
主婦は、どんな場合に休業損害を請求できるの?
主婦の休業損害はどうやって計算するの?
この記事は、そんな疑問をお持ちの方のために書きました。
こんにちは。弁護士の山形です。
この記事では、交通事故にあってしまった主婦の方のために、休業損害の計算方法や、どのような場合に主婦の休業損害が認められるのかという点について、裁判例を紹介しながら弁護士が解説しています。主婦の方は、ぜひ参考にしてみてください。
本記事を執筆した弁護士
目次
この記事の結論
- Q1. 専業主婦は休業損害を請求できるのか?
- A1. できる。休業損害は、ケガの影響で仕事を休み収入が減った場合の損害を意味するが、主婦も料理・洗濯・掃除・育児・介護など毎日の家事労働を担っているため、ケガの影響で家事の全部または一部ができなかった場合には、裁判実務上、家事労働への支障として休業損害が認められる。専業主婦だけでなく、兼業主婦(パート・正社員)、主夫(男性であっても家事を担う場合)にも認められる。
- Q2. 主婦の休業損害はどう計算するのか?
- A2. 自賠責基準・保険会社の任意保険基準・裁判基準(弁護士基準)の3つがあり、一般的に裁判基準が最も高額になる。 自賠責基準:1日あたり6,100円×休業日数(2020年3月31日以前の事故は5,700円。自賠法施行令3条の2等)。 裁判基準:賃金センサス(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)の女性労働者・学歴計・全年齢平均賃金を基礎収入として、1日あたりの額に家事の支障があった日数または支障の程度(100%、50%、25%など)を掛けて計算。令和6年賃金センサスでは、女性労働者の全年齢平均賃金は約4,194,400円(1日あたり約11,491円)。
- Q3. パートで働いている兼業主婦の場合、パート収入と主婦の休業損害の両方を請求できるのか?
- A3. 両方は請求できない(重複請求不可)。兼業主婦のパート収入が賃金センサスの女性平均賃金より低い場合、賃金センサスを基礎収入として主婦の休業損害を請求する方が有利(実際の収入額が賃金センサスを上回る場合は実際の収入額を基礎収入とする)。なお、正社員・フルタイムで働く兼業主婦の場合は、主婦としての休業損害が認められないケースもあり、事案ごとの判断になる。
- Q4. 主婦の休業損害を適切に請求するためのポイントは?
- A4. 家事労働への支障の具体的内容を記録・主張・立証することが重要。「どんな家事作業ができなかった・大変だった」「家族が何を代替してくれた」「家事代行サービスを利用した」などの具体的な事情を日記や簡単なメモでも良いので記録しておくことが、後の交渉・裁判での立証に役立つ。保険会社の提示は任意保険基準で低めに計算されていることが多いため、裁判基準で計算し直すと大幅に増額される可能性がある。
交通事故にあった主婦も休業損害を請求できる
「休業損害」というのは、事故の影響で仕事を休んでしまったことによって発生した損害のことをいいます。事故でケガをしてしまった場合に会社を休んだり、有給を使ったりした場合、その分の損害を保険会社に対して請求できるわけです。
そして、主婦も料理をしたり、洗濯をしたり、毎日大変なお仕事をしていますから、ケガの影響で家事の全部や一部が出来なかった場合には、休業損害が認められます。
これは、裁判実務上も確立されている考え方で、赤い本(民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準)や青本(損害賠償額算定基準)などの裁判所が実際に用いている基準でも、家事従事者について女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎収入とすることが定められています。
主婦の休業損害の3つの基準と計算方法
休業損害の計算方法について、3つの基準があります。
1つ目は、自賠責基準です。これは、自賠責保険から休業損害が支払われる際に使われる計算方法です。
2つ目は、任意保険基準です。これは、事故の相手方の保険会社が独自に使っている計算方法です。
3つ目は、裁判基準です。弁護士基準、赤本基準と言ったりもします。これは、裁判になったときや、弁護士が交渉のときに使う基準です。
この3つの基準の中で一番高くなるのが、裁判基準(弁護士基準)です。そのため、弁護士は、保険会社に対して、裁判基準に基づいて、休業損害を請求していくことになります。
