
交通事故の示談交渉や裁判に掛かった弁護士費用を保険会社に請求できないの?
遅延損害金って何?
この記事は、このような疑問をお持ちの方のために書きました。
こんにちは!弁護士の山形です。
今回は、示談交渉や裁判に掛かった弁護士費用を保険会社に請求する方法や遅延損害金について解説しています。
「弁護士費用を保険会社に請求したい、少しでも多くの賠償金を支払ってもらいたい」という方は、是非、参考にしてみてください。
本記事を執筆した弁護士
目次
この記事の結論
- Q1. 弁護士に依頼してかかった費用は、加害者の保険会社に請求できるのか?
- A1. 裁判で判決となれば、認容された損害額の1割程度が「弁護士費用相当損害金」として加算される。最判昭和44年2月27日(民集23巻2号441頁)は、交通事故のような不法行為で訴訟追行を弁護士に委任した場合の弁護士費用について、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内で不法行為と相当因果関係のある損害と認めており、これが現在の実務基準となっている。ただし示談交渉段階では、保険会社は弁護士費用相当損害金の支払に応じないのが通常で、請求するには原則として裁判の提起が必要。
- Q2. 弁護士費用特約を使っている場合でも、弁護士費用相当損害金を請求できるのか?
- A2. できる。弁護士費用特約から支払われる保険金は、被害者がこれまで支払ってきた保険料の対価であり、加害者の賠償義務を免れさせる性質のものではないと解されているため、弁護士費用特約を使っていても加害者(またはその保険会社)への弁護士費用相当損害金の請求は可能というのが実務上の扱い。ただし、弁護士費用特約の保険会社から弁護士費用相当損害金の一部または全てを請求されることもあるので注意。
- Q3. 「遅延損害金」とは何か。どう計算するのか?
- A3. 加害者が本来事故時に支払うべき損害賠償金について、実際に支払われるまでの期間に応じて発生する利息のようなもの。最判昭和37年9月4日により、交通事故のような不法行為による損害賠償債務は損害の発生と同時(=事故発生日)に遅滞に陥るとされ、事故日を起算日として法定利率で計算する。計算式は「損害賠償金額 × 法定利率 × 事故発生日から支払日までの経過日数 ÷ 365日」。法定利率は、令和2年3月31日以前に発生した事故は年5%、令和2年4月1日以降の事故は年3%(民法404条。3年ごと見直しだが令和11年3月31日までは3%維持が法務省告示で決定)。
- Q4. 遅延損害金や弁護士費用相当損害金が高額になるケースでは、どうすればよいか?
- A4. 賠償額が高額になるケースや事故から日が経っているケースでは、裁判の提起を検討する価値がある。遅延損害金は事故日からの日数に応じて発生するため、数百万円〜数千万円規模の事案では数十万〜数百万円の上乗せとなる可能性がある。また、後遺障害による損害も事故発生日(症状固定日ではない)から遅延損害金が発生する(最判平成7年7月14日)。なお、裁判で和解する場合も、裁判所が「調整金」名目で弁護士費用相当損害金や遅延損害金の一部を考慮した金額を提示することが実務上多い。
弁護士費用を加害者側の保険会社に請求する方法
弁護士費用は原則として自己負担だが、交通事故では例外
日本の民事訴訟では、訴訟追行を本人が行うか弁護士に依頼するかは当事者の選択に委ねられており、弁護士費用は訴訟費用に含まれず、勝訴した場合でも各自が負担するのが原則です。
しかし、交通事故のような不法行為による損害賠償請求訴訟では、この原則に対する重要な例外があります。最判昭和44年2月27日(民集23巻2号441頁)は次のように判示しました。
「現在の訴訟はますます専門化され技術化された訴訟追行を当事者に対して要求する以上、一般人が単独にて十分な訴訟活動を展開することはほとんど不可能に近い。…訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。」
この判例を根拠に、現在の裁判実務では、交通事故で裁判となり判決が出た場合、認容された損害額の1割程度が「弁護士費用相当損害金」として加算されます。
具体例で見る弁護士費用相当損害金の計算
例えば、慰謝料や休業損害などとして1,000万円の損害が認められた場合、1割の100万円が弁護士費用相当損害金として加算され、合計で1,100万円が保険会社から支払われることになります。
これは、加害者が交通事故を起こさなければ被害者が弁護士に依頼する必要はなかったのですから、その弁護士費用も交通事故によって発生した損害と考える仕組みです。
