2第1項括弧書き参照)。

注意したいのは、「直系の親族」には祖父母・孫が含まれるが、伯叔父母やいとこは含まれない点です。例えば、被害者の伯母が被害者参加を希望しても、配偶者・直系親族・兄弟姉妹のいずれにも該当しなければ申出はできません。

1.3 被害者参加制度と民事損害賠償請求の違い

被害者参加制度と民事の損害賠償請求は、目的も場所も全く異なります。両者を混同される方が多いため、整理しておきます。

項目 被害者参加制度 損害賠償請求(示談・民事訴訟)
目的 加害者の刑事責任追及、真相解明、被害者の心情を裁判所に伝える 被害者の損害(治療費、慰謝料、逸失利益等)に対する金銭的補償
手続きの場 刑事裁判(地方裁判所・簡易裁判所の刑事部) 示談交渉、民事裁判(簡易・地方裁判所の民事部)
当事者 検察官・被告人・裁判官。被害者は「参加人」 原告(被害者)、被告(加害者・保険会社)
弁護士費用 国選被害者参加弁護士制度あり(資力200万円未満) 弁護士費用特約・法テラス民事法律扶助等
主な結果 有罪/無罪の判決、刑罰の確定 賠償金の支払い

両者は独立した手続ですが、刑事裁判で認定された事実(過失の有無・態様・速度・前方不注視の程度など)は、民事の過失割合や損害認定に大きな影響を与えることがあります。特に過失割合が争点となる事案で、被害者参加によって刑事記録(実況見分調書、被告人供述調書等)に被害者側の主張を反映させることは、後の民事手続を有利に進めるうえでも重要です。

2. 交通事故の被害者参加でできること(5つの具体的権利)

被害者参加が許可されると、以下の5つの権利を行使できます。これは刑事訴訟法に明記された具体的な権利であり、傍聴とは全く異なる「当事者」としての関与となります。

2.1 公判期日への出席(刑訴法316条の34)

被害者参加人は、傍聴席ではなく法廷内の検察官席の隣または後ろの席に着席します。これは法廷の「柵の内側」(バー・インサイド)であり、傍聴人と被害者参加人を物理的・象徴的に区別する重要な意味があります。

公判では、冒頭手続(人定質問、起訴状朗読、罪状認否)、証拠調べ、被告人質問、論告求刑、弁論、最終陳述という順序で進みます。被害者参加人は全期日に出席して直接見届けることができ、加害者の反省態度や弁護人の弁解内容を間近で確認できます。

2.2 検察官への意見陳述・権限行使に関する説明請求(刑訴法316条の35)

被害者参加人は、検察官に対し、証拠調べ請求や論告求刑など、検察官の権限行使に関して意見を述べることができます。検察官は、その意見に従わない場合でも、必要に応じて理由を説明しなければなりません。

例えば、「被害者の同僚を情状反対証人として呼んでほしい」「冒頭陳述で被害結果を強調してほしい」といった申入れができます。これは、ともすれば事務的に流れがちな刑事裁判に、被害者の視点を持ち込む実務上極めて重要な権利です。

2.3 情状証人への尋問(刑訴法316条の36)

裁判所の許可があれば、情状証人(被告人の家族、勤務先関係者、示談を仲介した者など)に対して直接尋問することができます。ただし、犯罪事実そのもの(過失の有無や態様)についての証人尋問は対象外で、あくまで情状(示談の経緯、被告人の謝罪態度、再発防止策など)に関する事項に限られます。

情状証人尋問は、検察官の主尋問・弁護人の反対尋問の後に行います。事前に尋問事項を検察官に通知する必要があります。

2.4 被告人質問(刑訴法316条の37)

被害者参加制度の中でも特に重要な権利が、加害者(被告人)への直接質問です。意見陳述に必要な範囲で、犯罪事実を含めて質問が可能とされています(情状証人尋問とは違い、犯罪事実にも質問可能な点に注意)。

