高速道路で並走状態から車線変更されて横からぶつけられた。
保険会社が主張する過失割合に納得がいかない。
高速道路の車線変更事故で過失割合が10:0になるケースを知りたい。

 

この記事は、このようなことでお困りの方のために書きました。

本記事では、高速道路での車線変更による事故における過失割合について、解説しています。
また、10:0になる場合など、基本的過失割合とおりにならない場合についても解説しています。
保険会社が主張する基本的な過失割合に納得がいかないという方は、是非、参考にしてみてください。

静岡城南法律事務所

德田匡輝(とくだまさてる)

静岡県 登録番号:64322

日本交通法学会所属。弁護士としては珍しく、特に過失割合の問題に強い。駐車場事故、車線変更、交差点での事故など、保険会社が提示する過失割合に納得のいかない被害者からの依頼が多い。最近では、口コミを聞いた静岡県外からの相談・依頼も増えている。

目次

高速道路での車線変更事故(車vs車)

走行車線から追い越し車線へ車線変更する場合

基本的過失割合

追い越し車線を直進する車Aと、その前方で走行車線から追い越し車線へ車線変更した車Bが衝突した事故の場合、基本的過失割合はAが20%、Bが80%となります。

0:100など基本的過失割合と異なる割合になる場合

例えば、後方から進行してきたAがBを追い抜いた直後にBが車線変更した場合などAが避けられないようなタイミングでBが車線変更をした場合は、基本的過失割合とおりにならない場合があります。

判例タイムズにおいても「後方から進行してきた自動車が前車を追い抜いた直後に進路変更した場合などは、本基準の対象外である。」と明記されています。

例えば、以下のとおり、高速道路での車線変更による事故で0:100や10:90になった裁判例もあります。

大阪地裁・平成24年3月23日判決

 被告は,走行車線から追越車線に車線変更するに際し,追越車線を後方から進行してくる車両の速度または方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは,進路を変更してはならない注意義務を負っていたが(道路交通法28条の2第1項参照),これに反して車線変更をした過失があるといえる。加えて,上記車線変更は高速道路上で双方の車両が高速で走行している際にされたこと,被告が右ウィンカーを点滅させるのと同時くらいに車線変更をしたこと,その時点で原告車が被告のすぐ右後ろに迫っていたことなども考慮すれば,被告の過失は大きかったというべきである。
 他方,原告は,追越車線を通常どおり走行し,被告トラックのすぐ右後ろまで来たところに,被告トラックが急な車線変更してきたため,これを避けきれなかったものであって,過失があったとは解されない。
 よって,本件事故は専ら被告の過失により生じたものといえる。

東京地裁・平成15年5月29日判決

 被控訴人は,Y車両を運転して走行車線から追越車線に進路を変更するに際し,右後方の追越車線を走行していたX車両の動静を注視し,その安全を確認すべき注意義務があったにもかかわらず,右後方の確認を怠り,漫然と追越車線に進路を変更した過失があり,これが本件事故発生の主たる原因であると判断される(なお,本件においては,追越車線の流れが通常の流れよりは遅いものであったと考えられるが,それでも走行車線より流れがやや速かったのは,前記のとおりである。)。
 一方において,控訴人としても,Y車両の動静を注視して,危険があれば直ちに対処できるように運転すべき注意義務があるところ,前記のとおり,Y車両が車線変更を完了していたことからすれば,自車を減速させ,Y車両との衝突を避けるだけの時間的余裕があったものと考えられるから,控訴人にも,Y車両の動静に対する注視を怠り,自車の減速を遅らせた点に過失があるものといわざるを得ない。
 ・・・以上の事情のほか,本件事故現場の状況,本件事故当時の両車両の速度,衝突地点等を考慮すると,双方の過失割合は,控訴人10:被控訴人90と認めるのが相当である。

これらの裁判例については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。

また、以下の記事では、一般道路に関するものですが、車線変更の事故で0:100になる場合など基本的過失割合とおりにならないケースについて、並走からの車線変更、追い越しながらの車線変更など様々な事故状況ごとに解説しています。
基本的な考え方は、一般道路であっても共通する部分が多いので、0:100の獲得を目指している方は、こちらも参考にしてみてください。

修正要素

上記の基本的過失割合を前提に以下の様な事情がある場合には、基本的過失割合が修正されることになります。

修正要素 直進車Aの過失が修正される割合
Bのウインカーなし又はウインカー遅れ -10%
Aの初心者マーク等 -10%
進路変更禁止区間 -10%
Bのその他の著しい過失・重過失 -10%
Aの速度違反 +10%~20%
分岐点・出入り口付近 +10%
Aがゼブラゾーンを進行 +20%
Aのその他の著しい過失・重過失 +10%~20%
ウインカーなし

車線変更車Bがウインカーを出さすに車線変更をした場合やウインカーの出し遅れがある場合、後続直進車Aの過失が10%減算されます。

初心者マーク等

後続直進車Aがいわゆる初心者マークやシルバーマーク等をつけた自動車である場合、Bの進路変更に際しての注意義務が加重されるため、Aの過失が10%減算されます。

著しい過失と重過失

著しい過失の例としては、脇見運転等著しい前方不注視、著しいハンドル・ブレーキ操作不適切、携帯電話等を通話のためにしようしたり、画像を注視したりしながら運転すること、酒気帯び運転などが挙げられます。
重過失は、著しい過失よりも重たい過失がある場合です。例としては、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、過労、病気及び薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある場合などが挙げられます。

