「家族が交通事故で亡くなって、どんな手続が必要になるのか分からない」
「保険会社から示談するように言われているけど、示談して良いのか分からない」

この記事は、こんな不安をお持ちの方のために書きました。

こんにちは。弁護士の山形です。
この記事では、交通事故でご家族を亡くされた方のために、必要な手続や注意点などについて、分かりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

静岡城南法律事務所

弁護士 山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、一人で年間120件以上の交通事故案件を手掛けている。慰謝料、後遺障害、過失割合に関する交渉・裁判を得意とする。

目次

死亡事故の被害者遺族が行う手続

ご家族が交通事故で亡くなられた場合に、ご遺族の方が行う手続などについて解説します。

保険会社との示談交渉

通常、四十九日法要が終わった頃に、保険会社の担当者から賠償額の提示などの示談の連絡があります。
しかし、安易に示談に応じてはいけません。
なぜなら、ほとんどの場合、保険会社は、独自の基準に基づいて、とても低い金額を提示することが多いからです。
そのため、必ず、弁護士の無料相談を利用するなどして、適切な金額を知ったうえで、交渉をするようにしましょう。

示談交渉で話し合いがまとまらない場合には、裁判を行うことを検討します。
基本的には、交渉よりも裁判まで行った方が、多くの賠償金が支払われるケースが多いので、死亡事故の場合は、費用対効果を考慮したうえで、裁判まで行うことをお勧めすることが多いです。

刑事事件の被害者遺族としての対応

死亡事故を起こした加害者は、刑事裁判を受けるケースが多くあります。
ご遺族の方は、被害者遺族として、この裁判に参加することが認められています(「被害者参加制度」といいます。)。

この手続は、必ず行わなければならないというものではありません。
しかし、「刑事裁判で真実を知りたい」、「遺族としての思いを訴えたい」というお気持ちがある場合には、裁判に参加することを検討してみてください。

被害者参加は、弁護士が遺族の代理人として行うこともできます。
そのため、「人前で話すのは苦手」「加害者とは顔を合わせたくない」という方は、弁護士に代わりに手続を行ってもらうことも可能です。

遺産分割(相続)

ご家族が亡くなった場合には、「相続問題」が発生します。
まず、相続人の範囲を調べる必要があります。被害者の方が生まれてから亡くなるまでの戸籍等を取得して調べることになります。
次に、相続の対象となる財産(「遺産」といいます。)を調べます。
もし、借金が多い場合には、相続放棄を検討することになります。
また、相続人が複数いる場合には、全員で話し合って、誰がどのように遺産を相続するのかを決めることになります。
万が一、話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停という手続を申し立てることになります。

死亡事故で請求できるもの

次に、ご遺族の方が保険会社に対して請求できるものについて解説します。

死亡慰謝料

ご家族の方を亡くした場合、ご遺族の方は、その精神的な苦痛に対する慰謝料を請求することができます。
金額の目安は、以下のとおりです。

死亡慰謝料の目安

亡くなられた方が一家の支柱の場合         2800万円
亡くなられた方が母親や配偶者の場合        2500万円
その他(亡くなられた方が独身、子ども、幼児など) 2000万円~2500万円
※死亡慰謝料の総額であり、近親者(民法711条)とそれに準ずる者の分も含まれた合計金額の目安です。

これは、「民事故痛事故事故訴訟 損害賠償額算定基準」という書籍に記載されている目安です。
基本的には、裁判所もこの基準を参考にして判断することになりますから、弁護士は、交渉段階からこの基準に基づいて、慰謝料を請求してくことになります。

なお、事案によっては、この基準以上の慰謝料が認められるケースもあります。
詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。

逸失利益

「逸失利益」というのは、被害者が事故に遭わなければ、将来、得ていたと想定される収入などのことです。
ただし、亡くなったことで生活費等の支出が無くなることになるので、収入から生活費を差し引いて計算されることになります。
また、本来であれば将来的に得る予定だった収入を先取りすることになりますので、その調整をすることになります。

以上を踏まえた、逸失利益の計算式は、以下のとおりです。

逸失利益の計算式と具体例

逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

(例)年齢30歳の主婦の方が亡くなった場合
380万円×(1-0.3)×22.1672=5896万4752円
※上記基礎収入額は、仮想のものです。実際には、主婦の方の基礎収入額としては、原則として、死亡時年の賃金センサスに基づいて計算される平均賃金額を使うことになります。

葬儀費用など

葬儀費用などについては、原則として150万円を限度として認められます。
なお、香典や香典返しについては、考慮されません。

その他の損害

事故後、亡くなるまでの間、治療を受けていた場合の治療費を請求することができます。

また、ご遺族が海外で生活していた場合に、葬儀等に出席するための帰国費用なども認められることがあります。

裁判例(東京地判平成21年11月18日)

実母の死亡により、長男が赴任先の米国から妻と子2人と共に葬儀等に出席した際の費用として80万円を認めました。

死亡事故に関する無料相談

ご家族を交通事故で亡くされた場合、ご遺族の方は、保険会社と交渉するだけではなく、相続の問題や、刑事事件の被害者遺族としての対応も検討しなければなりません。
また、死亡事故の場合、賠償額が高額になる傾向があるため、保険会社の対応も厳しくなることが多くあります。事故状況について、加害者が一方的な言い分を展開し、過失割合が争いになるケースも少なくありません。
そのため、ご家族を交通事故で亡くされたような場合には、弁護士を頼っていただき、精神的なご負担を少しでも減らしていただければ幸いです。

現在、本解説を執筆した山形弁護士による無料相談を実施しておりますので、お気軽にご相談ください。

静岡城南法律事務所

弁護士 山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、一人で年間120件以上の交通事故案件を手掛けている。慰謝料、後遺障害、過失割合に関する交渉・裁判を得意とする。

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