当事務所がこれまで扱った被害者参加事案では、以下のような質問が効果的でした。

  • 「事故直前、何を見ていましたか」「スマートフォンを操作していませんでしたか」
  • 「被害者が転倒した直後、なぜ救護せずに逃げようとしたのですか」
  • 「ご家族に対し、どのような形で謝罪しましたか。具体的に教えてください」
  • 「示談金の原資は誰が出すのですか」「任意保険には加入していなかったのですか」

感情的な追及は許されませんが、論理的に被告人の弁解の矛盾を突いたり、反省の有無を浮き彫りにしたりする質問は、量刑判断に影響を与え得ます。

2.5 事実・法律の適用についての意見陳述(被害者論告:刑訴法316条の38)

これが「被害者論告」と呼ばれるもので、検察官の論告求刑の後に行います。被害者参加人(または委託を受けた弁護士)は、事実認定や法律の適用、そして相当と考える刑の重さについて意見を述べることができます。

注目すべきは、被害者参加人による求刑は、検察官の求刑を上回ることも可能な点です(法定刑の上限を超えることはできません)。例えば、検察官が「拘禁刑5年」を求刑した場合でも、被害者側として「拘禁刑7年が相当である」と主張できます。これは量刑事情の補足として、裁判官に与える影響が小さくありません。

なお、令和7年(2025年)6月1日施行の改正刑法により、従来の「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。同日以後に行われた犯罪については「拘禁刑」が言い渡されることになります。

ただし、被害者参加人の論告は証拠とはならず(刑訴法316条の38第4項)、訴因として特定された事実の範囲を超える主張は制限されます(同条3項)。

2.6 心情等の意見陳述(刑訴法292条の2)との違い

混同されやすいのが、「被害者参加制度における意見陳述(316条の38)」と「心情等の意見陳述(292条の2)」です。両者は別個の制度です。

項目 被害者参加(316条の38) 心情等の意見陳述(292条の2)
位置づけ 事実・法律の適用に関する意見=「論告」 被害に関する心情・気持ちの陳述
タイミング 検察官の論告求刑の後 証拠調べの段階(冒頭陳述後など)
被害者参加の許可 必要 不要(被害者参加していなくても可能)
証拠としての扱い 証拠とはならない 事件の動機・情状等の事実認定の資料となり得る

実務上は、両者を組み合わせて使うことで、「被害者の感情面」と「法的主張」の両方を裁判所に伝えるのが効果的です。

2.7 損害賠償命令制度の利用(犯罪被害者保護法24条以下)

損害賠償命令制度は、刑事被告事件を担当した裁判所が、刑事の有罪判決後に同じ裁判官が引き続き民事の損害賠償の審理も行う制度です。原則4回以内の期日で決定が出されるため、通常の民事訴訟より大幅に迅速です。

2.7.1 損害賠償命令制度の対象犯罪

ここで重要なのは、損害賠償命令制度の対象犯罪は被害者参加制度より範囲が狭いという点です。犯罪被害者保護法24条1項は、対象を以下に限定しています。

  • 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪(1号)
  • 不同意わいせつ罪(刑法176条)、不同意性交等罪(刑法177条)、監護者わいせつ罪・監護者性交等罪(刑法179条)又はその未遂罪(2号イ)
  • 逮捕及び監禁の罪(刑法220条)又はその未遂罪(2号ロ)
  • 未成年者略取・誘拐、営利目的等略取・誘拐、人身売買等の罪(刑法224条から227条まで)又はその未遂罪(2号ハ)
  • 上記2号イからハまでに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(2号ニ)

つまり、過失運転致死傷罪・業務上過失致死傷罪・重過失致死傷罪などの「過失犯」は対象外です。これは、過失犯では過失相殺等の主張で審理が複雑化することが多く、簡易迅速性を重視する制度趣旨になじまないとの理由によります。

結論として、典型的な交通事故(過失運転致死傷罪)は損害賠償命令制度を利用できません。例外的に、危険運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法2条・3条)は故意犯であり、「故意の犯罪行為により人を死傷させた罪」に該当するため対象となり得ますが、危険運転致死傷罪自体の認定が厳格であり、実務上利用できる事案は極めて限定的です。

2.7.2 申立費用と手続

申立手数料は、損害額にかかわらず一律2,000円(犯罪被害者保護法44条1項)。通常の民事訴訟は損害額に応じて高額の印紙代がかかるため(例えば請求額3,000万円なら印紙代11万円)、これは大きな経済的メリットです。