上記に加えて、例えば、進路変更車Bが、車間距離が十分であっても著しい低速度で進路変更した場合や、車間距離が不十分なのに後続直進車Aよりも低速度で進路変更した場合などは、進路変更車Bに著しい過失・重過失があったものとして修正される可能性があります。

その他の場合(車vs車)

基本的過失割合

追い越し車線から走行車線に車線変更をする場合及び片側3車線以上の道路で走行車線から走行車線に車線変更する場合の事故についての基本的過失割合は、後続直進車Aが30%、車線変更車Bが70%となります。

修正要素

上記の基本的過失割合を前提に以下の様な事情がある場合には、基本的過失割合が修正されることになります。

修正要素 直進車Aの過失が修正される割合
Bのウインカーなし又はウインカー遅れ -10%
Aの初心者マーク等 -10%
進路変更禁止区間 -10%
Bのその他の著しい過失・重過失 -10%~20%
Aの速度違反 +10%~20%
分岐点・出入り口付近 +10%
Aがゼブラゾーンを進行 +20%
Aのその他の著しい過失・重過失 +10%~20%

高速道路での車線変更事故(車vsバイク)

車が走行車線から追い越し車線へ車線変更する場合

基本的過失割合

追い越し車線を直進するバイクAと、その前方で走行車線から追い越し車線へ車線変更した車Bが衝突した事故の場合、基本的過失割合はAが10%、Bが90%となります。

修正要素

上記の基本的過失割合を前提に以下の様な事情がある場合には、基本的過失割合が修正されることになります。

修正要素 直進バイクAの過失が修正される割合
Bのウインカーなし又はウインカー遅れ -10%
進路変更禁止区間 -10%
Bのその他の著しい過失・重過失 -10%
Aの速度違反 +10%~20%
分岐点・出入り口付近 +10%
Aがゼブラゾーンを進行 +20%
Aのその他の著しい過失・重過失 +10%~20%

バイクが走行車線から追い越し車線へ車線変更する場合

基本的過失割合

追い越し車線を直進する車Aと、その前方で走行車線から追い越し車線へ車線変更したバイクBが衝突した事故の場合、基本的過失割合はAが30%、Bが70%となります。

修正要素

上記の基本的過失割合を前提に以下の様な事情がある場合には、基本的過失割合が修正されることになります。

修正要素 直進車Aの過失が修正される割合
Bのウインカーなし又はウインカー遅れ -10%
Aの初心者マーク等 -10%
進路変更禁止区間 -10%
Bのその他の著しい過失・重過失 -10%~20%
Aの速度違反 +10%~20%
分岐点・出入り口付近 +10%
Aがゼブラゾーンを進行 +20%
Aのその他の著しい過失・重過失 +10%~20%

その他のケースで車が車線変更する場合

基本的過失割合

車が追い越し車線から走行車線に車線変更をする場合及び片側3車線以上の道路で車が走行車線から走行車線に車線変更する場合の事故についての基本的過失割合は、後続直進バイクAが20%、車線変更車Bが80%となります。

修正要素

上記の基本的過失割合を前提に以下の様な事情がある場合には、基本的過失割合が修正されることになります。

修正要素 直進車Aの過失が修正される割合
Bのウインカーなし又はウインカー遅れ -10%
進路変更禁止区間 -10%
Bのその他の著しい過失・重過失 -10%
Aの速度違反 +10%~20%
分岐点・出入り口付近 +10%
Aがゼブラゾーンを進行 +20%
Aのその他の著しい過失・重過失 +10%~20%

その他のケースでバイクが車線変更する場合

基本的過失割合

バイクが追い越し車線から走行車線に車線変更をする場合及び片側3車線以上の道路でバイクが走行車線から走行車線に車線変更する場合の事故についての基本的過失割合は、後続直進車Aが40%、車線変更バイクBが60%となります。

修正要素

上記の基本的過失割合を前提に以下の様な事情がある場合には、基本的過失割合が修正されることになります。

修正要素 直進車Aの過失が修正される割合
Bのウインカーなし又はウインカー遅れ -10%
Aの初心者マーク等 -10%
進路変更禁止区間 -10%
Bのその他の著しい過失・重過失 -10%~20%
Aの速度違反 +10%~20%
分岐点・出入り口付近 +10%
Aがゼブラゾーンを進行 +20%
Aのその他の著しい過失・重過失 +10%~20%

新規のご相談・ご依頼の受付停止のお知らせ

誠に恐れ入りますが、現在、多くのご相談・ご依頼をいただいており、新規案件の対応が困難な状況となっております。
そのため、現在、新規案件のご相談・ご依頼を一時停止させていただいております。

新規相談の受付再開の際には、当事務所のホームページにてご案内いたします。

何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

静岡城南法律事務所

德田匡輝(とくだまさてる)

静岡県 登録番号:64322

日本交通法学会所属。弁護士としては珍しく、特に過失割合の問題に強い。駐車場事故、車線変更、交差点での事故など、保険会社が提示する過失割合に納得のいかない被害者からの依頼が多い。最近では、口コミを聞いた静岡県外からの相談・依頼も増えている。

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