静岡城南法律事務所

弁護士 山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、一人で年間120件以上の交通事故案件を手掛けている。慰謝料、後遺障害、過失割合に関する交渉・裁判を得意とする。

目次

後遺障害があるのに逸失利益が認められないことがあるの?
役員の場合の逸失利益はどうなるの?

こんにちは!静岡の弁護士の山形です。
今回は、逸失利益のQ&Aについて解説しています。
交通事故に遭ってしまい、後遺障害が残ってしまった方は、参考にしてみてください。

なお、後遺障害のキホンについては、以下の記事で紹介していますので、こちらの記事も参考にしてみてください。

Q 給与所得者の逸失利益は、源泉徴収票の「支払金額」と「給与所得控除後の金額」のどっちで計算するの?

給与所得控除というのは、所得税等の計算をする際に控除されるものです。
つまり、税金の計算のために控除されているに過ぎませんので、逸失利益を計算する際には関係ありません。

そのため、給与所得者の逸失利益は、源泉徴収票の「支払金額」を基礎収入として計算することになります。

Q 個人事業主の基礎収入額は、どうやって求めるの?

個人事業主の基礎収入額は、青色申告をしている場合は、決算書の損益計算書から知ることができます。

損益計算書の一番右下の「所得金額」に、青色申告特別控除額と専従者給与額を加えてください。
そして、その合計額に事業者本人の寄与率(※)を掛けて、基礎収入額を求めることができます。
※事業を家族が手伝っているような場合に、事業者本人の寄与に基づく収入の割合のことです。

専従者給与は、節税対策のために支払っていることもあり、専従者の事業への寄与の程度を表しているとは言いづらいことがあります。
そのため、専従者給与額を一旦、所得金額に加算した上で、事業者本人の寄与率の割合を掛けて、その事業者本人の基礎収入としています。

Q 18歳未満の被害者の労働能力喪失期間は、何年で計算するの?

18歳未満の被害者の場合、一般的には、就労可能年数は18歳から67歳までの49年となりますが、ライプニッツ係数は「就労可能年限(67歳)までの年数に対応する係数」から「就労始期(18歳)までの年数に対応する係数」を差し引いた数値となります。

例えば、症状固定時の年齢が5歳の被害者の場合は、以下のとおりです。

症状固定時の年齢が5歳のライプニッツ係数

①5歳から67歳までの年数62年に対応するライプニッツ係数・・・28.003
②5歳から18歳までの年数13年に対応するライプニッツ係数・・・10.6350
③ ①-②=17.3653

なお、18歳以上でも大学生や専門学校生などの場合は、就労を開始する卒業時の年齢に対応するライプニッツ係数を差し引きます。

Q 後遺障害が認定されても逸失利益が認められないことがあるの?

例えば、顔面挫傷により、外貌醜状を残し、後遺障害が認定されたとしても、醜状障害は、それ自体が身体の機能を障害するものではないので、労働能力の喪失というものを考えにくく、ただちに逸失利益が認められるものではありません。
また、逸失利益が認められる場合でも、等級の基準とおりの喪失率がそのまま認められることは、あまりありません。

そのため、例えば、対人関係が円滑でなくなったことで間接的に労働能力に影響があったことなども主張、立証していくことが大切です。

なお、外貌醜状と同じように、鎖骨や肋骨の変形障害、歯牙障害等も後遺障害が認定されたとしても、労働能力喪失率が問題となることがあります。

Q 法人の役員の逸失利益は、どうなるの?

法人の役員については、役員報酬のうち、労務対価部分については逸失利益が認められます。

そして、役員報酬中の労務対価部分の判断については、会社の規模など、様々な事情から判断されますが、例えば、小さな会社で役員といっても他の従業員と同じように働いているような場合には、少なくとも他の従業員の給与相当分については労務対価性が認められやすいです。

まとめ

いかがでしたか?
今回は、逸失利益についてのQ&Aでした。
交通事故に遭って、後遺障害が残ってしまったという方はぜひ参考にしてみてください。

静岡城南法律事務所

弁護士 山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、一人で年間120件以上の交通事故案件を手掛けている。慰謝料、後遺障害、過失割合に関する交渉・裁判を得意とする。

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