ただし、実際に被害者が弁護士に支払った費用の全額が認められるわけではなく、あくまで全体の認容額の1割程度が相場となっています。弁護士費用相当損害金は、被害者が実際に負担した金額ではなく、「不法行為と相当因果関係のある損害」として認められる範囲の金額だからです。
交渉段階では弁護士費用相当損害金の請求は認められにくい
理屈上は、交渉段階でも弁護士費用相当損害金を保険会社に請求することは可能ですが、ほとんどのケースで保険会社は支払を拒否します。そのため、弁護士費用相当損害金を現実に回収するには、裁判まで行う必要があるのが実務上の扱いです。
裁判の中で和解する場合も弁護士費用相当損害金が考慮される
裁判を提起したものの、判決までいかずに途中で和解するケースが実務上は多くあります。そのような場合も、後で説明する遅延損害金と合わせて「調整金」という名目で加算されることが多いです。
どの程度加算されるかはケースバイケースで、争点になっている後遺障害の等級について被害者側に有利に考える場合には調整金を少なめにするなど、裁判官の事案に対する見立てによって様々です。
弁護士費用特約を利用している場合でも請求可能
「弁護士費用特約を使っていて自分は弁護士費用を負担していないのだから、弁護士費用相当損害金は請求できないのでは?」という疑問を持たれる方が多くいらっしゃいます。
しかし、弁護士費用特約から支払われる保険金は、被害者がこれまで支払ってきた保険料の対価として支払われるものに過ぎず、これによって加害者が賠償義務を免れるわけではないというのが実務上の扱いです。
この点については、裁判例でも「原告が自動車保険契約の弁護士費用特約を利用していたとしても、弁護士費用相当額の保険金は原告の負担した保険料の対価として支払われるものであるから、原告に弁護士費用相当額の損害が発生していないとはいえない」といった趣旨の判断がなされています。
つまり、弁護士費用特約を利用していても、加害者に対する弁護士費用相当損害金の請求は可能というのが実務上の扱いです。
ただし、弁護士費用特約の保険会社から弁護士費用相当損害金の一部または全てを請求されることもあるので注意が必要です。私の経験上ですが、和解で解決した場合は、通常、弁護士費用相当損害金がいくらなどと明示せずに、解決となるので、弁護士費用特約の保険会社から請求されたことはありません。
しかし、判決の場合は、弁護士費用相当損害金が明示されますので、過去に弁護士費用特約の保険会社から依頼者が弁護士費用相当損害金の一部(実際に私に発生した費用分)を請求されたケースがあります。
遅延損害金を保険会社に請求する方法
遅延損害金とは何か
遅延損害金とは、加害者が被害者に支払うべき損害賠償金について、実際に支払われるまでの期間に応じて発生する損害金で、いわば利息のようなものです。
本来、交通事故を起こした加害者は、事故発生直後に被害者に対して損害を賠償する義務を負います。最判昭和37年9月4日は、「不法行為による損害賠償債務は、損害の発生と同時に、何らの催告を要することなく、遅滞に陥る」と判示しており、交通事故の損害賠償債務は事故発生と同時に履行遅滞状態になります。
しかし、現実には、損害の内容が確定して実際に賠償金が支払われるまでには一定のタイムラグがあります。そのタイムラグ(=加害者が支払うべきなのに支払っていない期間)について、損害賠償金に法定利率を掛けた金額を遅延損害金として請求できるのです。
遅延損害金の起算日は「事故発生日」
遅延損害金の起算日は、事故発生日当日です。翌日ではありません(民法140条の初日不算入の原則はここでは適用されず、最判昭和37年9月4日の考え方により同日から遅滞に陥るため)。
また、後遺障害に関する損害についても、最判平成7年7月14日により、遅延損害金の起算日は症状固定日ではなく交通事故発生日とされています。同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする損害賠償債務は一個と解され、一体として損害発生時に遅滞に陥るというのがこの判例の考え方です。
さらに、弁護士費用相当損害金についても、最判昭和58年9月6日により、遅延損害金の起算日は事故発生日となります。弁護士費用相当損害金も一個の損害賠償債務の一部を構成するものとされているためです。
遅延損害金の計算式と法定利率
遅延損害金の計算式は次のとおりです。
損害賠償金額 × 法定利率 × 事故発生日から支払日までの経過日数 ÷ 365日
法定利率は民法404条で定められており、民法改正により次のように扱いが分かれます。
| 事故発生日 | 法定利率(遅延損害金の利率) |
|---|---|
| 令和2年3月31日以前 | 年5% |
