交通事故の損害はいつまで請求することができるの?
時効の期限が近い、時効を過ぎてしまった場合はどうすれば良いの?

この記事は、このような疑問をお持ちの方のために書きました。

こんにちは!弁護士の山形です。
今回は、交通事故のまとめについて解説しています。
事故から長い期間が経ってしまうと、加害者や保険会社から損害の賠償を受けられなくなってしまうことがありますので、注意してください。

静岡城南法律事務所

弁護士 山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、単独で年間に100件以上の交通事故案件を手掛けている。保険会社との交渉を得意とする。案件としては、過失割合、慰謝料、後遺障害、死亡事故に関するものが多い。

目次

時効って?

交通事故にあってしまった被害者は、加害者に対して、慰謝料などの損害を請求することができます。
しかし、長期間、請求せずに放置していると、慰謝料などを請求する権利が無くなってしまいます。
これが「時効」です。

時効の期間

では、どのくらいの時間が経ってしまうと時効になってしまうのでしょうか?

まず、車の修理費用などの物損については、損害及び加害者を知ったときから3年間とされています。
ひき逃げなど、加害者が分からないというような特殊な場合を除けば、事故日の翌日から3年と考えてください。

次に、慰謝料や休業損害など、ケガをしたことによって生じた損害については、損害及び加害者を知ったときから5年間とされています。
こちらも、ひき逃げなどの特殊な場合を除けば事故日の翌日から5年と考えてOKです。

なお、後遺障害が残ってしまった場合に、後遺障害を原因とする慰謝料や逸失利益については、症状固定から5年となります。
被害者の方が亡くなってしまった場合は、亡くなった日の翌日から3年です。

ちなみに、かなりレアなケースですが、事故から20年が経ってしまうと、加害者が分からないなどの事情があっても、物損もケガの損害も時効となってしまいます。

 

時効が近い場合はどうすれば良いの?

時効の期限が近い場合には、時効を延長させる手段をとるべきです。
以下、具体的な方法について解説します。

催告

配達証明付内容証明郵便などで加害者に損害を請求することによって、そのときから6ヶ月間だけ時効の完成を猶予させることができます。

催告による時効の完成の猶予は1回しか効果がありませんから、催告のときから6ヶ月以内に示談ができなさそうな場合には、別の手段をとる必要があります。

調停

調停を申し立てると、調停が終了するまでは、時効が完成しないことになります。

調停が不調となった場合(話し合いがまとまらなかった場合です。)には、不調時から6か月が経過するまでの間は時効が完成猶予され、時効が完成しないこととなります。
調停で話し合いがまとまらなかった場合、通常、訴訟を提起することが多いかと思いますが、訴訟の提起は、調停が不調になったときから6ヶ月以内に行う必要があるということです。

訴訟の提起

訴訟提起をすると、訴訟が終了するまでは時効が完成しません。

あまり一般的にはありませんが、例えば、訴えが却下されたり、訴訟の途中で訴えを取り下げたりした場合には、その手続が終了したときから6ヶ月が経過するまでの間は時効が完成しません。

債務の承認による更新

あなたに事故を原因とする損害賠償請求権があることを加害者や加害者の保険会社が認めた場合には、「債務の承認」にあたり、時効が中断されます。

時効の中断の場合は、時効の期間がリセットになりますから、このときから、改めて時効の期間が始まります。

債務の承認の具体例としては、例えば、書面で債務を承認してもらったり、損害賠償金の一部を支払ってもらうことが考えられます。

なお、一般的には、加害者の保険会社があなたの治療費を病院などに支払った場合も債務の承認にあたると考えられています。

協議による時効の完成猶予

加害者や保険会社と協議を行うことの合意ができれば、時効の完成を最長で1年間、猶予させることができます。

ただ、この制度を利用するためには、色々と条件があります。
そのため、だったら、債務の承認について書面をもらう方が簡単ですので、敢えて、協議による時効の完成猶予は使わなくても良いかと思います。

既に時効を経過してしまった場合はどうすれば良いの?

時効を経過してしまっても、まだ諦めないでください!

たとえ時効を経過してしまっても、加害者や保険会社が債務を承認すれば、時効はリセットされます。
特に、保険会社については、時効を経過していることを分かっていても、被害者救済という観点から、敢えて時効の主張をしないケースもあります。
以前、時効を経過してしまってから私のところに、相談に来られた方のケースでも、保険会社は時効の主張をしませんでした。

しかし、もちろん、絶対に時効を主張しないとは言えませんから、時効期限前に、先ほど説明した手段を取ることが重要です。

まとめ

いかがでしたか?
今回は、交通事故の時効について解説しました。
時効の問題は、法律的な難しい話もありますので、心配な方は、早めに弁護士に相談されることをオススメします。

静岡城南法律事務所

弁護士 山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、単独で年間に100件以上の交通事故案件を手掛けている。保険会社との交渉を得意とする。案件としては、過失割合、慰謝料、後遺障害、死亡事故に関するものが多い。

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