申立期限は起訴後、第1審の弁論終結まで(同法24条1項)。控訴審に進んでしまうと申立てができなくなる点は注意が必要です。

2.7.3 損害賠償命令制度のメリット・デメリット

メリット:

  • 刑事裁判の証拠・事実認定がそのまま使えるため、立証負担が大幅に軽減される
  • 申立手数料が一律2,000円で経済的
  • 原則4回以内の審理で決定が出るため迅速(法31条3項)
  • 異議申立てがなければ確定判決と同一の効力を持ち、強制執行も可能(法34条5項)

デメリット:

  • 対象が限定されており、典型的な交通事故では使えない
  • 被告人(加害者個人)に資力がなければ実際の回収は困難
  • 被告人が異議申立てをすれば通常の民事訴訟に移行し、簡易迅速性が失われる(法34条・35条1項)
  • 4回以内に終結しない見込みの場合、職権または申立てにより民事訴訟手続に移行する(法39条1項)
  • 制裁的・懲罰的慰謝料は認められない(あくまで民事の損害賠償)

当事務所の見解として、損害賠償命令は「対象事件であれば積極的に検討すべき制度」ですが、「被告人に対する債務名義」を取得できるにとどまり、保険会社からの支払いを直接命じる制度ではない点には注意が必要です。任意保険(対人賠償保険)が付いていれば、通常は保険会社が示談で支払うため、損害賠償命令を待たずに保険会社との交渉で解決するのが一般的です。

3. 交通事故の被害者参加の手続きと流れ

3.1 被害者参加の申出に必要な要件

3.1.1 対象事件であること

前述のとおり、被害者参加の対象犯罪は刑事訴訟法316条の33第1項に列挙されており、過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪等を含む人身事故全般が対象となります。物損のみの事故、不起訴事案、略式手続(罰金)で終わった事案は対象外です。

3.1.2 申出ができる人

(1)被害者本人、(2)被害者が死亡または心身に重大な故障がある場合の配偶者・直系の親族・兄弟姉妹、(3)未成年者の親権者等の法定代理人、です。これらの者から委託を受けた弁護士が代わりに申出を行うこともできます。

3.1.3 申出の時期と方法

申出は、加害者が起訴された後、第1審判決までの間であれば可能です(刑事訴訟法316条の33第1項)。実務上は、第1回公判期日前に申し出るのが一般的で、その方が証拠調べ等の最初から関与できるメリットがあります。

申出は、担当検察官を経由して行います(刑訴法316条の33第2項)。検察官は意見を付けて裁判所に通知し、裁判所が被告人・弁護人の意見を聴いた上で許可を判断します。

3.1.4 申出を検討する際のチェックリスト

被害者参加を検討する方は、以下の点を確認してください。

  • 加害者は起訴されたか(略式起訴=罰金は対象外)
  • 担当検察官は誰か(検察庁から通知が届いているか)
  • 第1回公判期日はいつか(第1回前に申出するのが望ましい)
  • 意見陳述で何を伝えたいか(処罰感情、被害状況、再発防止の願い等)
  • 被告人質問で何を聞きたいか(弁解の矛盾、反省の有無、示談状況等)
  • 弁護士の援助が必要か(費用面の検討含む)

被害者・遺族から検察官に「裁判の状況を教えてほしい」「公判の予定を知らせてほしい」と申し入れておくと、起訴後の連絡がスムーズになります(被害者等通知制度)。

3.2 申出から決定までの流れ

  1. 被害者参加の申出:被害者・遺族(または委託を受けた弁護士)が、担当検察官に対し、申出書を提出します。検察官が意見を付して裁判所に通知します。
  2. 被告人・弁護人の意見聴取:裁判所は被告人・弁護人に意見を聴きます。被告人側が反対しても、裁判所が「相当」と認めれば許可されます。
  3. 裁判所の決定:裁判所は犯罪の性質、被告人との関係、その他の事情を総合考慮して許可するか決定します。被害者参加が許可されると「被害者参加人」となります。