| 令和2年4月1日から令和5年3月31日 | 年3% |
| 令和5年4月1日から令和8年3月31日 | 年3% |
| 令和8年4月1日から令和11年3月31日 | 年3%(法務省告示で決定済) |
| 令和11年4月1日以降 | 未確定(変動の可能性あり) |
法定利率は3年ごとに見直される変動制(民法404条3項)ですが、令和11年3月31日までは年3%が維持されることが法務省告示により決定されています(令和7年法務省告示第73号)。
重要なのは、一度事故時に適用される法定利率が決まれば、その後に法定利率が変動しても、当該事故の遅延損害金の利率は変わらないという点です。民法419条1項により、遅延損害金の利率は「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率」によって定まります。
遅延損害金の具体的計算例
賠償金の総額1,000万円で、令和3年4月1日に発生した事故について、事故日から365日後に賠償金が支払われることになったケースを考えます。
1,000万円 × 3% × 365日 ÷ 365日 = 30万円
→ 賠償総額は、元本1,000万円 + 遅延損害金30万円 = 1,030万円となります。
重い後遺障害が残ってしまい賠償金額が高額となるケースや、事故から解決まで長期間経過するケースでは、遅延損害金も相応に高額となります。
示談交渉段階では遅延損害金は認められにくい
弁護士費用相当損害金と同様、交渉段階で保険会社が遅延損害金の支払に応じることはほとんどありません。そのため、遅延損害金が高額となるケース(賠償金額が高額な場合や、事故から日が経っている場合など)では、裁判を選択肢に入れて検討する価値があります。
裁判で和解する場合も、判決によらず裁判所提示の和解案で終了するケースでは、弁護士費用相当損害金と合わせた「調整金」として、遅延損害金の一部が考慮されるのが実務上の扱いです。
裁判を選ぶか示談で終えるかの判断材料
ここまでの内容を踏まえると、以下のような場合には、裁判まで進むことで示談を大幅に上回る回収が期待できることになります。
- 賠償金額が高額なケース(弁護士費用相当損害金の絶対額が大きくなる、遅延損害金も高額になる)
- 事故から長期間経過したケース(遅延損害金が累積している)
- 後遺障害の等級で争いがあり、判決を求めた方が有利と見込まれるケース
- 保険会社の提示額が裁判基準から大きく乖離しているケース
もっとも、裁判は解決までに期間を要し、判決までいけば少なくとも半年、通常は1年〜2年程度かかるのが実務感覚です。また、裁判をすれば必ず判決までいくわけではなく、多くは和解で終わるため、「判決を前提にした計算そのまま」で終わるとは限りません。
賠償金額の見通し、争点の内容、回収までの時間コスト、依頼者の生活状況など、事案ごとに総合的に判断することが重要です。静岡城南法律事務所では、交通事故に注力する弁護士が、弁護士費用相当損害金・遅延損害金を含めた「裁判をした場合の見込み回収額」と、「示談した場合の見込み回収額」を比較してご説明しています。
「示談案で応じるべきか、裁判まで進むべきか」で迷われている方は、早めにご相談ください。弁護士費用特約に加入されている場合は、補償上限額まで保険会社が弁護士費用を負担してくれますので、ほとんどのケースで実質無料で対応可能です。
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弁護士費用特約を使える場合には、補償上限額まで保険会社が弁護士費用を代わりに支払ってくれますので、ほとんどのケースで実質無料で交渉や裁判等を弁護士に依頼できます。
弁護士費用特約を利用しても、保険料は変わりませんので、可能な場合には利用することをお勧めします。
「弁護士費用特約を使えるか分からない」という場合には、弁護士が代わりに保険会社に確認することもできますので、お気軽にご相談ください。
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当事務所では、交通事故被害者の方からだけではなく、保険代理店様からのご相談についても無料で対応しています。
これまでも全国の保険代理店様からご相談いただいた実績があります。
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Q弁護士に相談したら必ず依頼しなければいけないのでしょうか?
もちろん、相談だけで依頼しなくても問題ありません。むしろ、複数の弁護士に会って相談したうえで、最も信頼できる弁護士に依頼することをお勧めします。