以下では、それぞれの基準での具体的な計算方法をみていきましょう。
自賠責基準での計算方法
自賠責保険からの支払は、以下の計算式で求められます。
休業損害額 = 6,100円 × 休業日数
※2020年3月31日以前に発生した事故については、1日あたり5,700円で計算します。
※1日あたりの減収分が6,100円を超えることが立証資料等により明らかな場合は、1日あたり19,000円を上限として実際の損害額で計算することができます。
根拠は「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(金融庁・国土交通省告示)です。同基準では、「家事従事者については、休業による収入の減少があったものとみなす」と定められており、実際の収入の有無にかかわらず、家事従事者であれば6,100円×休業日数の休業損害が支払われる仕組みになっています。
休業日数については、原則として、通院した日数となります。つまり、通院した日は、家事が出来なかったと考えるわけです。ただし、通院日数が多すぎる場合は制限されることもあります。
なお、自賠責保険の傷害分の補償上限額は被害者1名あたり120万円までとなっている点には注意が必要です。
任意保険基準での計算方法
任意保険基準は各保険会社によって異なり、公表されていません。ただ、次に説明する裁判基準よりも低い額となることがほとんどですので、もし、あなたが休業損害を請求するのであれば、裁判基準に基づいて計算するようにしましょう。
裁判基準(弁護士基準)での計算方法
裁判基準では、原則として、主婦の方の基礎収入額を会社などで仕事をしている女性の平均収入額と同じように考えます。「専業主婦の仕事内容をお金に換算すると女性の平均収入くらいはあるよね」と考えるわけです。
具体的には、賃金センサス(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)の女性労働者・学歴計・全年齢平均賃金を基礎収入として使います。
賃金センサスは毎年更新されていて、最近の主な金額は以下のとおりです。
| 年度 | 女性労働者・学歴計・全年齢平均賃金 | 1日あたり(年収÷365) |
|---|---|---|
| 令和元年 | 3,880,100円 | 約10,630円 |
| 令和4年 | 3,943,500円 | 約10,804円 |
| 令和5年 | 3,996,500円 | 約10,949円 |
| 令和6年 | 4,194,400円 | 約11,491円 |
どの年度の賃金センサスを使うかについては、事故当年度の賃金センサスを使うのが原則とされています(赤い本2019年版下巻33頁も「死亡した年又は症状固定日の属する年の賃金センサスを用いて」と明示)。ただし、事故当年度の賃金センサスは翌年3月頃に公開されるため、交渉時点で公開されていない場合は事故前年度の賃金センサスを使うこともあります。
※兼業主婦の方で、実際の収入が女性労働者平均賃金よりも多い場合には、実際の収入額を基礎収入として計算することになります。つまり、実際の収入と賃金センサスのいずれか高い方が基礎収入となります(両方を重ねて請求することはできません)。
そして、1日あたりの収入額に、実際に家事ができなかった日数を掛けて休業損害を計算します。ただ、実際には、全く家事ができなかったという日が毎日続くわけではなく、徐々に回復して出来る家事も増えるケースがほとんどです。そこで、例えば、以下のように、段階的に計算することが多いです。
主婦の休業損害の計算例(計算例1)
【ケース】事故にあった日から最初の1ヶ月間は100%、その後の3ヶ月間は50%、その後の2ヶ月間は25%、家事が出来なかった場合(令和6年賃金センサスで計算)
11,491円 × 100% × 30日 = 344,730円
11,491円 × 50% × 90日 = 517,095円
11,491円 × 25% × 60日 = 172,365円
合計 = 約1,034,190円
また、以下のように、通院した日を家事ができなかった日と考えて計算することもあります。ベースとなる金額は違いますが、自賠責と同じような考え方ですね。
主婦の休業損害の計算例(計算例2)
【ケース】6ヶ月間通院し、通院日数が80日の場合(令和6年賃金センサスで計算)
11,491円 × 80日 = 919,280円
上で紹介した計算方法は、あくまで一例に過ぎません。主婦の方の休業損害については、様々な考え方がありますので、実際の家事への支障などを考えながら、有利な計算方法を主張していくことになります。