裁判所は、参加人が複数いる場合に代表者の選定を求めることがあります(刑訴法316条の34第3項)。例えば、ご遺族が4名で全員参加を希望する場合、裁判所から「代表者2名を選定してください」と求められることもあります。

3.3 公判期日における具体的な流れ

3.3.1 公判期日への出席と着席位置

被害者参加人は、検察官席の隣または後方の指定席に着席します。裁判官・被告人・傍聴人の視線が集まる場所であり、心理的負担は決して小さくありません。被告人の顔を見たくない場合は「遮蔽措置」(つい立て)の請求も可能です(刑訴法316条の39)。

3.3.2 証人尋問・被告人質問

被害者参加人による尋問・質問は、検察官・弁護人の尋問が終わった後に行うのが一般的です。質問事項は事前に検察官に書面で通知する必要があります。実務上は、弁護士が事前に質問事項書を作成し、検察官と打合せをして整理します。

3.3.3 意見陳述(被害者論告)

検察官の論告求刑の後、被害者参加人は事実・法律の適用について意見を述べます。陳述書は事前に作成し、要旨を検察官に通知しておきます。当日は法廷で陳述書を朗読する形が一般的です。

陳述の長さは事案によりますが、5~15分程度が目安です。事前に法廷で実際に読み上げる練習をしておくと、感情が高ぶっても最後まで読み切ることができます。

3.3.4 当事務所の見解:被害者参加で「やってはいけないこと」

当事務所がこれまで扱った被害者参加事案から、避けるべき失敗パターンをいくつか挙げます。

  • 感情に任せた質問:「あなたは人間ですか」のような質問は、裁判長から制限される。論理的に弁解の矛盾を突くのが効果的
  • 意見陳述書の朗読をぶっつけ本番で行う:途中で感情が高ぶり最後まで読み切れないことがある。事前の音読練習が必須
  • 被害者参加だけに集中して民事の損害賠償交渉を後回しにする:刑事裁判は半年~1年で終わるが、民事の時効(人身損害は損害及び加害者を知った時から5年・民法724条の2)の管理も並行して行う必要
  • 被告人の謝罪を「誠意」と過大評価して示談に応じる:被告人が刑を軽くするために形だけの謝罪をしているケースもあり、示談書の内容(賠償額・宥恕条項の有無)は慎重に検討すべき

4. 交通事故の被害者参加のメリットとデメリット

4.1 被害者参加のメリット

4.1.1 量刑への影響

被害者参加人による被告人質問・意見陳述は、裁判官の量刑判断に影響を与え得ます。特に「被害者・遺族の処罰感情の強さ」は、量刑事情の中でも重要な要素とされています。

例えば、検察官の求刑が「拘禁刑4年」だったところ、被害者の意見陳述で過酷な被害状況や強い処罰感情を訴えた結果、判決が求刑近くの「拘禁刑4年」となるケースもあれば、求刑を上回る判決が出ることもあり得ます(求刑は検察官の意見にすぎず、裁判所はそれに拘束されません)。

4.1.2 真相解明と精神的整理

被害者・遺族にとって、「事故の瞬間、何が起きたのか」「なぜ加害者は救護しなかったのか」といった疑問が解消されないまま事故処理が進むことは、非常に苦しいものです。被害者参加で被告人質問を行うことで、これらの疑問に直接向き合う機会が得られます。

4.1.3 民事手続への波及効果

刑事裁判で被害者参加していたという事実、および刑事記録(被告人供述、実況見分調書等)は、その後の民事の損害賠償交渉・訴訟でも有利に働くことがあります。過失割合が争点となる事案では、刑事記録の精査が極めて重要であり、被害者参加を通じて記録の検討を尽くしておく意義は大きいといえます。

4.2 被害者参加のデメリットと注意点

4.2.1 精神的負担

加害者と同じ法廷にいること、自分自身の被害を語ること、加害者の弁解を聞くことは、いずれも大きな精神的負担を伴います。PTSD等の症状を抱えている場合は、専門家(精神科医・臨床心理士等)と相談しながら参加の可否・程度を検討することをお勧めします。

