すれ違い事故で保険会社から5対5を主張されている。
すれ違い事故で10対0になった裁判例を知りたい。
どういった場合に10対0になるのか知りたい。
この記事はこのようなことでお悩みの方のために書きました。
本記事を執筆した弁護士
目次
狭い道路でのすれ違い事故(互いに停止していたと主張)
横浜地方裁判所・令和3年11月18日判決
本件事故の現場は,車両同士のすれ違いが難しい,狭い道路である(原告本人(2頁),被告本人(1頁))ところ,原告は,原告車両が左端で停止していたところに,被告車両が対向から進行してきたために,本件事故が生じたと主張又は供述する。
しかし,被告は,被告車両を左端で停止させていたにもかかわらず,対向を進行してきた原告車両の右ドアミラーが,被告車両の右ドアミラーに接触したと供述する(1頁,2頁)ところ,Aは,本件事故後,被告の要求に応じて,被告に対し,本件事故によって必要となった被告車両の右ドアミラーの修理費用3960円(税抜き。乙1,2)を,全額支払っているが,被告は,Aに対し,何らの支払をしていない(原告本人(10頁),被告本人(5頁))。
原告が主張又は供述する本件事故の上記態様は,原告車両が停止しているところに,被告車両が接触したとするものであり,その場合,Aに本件事故の責任がないことは,Aにとっても明らかであって,本件事故当時18歳というAの年齢を考慮しても,Aが,自己に責任がないことが分かりながら,少額とはいえ,被告車両の修理費を全額支払うということは考え難い(なお,Aは,原告の配偶者の弟であるが,本件においてAの陳述書も提出されず,証人申請もされていない。)。むしろ,Aが,被告車両の修理費を全額支払ったことは,被告の主張する上記事故態様(被告車両が停止しているところに,原告車両が接触したものであり,その場合,本件事故の全責任がAにあることは明白である。)に整合するものであるといえることからすれば,本件事故は,停止していた被告車両の側方を通過しようとした原告車両が,その右ドアミラーを被告車両の右ドアミラーに接触させた事故と認めるべきである。
そうすると,本件事故は,もっぱらAが,他の車両に接触しないよう,側方間隔を適切にとるべき注意義務を怠った過失によって生じた事故といえる一方,被告車両を左端に寄せて停止させていた被告に過失を認めることはできないというべきである。
具体的な道路幅は不明ですが、本件事故の現場は、「車両同士のすれ違いが難しい狭い道路」で、お互いの車のドアミラー同士が接触した事故です。
原告の車は、原告の義理の弟A(18歳)が運転していました。
そして、原告も被告もお互いに自分の車は停止していたところ、相手方の車が走行してきて、ドアミラーが接触したと主張していました。
ドライブレコーダーの映像など客観的な証拠がないため、どちらの車が停止していたのか、事故状況が争点となりました。
裁判所は、Aが被告に対してドアミラーの修理費用を弁償していたという事情などから、「Aが,自己に責任がないことが分かりながら,少額とはいえ,被告車両の修理費を全額支払うということは考え難い」として、「本件事故は,停止していた被告車両の側方を通過しようとした原告車両が,その右ドアミラーを被告車両の右ドアミラーに接触させた事故」と認定しました。
今回の裁判例では、当事者の事故後の態様から事故態様が認定されていますので、ドライブレコーダーの映像や実況見分調書などの証拠がない場合には、参考になります。
また、今回の裁判例とは異なりますが、車の損傷状況等から事故態様を証明できる場合もあります。
ただ、停止していたことは証明できたとしても、停止したタイミングまで証明することは難しく、停止していたとしても直前停止では、過失割合に影響がないこともあります。
事故態様は異なりますが、直前停止については以下の記事を参考にしてみてください。
センターラインの無いカーブでのすれ違い事故
さいたま地方裁判所・令和4年9月21日判決(自保ジャーナル第2138号)
原告車の右前部と被告車の右前部角が最初に衝突した【×】2地点は本件道路の中
央より0.6㍍北側であったから、本件衝突時、被告車(幅員161㌢㍍〔前提事実
(1)エ〕)は、本件道路の中央をまたいでいたと認められる。
以上によれば、本件事故の態様は、原告が、原告車を運転して本件道路を北西から
南東に向かって進行していたところ、被告の運転する被告車が本件道路の中央をまた
ぐようにして北西に向かって進行してきたため、ハンドルを左に切って回避しようと
したが回避することができず、やや右斜めになった状態の原告車の右前部と被告車の
右前部角が最初にほぼ正面から接触し、順次、原告車の右前部から右側面前方にかけ
ての部分と、被告車の右前部角から右側面前方にかけての部分が接触した態様の衝突
であったと認められる。
(中略)
上記本件事故の態様によれば、被告は、被告車を運転して車道を走行する
に際しては、左側に寄って走行すべき注意義務があったにもかかわらず、同義務を怠
り、漫然と本件道路の中央をまたいで走行したものであり、被告には過失があるとい
わざるを得ない。
本件事故は、被告車が本件道路の中央をまたいで走行したことにより発生したもの
であるから、専ら被告の過失により生じたものというべきであり、原告には過失があ
るとはいえない。
センターラインの無いカーブでの対向車同士のすれ違い事故です。
双方ともドライブレコーダーの映像は無かったようです。
原告も被告もお互いに相手方の車が道路の中央を超えて走行してきたため、衝突したのであって、自分には過失が無いと主張をしていました。
それに対して、裁判所は、実況見分調書に記載されていた原告被告双方の指示説明から、「原告車の右前部と被告車の右前部角が最初に衝突した【×】2地点は本件道路の中央より0.6㍍北側であったから、本件衝突時、被告車(幅員161㌢㍍〔前提事実(1)エ〕)は、本件道路の中央をまたいでいたと認められる。」として、被告車の方が中央を超えて走行したことを認定しました。
