年金受給者が亡くなった場合の逸失利益の計算方法は?
逸失利益を計算するときには、どんな書類を用意したら良いの?
この記事は、このような疑問をお持ちの方のために書きました。
こんにちは!静岡の弁護士の山形です。
今回は、交通事故で亡くなった年金受給者の逸失利益について解説しています。
年金受給者の逸失利益の計算方法や関連する証拠書類などについて分かりやすく解説していますので、参考にしてみてください。
目次
年金受給者の逸失利益
被害者が亡くなった際に、国民年金や厚生年金等の支給を受けていた場合には、逸失利益として将来の年金分の賠償が認められます。
なお、被害者の方が遺族年金を受給していた場合、遺族年金については逸失利益は認められません。
逸失利益の一般的な計算方法は、以下のとおりですが、年金の場合も同じように基礎収入額に生活費を控除する必要があります。
逸失利益の計算式
年金額×(1ー生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
そして、年金は、受給者の生活保障の側面があるため、稼働所得よりも高い控除率となることが多く、年金の他に収入が無い場合には、少なくとも50%~60%程度の控除率が認められるケースが多いです。
なお、年金の支給が開始していなくても、受給資格が確定している場合には、年金の逸失利益は認められます。
逸失利益の計算に必要な証拠
年金を受給していた場合
「年金額改定通知書」という1年間の年金額が記載された葉書を用意しましょう。
この通知書は、年金額の改定が行われた年度の6月頃に郵送されています。
もし、紛失してしまった場合には、最寄りの年金事務所で再発行してもらうか、代わりに、年金額歴史回答票を発行してもらってください。
年金受給資格を得ているが未受給の場合
「ねんきん定期便」を用意しましょう。これは、毎年、誕生日前後に郵送されてきます。
逸失利益の計算方法
年金を受給していた場合
計算式としては、先ほど説明したとおり、以下のようになります。
逸失利益の計算式
年金額×(1ー生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
なお、年金額のうち、「加給年金」については、逸失利益性が否定されているので、控除してください。
一方、振替加算部分については、逸失利益性が肯定されているので、控除する必要はありません。
年金受給資格を得ているが未受給の場合
被害者の方が年金受給資格を得て年金保険料の納付を終えているものの支給開始年齢前に死亡した場合には、以下の計算式で逸失利益を計算します。
予定年金額×(1-生活費控除率)×(平均余命年数に対応するライプニッツ係数-予想される支給開始までの年数に対応するライプニッツ係数)
予定年金額については、これまでの加入実績に応じた年金額として主張することが多いです。
もし、今後60歳まで加入していたと仮定した年金額を主張すると、その間の保険料を損害から控除する必要が出てきますが、中間利息控除を考えると、控除される金額が大きくなってしまうからです。
そのため、年金受給開始年齢までの期間を考慮して、有利な方で計算すると良いでしょう。
なお、60歳以降の働いて得る収入について逸失利益が認められる場合、就労可能年数までの年金逸失利益が全額認められないことがあります。
在職老齢年金の支給停止制度というものがあり、60歳以降に働きながら年金を受給する場合、勤務先から支払われる給料(月給と賞与)の金額によっては、年金の一部または全部が支給停止になるからです。
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いかがでしたか?
今回は年金受給者の逸失利益について解説しました。
年金の逸失利益を計算するときには、通常の稼働収入と異なり、複雑な考え方をすることがあるので、ぜひ参考にしてみてください。
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