4.2.2 時間的・経済的負担

公判は1回で終わらないこともあり、複数回の出廷が必要となるケースがあります。仕事を休む、遠方の裁判所に出向く等の負担があります。なお、裁判出席のための旅費・日当・宿泊料は「被害者参加旅費等支給制度」(犯罪被害者保護法5条以下)により、資力にかかわらず法テラスから支給されます(請求期限は判決日(裁判終了の日)から30日以内)。

4.2.3 専門知識の必要性

効果的な被告人質問・意見陳述には、刑事手続・量刑相場・事案の法的論点に関する専門知識が必要です。独学で準備するのは限界があるため、弁護士のサポートを受けることを強くお勧めします。

5. 交通事故の被害者参加と弁護士費用

5.1 弁護士の援助が活きる場面

弁護士は、被害者参加の手続全般についてサポートまたは代理することができます。

  • 申出書の作成・検察官との折衝
  • 刑事記録の閲覧・謄写と分析(過失割合の検討、加害者の弁解の精査)
  • 意見陳述書の作成と朗読練習のサポート
  • 被告人質問事項の検討・質問の代行
  • 情状証人尋問
  • 被害者論告の実施
  • 公判期日への同行・代理出席
  • 並行する民事手続(保険会社との交渉、民事訴訟)の助言

5.2 弁護士費用の負担を軽減する3つの方法

5.2.1 国選被害者参加弁護士制度(法テラス)

被害者参加人の資力(現金・預貯金等)から、犯罪行為を原因として6か月以内に支出すると認められる費用(治療費等)を差し引いた額が200万円未満であれば、国費で被害者参加弁護士を選任できます(犯罪被害者保護法11条1項、総合法律支援法30条1項6号)。法テラスを経由して請求します。

注目すべきは、「事件発生前から相談していた弁護士を国選被害者参加弁護士として選任するよう希望できる」点です。事件直後から相談していた弁護士を、そのまま国費で被害者参加弁護士として選任できる仕組みです。

5.2.2 弁護士費用特約

ご自身またはご家族が加入している自動車保険等に弁護士費用特約が付いている場合、被害者参加の弁護士費用も特約の対象となるケースが多いです(約款によります)。資力要件にかかわらず利用でき、限度額(通常300万円)の範囲内で自己負担なしで弁護士に依頼できます。

5.2.3 被害者参加旅費等支給制度

これは弁護士費用ではなく、被害者参加人本人の旅費等の問題ですが、裁判出席のための交通費・日当・宿泊料は資力にかかわらず法テラスから支給されます(犯罪被害者保護法5条以下)。請求は判決日(裁判終了の日)から30日以内に出席した裁判所に提出する必要があります。「遠方の裁判所だから出席を諦める」という事態を避けられます。

5.2.4 犯罪被害者等法律援助業務(令和8年1月開始)

令和8年(2026年)1月13日から、法テラスにおいて新たに「犯罪被害者等法律援助業務」が開始されました(総合法律支援法30条1項9号)。これは、殺人、不同意性交等、傷害(治療期間3か月以上)などの一定の重大犯罪の被害者・ご家族が、刑事・民事・行政その他の様々な手続について、弁護士による支援を受けられる制度です。同制度の対象犯罪には故意の犯罪行為により人を死亡させた罪(危険運転致死等を含む)も含まれており、悪質な交通事故事案で同制度が活用できるケースもあります。

5.3 当事務所の弁護士費用

当事務所では、被害者参加について22万円(税込)でお引き受けしています。交通事故の交渉等が解決した後の後払いも可能です(遠方の場合は出張日当をいただきます)。弁護士費用特約をご利用の場合、特約から支払われるため、自己負担なしで依頼できるケースが多くあります。

6. こんな方は今すぐ弁護士へご相談を

以下のいずれかに当てはまる場合、被害者参加について弁護士の助言を受けることを検討してください。

  • ご家族が交通事故で亡くなり、加害者が起訴されると検察官から連絡があった
  • 重傷を負い、加害者が在宅または身柄拘束のまま起訴された
  • 検察官から「公判期日が決まった」と連絡があったが、何をすべきかわからない
  • 加害者の弁解(「被害者にも落ち度があった」等)に納得がいかず、刑事裁判で反論したい
  • 過失割合や事故態様について刑事段階で争点を明確にし、後の民事手続に備えたい
  • 意見陳述で何を、どう伝えるべきか整理したい
  • 弁護士費用特約に加入している、または資力が200万円未満で国選被害者参加弁護士の利用を検討したい