休業損害は、家事への支障に対する補償ですから、裁判でも交渉でも、具体的な支障の内容を主張・証明していくことが大切となります。そのため、簡単なものでも良いので、「どんな作業ができなかった、大変だった」「家族に何を代わりにやってもらった」ということについて記録しておくと良いでしょう。
主婦の休業損害に関する裁判例
最後に、主婦の休業損害に関する裁判例を紹介します。
東京地判平成12年11月29日
一人暮らしの方について、家族のために家事を行っているわけではないため、原則として、主婦としての休業損害を請求することはできないと判断されました。
【コメント】
「専業主婦につき、夫と2人暮らしであり、事故で夫が死亡し、事故後は他人のために家事を行う状況ではなくなったところ、自分のためだけに家事を行う者に休業損害は認められないのが原則であるが、夫のために家事に従事しなければ、他で働いて収入を得る選択肢もあったと考えられ、夫を死亡させたのが加害者であることから、休業損害を認めないのは相当ではない」として休業損害を認めた裁判例(名古屋地判平成23年4月1日)もありますので、特別な事情があれば、一人暮らしの方であっても主婦としての休業損害が認められる場合があります。
横浜地裁平成30年11月2日
週3回程度、クリーニング工場でパートとして働いていた主婦(夫と成人した長女と3人暮らし)について、休業損害が認められました。
【コメント】
いわゆる兼業主婦(パート)についても、原則として休業損害が認められます。
名古屋地判平成20年5月21日
妻が正社員として働いて、専業主夫として洗濯、掃除、料理等の家事全般を行っていた男性の被害者について、主夫としての休業損害が認められました。
【コメント】
男性であっても主夫としての休業損害が認められます。なお、男性の主夫についても、通常は女性労働者の全年齢平均賃金を基礎収入として使います(家事労働の評価は性別ではなく労働の内容に着目して行うため)。
大阪高判平成16年9月17日
育児休業中に事故にあった会社員兼主婦について、休業損害が認められています。職場復帰予定日に復帰できなかった場合に、育児休業中は賃金センサス女性学歴計(女性の平均収入)を基礎とし、復帰予定日から会社に復帰した日までは、育児休業前の年収を基礎とし休業損害を算定しました。
【コメント】
この事案では、会社から育児休業中に給与が支払われていなかったという事情がありますので、会社から給与が支払われているケースでは、異なる結論になる可能性もあります。
主婦の休業損害は専門家への相談を
主婦の休業損害については、色々な考え方や裁判例があり、専門的な知識が必要となる問題です。特に、正社員・フルタイムで働く兼業主婦の場合には、保険会社が主婦としての休業損害を認めないケースも多く、過去の裁判例を示しながら粘り強く交渉する必要があります。
正社員・フルタイムで働く兼業主婦の休業損害については、以下の記事も参考にしてみてください。
【交通事故】正社員・フルタイムで働く兼業主婦の休業損害|静岡の弁護士が解説
保険会社の説明を鵜呑みにせずに、一度、弁護士に相談してみることをオススメします。当事務所でも、保険会社から「主婦の休業損害は認められない」と言われた事案について、過去の裁判例を示して粘り強く交渉した結果、適正な金額の休業損害を獲得した事例が多数あります。弁護士費用特約に加入されている場合は、補償上限額まで保険会社が弁護士費用を負担してくれますので、ほとんどのケースで実質無料で対応可能です。
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弁護士費用特約を利用しても、保険料は変わりませんので、可能な場合には利用することをお勧めします。
「弁護士費用特約を使えるか分からない」という場合には、弁護士が代わりに保険会社に確認することもできますので、お気軽にご相談ください。
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Q解決までには、どれくらいの時間が掛かりますか?
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Q弁護士に相談したら必ず依頼しなければいけないのでしょうか?
もちろん、相談だけで依頼しなくても問題ありません。むしろ、複数の弁護士に会って相談したうえで、最も信頼できる弁護士に依頼することをお勧めします。



