給与所得者の場合の休業損害の計算方法は?
手取り収入と額面収入のどちらを基準に考えるの?
この記事は、このような疑問をお持ちの方のために書きました。
こんにちは!静岡の弁護士の山形です.
今回は、給与所得者の休業損害の計算方法について解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
給与所得者の休業損害の計算方法の基本
会社員が事故の影響で欠勤して、収入が減った場合、休業損害は、以下の手順で計算されます。
休業損害の計算手順
①基礎日額を算出
②休業日数を確認
※有給休暇を使った場合も含みます。
③基礎日額に休業日数を掛ける
「連続して欠勤している場合」と「出勤したり休んだりした日がある」ケースについて、それぞれの一般的な算出方法について解説します。
連続して欠勤している場合
まず、「連続して欠勤している場合」、例えば、1月1日から1月30日まで連続して欠勤したような場合について解説します。
手順としては、①基礎日額の算出、②休業日数を確認、③基礎日額に休業日数を掛ける、という流れになります。
①基礎日額の算出
まず、基礎日額を算出します。
通常、給与所得者が休業した場合、勤務先に休業損害証明書を作成してもらうことになりますが、休業損害証明書の中に「支給金額」を記載する欄があります。
下の書式の「5 自動車事故前3ヶ月間の月例給与(賞与は除く)は下表のとおり」のところです。
そして、基礎日額は、事故前3ヶ月間の支給金額合計÷90日
という計算式で算出します。
例えば、事故前3ヶ月間の支給金額合計が90万円の場合、90万円÷90日=1万円となります。
なお、事故前3ヶ月間の支給金額合計には、「本給」だけではなく、「付加給」も含めて計算しますので、注意してください。
②休業日数の確認
次に、休業日数を確認します。
先ほどの例では、1月1日から1月30日まで連続で欠勤しているので、30日が休業日数となります。
ちなみに、基礎日額を算出する際に支給金額合計を90日で割っていますので、ここでの休業日数は、勤務先の定休日も含めた30日まるまるで計算します。
③基礎日額に休業日数を掛ける
最後に、基礎日額に休業日数を掛けます。
今回の例では、基礎日額が1万円でしたので、休業損害は、
1万円×30日=30万円となります。
出勤したり休んだりした日がある場合
今度は、例えば、5月1日から6月30日までの期間、出勤したり休んだりした日が飛び飛びであったような場合について解説します。
手順としては、先ほどと同じように①基礎日額の算出、②休業日数を確認、③基礎日額に休業日数を掛ける、という流れになります。
①基礎日額の算出
今回は、事故前3ヶ月間の支給金額合計を3ヶ月間の実稼働日数で割って計算します。
先ほどの「連続して欠勤していたケース」と異なり、実稼働日数で割るという点に注意してください。
例えば、事故前3ヶ月間の支給金額合計が90万円で、事故前の3ヶ月間の実稼働日数(実際に、勤務した日数)が60日間であれば、
90万円÷60日=1万5000円が基礎日額となります。
②休業日数の確認
断続的に欠勤している場合には、実際に欠勤した日数を休業日数とします。
例えば、5月1日から6月30日までの間、12日間欠勤していたのであれば、12日が休業日数となります。
③基礎日額に休業日数を掛ける
最後に、基礎日額に休業日数を掛けます。
今回の例では、基礎日額1万5000円×12日=18万円が休業損害となります。
基礎日額は、手取り収入と額面収入のどちらから算定するの?
基礎日額は、手取り収入と額面収入のどちらから算定するのでしょうか?
社会保険料については、控除前の給与額、つまり額面収入から基礎日額を算定して構いません。
なぜなら、従業員は、欠勤して給与を受け取らなかったとしても、社会保険料の従業員負担部分の負担から免れることはないからです。
また、住民税と所得税についても、実務では、控除前の給与額を基礎として休業損害を算出しています。
賞与(ボーナス)の減額があった場合
事故を原因とする欠勤などで賞与(ボーナス)の減額があった場合には、勤務先に賞与減額証明書を作成してもらってください。
証明書の「欠勤により減額した額及び計算式」に記載された金額を損害として請求することができます。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、給与所得者の休業損害について解説しました。
事故の影響で会社を休んでしまった方は、ぜひ参考にしてみてください。