当事務所では、被害者参加の申出から、刑事裁判での代理活動、その後の保険会社等との示談交渉まで、一貫して対応可能です。静岡県外からのご相談・ご依頼も多く、Zoom・電話・メール・LINEで全国対応しています。初回相談は無料です。

7. まとめ

交通事故の被害者参加制度は、被害者・遺族が刑事裁判に「当事者」として関与し、自身の声を量刑判断に反映させる重要な制度です。過失運転致死傷罪を含む人身事故全般が対象であり、「故意犯に限られる」というのは誤解です。

制度を最大限活かすには、(1)対象事件であることの確認、(2)起訴後速やかな申出、(3)意見陳述・被告人質問の入念な準備、(4)並行する民事手続(損害賠償・時効管理)との連携、が不可欠です。

国選被害者参加弁護士制度・弁護士費用特約・被害者参加旅費等支給制度を組み合わせれば、経済的な不安を抱えずに制度を利用することが可能です。「自分のケースで被害者参加できるか」「何を準備すべきか」迷われたら、お気軽にご相談ください。

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無料相談の方法(全国対応)

メールやLINEで無料相談

事務所にお越しいただくことなく、メールやLINEで無料相談が可能です。
メールやLINEでの無料相談を希望される方は、メール相談LINE(いずれも24時間受付)から、自由にご相談内容を送ってください。

電話、Zoom、事務所での面談による無料相談

電話、Zoom、事務所での面談による無料相談を希望される方は、
お電話(054-689-7792)(平日の9時~17時30分受付)
予約ページ(24時間受付)
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予約ページ、LINEからご予約いただいた場合には、日程調整のご連絡をさせていただきます。

弁護士費用(被害者参加)

22万円(税込)

交通事故の交渉等が解決した後の後払いも可能です。
遠方の場合は出張日当をいただきます。

保険代理店様からのご相談

当事務所では、交通事故被害者の方からだけではなく、保険代理店様からのご相談についても無料で対応しています。
これまでも全国の保険代理店様からご相談いただいた実績があります。
まずは、契約者様の代わりにご相談してみたいという保険代理店様も、LINE電話メールでお問い合わせください。

また、現在、当事務所と提携していただける保険代理店様を募集しています(無料)。
詳細はこちらのページをご参照ください。

よくある質問

Q日中は仕事で忙しいので、弁護士事務所に行ったり、電話をしたりすることが難しいのですが・・・
A

ご依頼後の弁護士との連絡手段をメールやLINEにすることが可能です。

また、ご依頼後は、打ち合わせを夜間に行うことも可能です。

Q弁護士に相談したら必ず依頼しなければいけないのでしょうか?
A

もちろん、相談だけで依頼しなくても問題ありません。むしろ、複数の弁護士に会って相談したうえで、最も信頼できる弁護士に依頼することをお勧めします。

Q静岡県以外の地域に住んでいるのですが、静岡県以外の地域からの相談・依頼は可能ですか?
A

静岡県以外の方からのご相談・ご依頼もお受けしております。当事務所へのご相談・ご依頼のうち半分程度が静岡県外の方からのものです。

電話、メール、LINE、zoomなど、ご希望の方法でご相談いただけます。

これまで、北海道、青森、福島、福井、富山、石川、東京、埼玉、群馬、栃木、千葉、神奈川、山梨、静岡、愛知、長野、岐阜、滋賀、京都、大阪、三重、奈良、兵庫、広島、島根、香川、宮崎、福岡、沖縄にお住まいの方からご相談・ご依頼いただいた実績がありますので(令和6年7月現在)、その他地域にお住まいの方もお気軽にご相談・ご依頼ください。

本記事を執筆した弁護士

静岡城南法律事務所

山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、一人で年間150件以上の交通事故案件を手掛けている。慰謝料、後遺障害、過失割合に関する交渉・裁判を得意とする。

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