実況見分調書の指示説明部分について、警察官からの誘導により原告の指示説明に合わせて作成されたものであり、信用性を否定すべきであると主張していましたが、裁判所は、「被告は、実況見分において、被告側の関係者2名に付き添われ、警察官のすぐ近くに立っていたのであって、そのような状況下において、被告が警察官と話をせず、衝突した場所を特定して指示することもなかったというのは通常考え難いことに照らすと、被告の上記主張を採用することができない。」として、被告の主張を否定しました。
私の経験上も実況見分のときに警察官に言い分を聞いてもらえなかった、という相談はよくありますが、ドライブレコーダーの映像がない場合、実況見分調書に記載された指示説明が証拠としての価値が高くなることがありますので、必ず、自分の言い分を反映してもらうようにすることが大切です。
原付と車の正面衝突事故で原付側の100%過失
岡山地方裁判所・平成2年12月27日判決(交民集23巻6号1565頁)
原告は前方を注視していれば、十分被告車とすれちがえたにもかかわらず、前方不注視、または、ハンドル操作不十分のため、道路中央より右側を進行したものであり、本件事故は原告の右過失によって発生したものであり、被告は原告を認めて道路左側に回避する措置をとっており、なんら過失はないものというべきである。
原付と車の正面衝突の事故です。
原付の運転手側が原告となって訴訟提起していますが、結果として、原付側の100%過失が認定されたため、原告の請求は棄却されています。
本件でも、原告も被告もお互いに相手方が道路の中央を走行してきたため、衝突したのであって、自分には過失が無いと主張をしていました。
裁判所は、「衝突地点から原告車の転倒地点を結ぶ線上には、衝突後原告車によってできたタイヤ痕及び擦過痕が残っていた。」ことから、「原告の主張では、前記認定の衝突地点と原告車転倒地点間の原告車によるタイヤ痕及び擦過痕を矛盾なく説明することができない。」と、タイヤ痕や擦過痕から事故状況を推認して原告の主張を否定しました。
つまり、タイヤ痕から衝突地点を特定して、原告の原付が中央より右側を進行していたと認定しました。
一方、被告の車は、衝突前に原告の原付に気がついて道路の左側に回避する措置をとっていたことから、被告に過失はなく、原告の100%の過失が認定されました。
カーブで対向車が道路中央を超えて衝突した事故
津地裁伊賀支部・平成31年3月27日判決(控訴中)(自保ジャーナル第2047号)
基本的には,道路中央より右側を走行して,被告車両を原告車両と正面衝突させた被告に大きな過失が認められる。
一方,本件道路は,幅員が4ないし6メートルである上,左右ともに道路外との高低差があることやカーブミラーが存在することの心理的影響も加味すれば,事実上,すれ違いが相当困難な道路であるといえる。また,双方からの見通しも悪い。
したがって,対向車両の運転者にも,相当の注意が要求されるといえるところ,原告としても,カーブミラーで対向車両の存在を認識すれば,手前で一旦停止したり,クラクションで注意喚起するなどして,事故を回避することは可能であった。それにもかかわらず,原告がこれらの事故回避措置を講じなかったところに一定の過失が認められる。
なお,本件事故当時,被告が携帯電話を操作していたことは,これを認めるに足りる的確な証拠がない。
そうすると,本件事故は,基本的には被告の過失により発生したものであるが,上記のとおり,原告の過失を否定することはできず,原告と被告の過失割合は,10対90とするのが相当である。
センターラインがないカーブでの車同士の正面衝突事故です。
被告の車が道路の中央よりも右側を走行していたことは争いがなく、主に原告側にも過失があったといえるかが争点となっていたようです。
裁判所は、前記のとおり、基本的には、道路の中央より右側を走行していた被告の過失が大きいとしつつ、道路の幅が狭い、高低差がある、カーブミラーが設置されている、双方の見通しが悪いなどの道路状況から、原告側もカーブミラーで被告の車を認識すれば手前で一旦停止したり、クラクションを鳴らすなどして、事故を回避できたはずだとして、原告にも10%の過失を認定しました。
相手方の車が道路の中央よりも右側を走行してきて衝突した場合であっても、道路状況によっては左側を走行していた側にも過失が認定されることもありますので注意が必要です。
当事務所の解決事例
同じような事故で当事務所が扱った案件では、交渉段階では50:50を主張されていたため、裁判をしました。
道路幅が狭く、カーブミラーが設置されていたカーブでの原付(私の依頼者です。)と車の事故でしたが、道路中央を超えて右側を走行してきた車側の100%過失を前提として和解をしたものがあります。
ドライブレコーダーの映像はなかったのですが、実況見分調書の記載から、原付側が相手方の車を視認できる地点を特定し、相手方の車の速度や走行経路などから、事故の回避が不可能であることなどを主張して、当方の過失0%での和解に至りました。
同じく当事務所で扱った案件で交渉段階で70:30(依頼者様の過失の方が大きい)を主張されていましたが、裁判で0:100になったものもあります。こちらは、車と車の事故です。
すれ違い事故の過失割合についての無料相談
いかがでしたか?
今回は、すれ違い事故の正面衝突の場合の過失割合について解説しました。
現在、すれ違い事故の過失割合について無料相談を実施しています。
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新規のご相談・ご依頼の受付停止のお知らせ
誠に恐れ入りますが、現在、多くのご相談・ご依頼をいただいており、新規案件の対応が困難な状況となっております。
そのため、現在、新規案件のご相談・ご依頼を一時停止させていただいております。
新規相談の受付再開の際には、当事務所のホームページにてご案内いたします。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。