自転車で走っていたら、後ろから追い抜いてきた自転車が自分の自転車に触れたせいで横転し、ケガをしてしまった。
自転車で走りながら交差点に入ろうとしたら、曲がってきた自転車と出合い頭にぶつかりケガをしてしまった。
加害者から「自転車に追い抜かれる時にふらついていたあなたにも過失がある」といわれてしまった。
この記事は、このように自転車同士の事故でお困りの方のために書きました。
こんにちは。弁護士の德田です。
今回は、自転車同士の場合の事故で、過失割合が10:0と加害者側に事故の責任があると判断された裁判例を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
追越自転車が追い抜かれた自転車に接触した事故①
自転車で走行していた被害者が、その後方から自転車に乗った加害者に左側から追い抜かれた際,被害者の自転車ごと路上に転倒し,傷害を負ったところ、被害者の過失を否定した事例についての紹介です。
本件では、加害者は、仮に被害者を追い抜く際に被害自転車に接触がしたとしても、接触した原因の1つには、被害者が左後方の安全を確認せずに原告車の進路を急激に変更したことにあるから、過失相殺をするべきであると主張しました。
そうしたところ、裁判所は次のように述べ、被害者の過失を否定しました。
※「原告」とは被害者を指し、「被告」とは加害者を指します。
東京地判H30.11.26
原告車は,時速15~20kmに満たない速度で,被告が原告の追抜きを考えた時から上記衝突時までに約7.5m前進する間に,当初の地点から道路左方に50~80cmほど寄った地点へと走行したことが窺えるけれども,これをもって,本件事故発生当時,原告が原告車の進路を急激に左方向に変更したは推認し難く,・・・・・・原告の急激な進路変更の事実を認めることはできない。そして,証拠から窺える上記のような走行を原告車がしていたとしても,これは,自転車の走行方法として通常あり得るものであることは明らかであり,これが被告の帰責性を減ずる事由となるともいえない。
自転車を完全にまっすぐ直線に走行させることは困難ですので、この裁判例では、通常の運転といえる程度に左右に動いてしまったことが接触の一因だとしても被害者の過失には当たらないと判断し、加害者の過失相殺の主張を認めませんでした。
この裁判例と同じように、加害者が加害者の自転車を運転し,被害者の自転車の後方を進行していたところ、被害者の自転車が左に寄ったと認識したため、被害者の自転車を右側から追い越そうとして,その右側を加速進行し,並進し始めたところ,被害者の自転車が右に寄ってきたことから,加害者の自転車と被害者の自転車とが接触したという事例(東京地判平成26.3.12)でも、裁判所は、加害者が被害者を追い越す際に被害者の自転車が加害者側に寄ったことは認めつつも、自転車は,必ずしも一直線に進行するわけではなく,若干ふらつきながら進行せざるを得ないものであることなどを理由に、自転車が他の自転車を追い越そうと並進する形になった場合において,どちらか一方又は双方の自転車の通常のものといえる程度のふらつきにより接触が生じたときは,基本的には追越自転車の過失によるものと評価することが相当であると述べています。
ただし、多量の荷物を載せながら不安定な状態で走行していた場合には、そのことが過失と認められることがあり得ます。(大阪地判平成16.1.16)
追越自転車が追い抜かれた自転車に接触した事故②
この裁判例は、先ほどの裁判例と異なり、被害者が信号のない交差点を直進するつもりで差し掛かった時に、交差点入口付近で加害者が被害者を追い抜き、被害者の前で大回りしながら左折しようとしたところ、被害者が加害者を避けられずに原告自転車の前面が加害者自転車の後部と衝突してしまったという事例です。
加害者は、被害者が前方を注視していなかったことや進路を変更したことが事故の原因であると主張しました。
裁判所は次のように述べ、被害者の過失を否定しました。
横浜地判H29.3.29
被告車両が原告車両との衝突を避けようとして大回りをしたことや,原告車両も本件交差点手前の一時停止標識に従わなかったことを考慮しても,原告としては,バックミラー等がない自転車において,後方から進出して原告車両の右方から原告車両を追い越し,突然原告車両の進路前方に現れた被告車両との衝突を回避する措置を執ることは困難であったのに対し,被告Y1は,先行する原告車両の動向を注視し,原告車両との接触を避けることが十分に可能であったもので,原告と被告Y1との過失割合は,0%対100%であるといわざるを得ない。
バックミラー等がない自転車の運転者は後方の確認が難しいのに対して、後方から追い抜こうとする自転車の運転者は互いの位置関係を把握しやすく接触を回避することが十分に出来たために、追越自転車の過失が大きいと判断されたものと考えられます。
平成29年1月27日名古屋地裁判決でもこの横浜の事例と似た、加害者が、被告自転車を運転し、被害者自転車を進行方向左側から追い抜き、さらに、その先の交差点を右折し始めたところ、被害者自転車の前輪と加害者自転車の後輪が衝突したという事例において、被害者の過失を認めませんでした。
追越の際に接触した事故の場面では、自転車にはバックミラーが設置されていないこと多く背後の状況が確認しづらいことや、二輪車であるため走行時に不安定になりやすく不意な出来事をきっかけに転倒しやすい乗り物であることといった自転車の特性から、追越をする際には、周囲の状況を把握しやすい後続車(追い抜こうとする自転車)には、ベルを鳴らして自分の存在を知らせたり、十分に間隔を確保したりするなど多くの注意義務が課されているといえるでしょう。
交差点での衝突事故①
被害者は、自転車に乗って西から東に道路を走行し、十字交差点手前に差し掛かり、加害者は、自転車に乗って南から北に走行し、同交差点に侵入して左折したところ、加害者の自転車が被害者の自転車に衝突したという事故です。
本件事故は、加害者は、一時停止規制を守らず、カーブミラーによる進路の安全確認を怠ったのに対して、被害者は、交差点の手前で停止しているため、この点を見れば、本件事故は加害者の一方的な過失によるものであるといえると考えられます。
もっとも、本件では、被害者は道路の右側を走行しており、道路左側を通行する義務に違反していたため、被害者にも過失があるのではないかという点が問題となりました。
この点について、裁判所は、つぎのように述べて、被害者の過失を否定しました。
大阪地判R2.11.20
確かに,原告自転車は西側道路のやや右側に位置していたと窺われるものの・・・・・・,西側道路は幅員2メートルの道路であり,自転車の左側通行が厳格に求められるとは直ちにいえないし,このような狭い道路で原告自転車が左側に位置していても,一時停止せずに左折してきた被告自転車との衝突を回避できたとは考えられない。そうすると,原告自転車が西側道路のやや右側に位置していたことをもって,これを原告の過失であるとして過失相殺を行うのは相当ではない。
自転車は道路の左側を通行することが義務づけられていますし(道路交通法17条4項)、交差点を左折しようとする加害者からすると、右側を走行している被害者との衝突を回避することは難しいと思われるので、道路の右側を通行している被害者にも過失があるともいえそうです。
しかし、裁判所は、本件事故態様の下では、被害者の自転車が左側に位置していても、加害者の自転車との衝突を回避することは避けられなかったとして過失相殺を行いませんでした。
自転車同士の事故においては、免許制度や車検制度がないといった事情から道路交通法の遵守を前提としないというわけではなく、本件の道路状況などから仮に被害者が左側を走行していても事故が発生してしまったと考えられるため、被害者の走行位置は本件の事故発生に影響を与えたとはいえず、過失相殺をしなかったということだと考えられます。
交差点での衝突事故②
最後の事例紹介です。加害者は,自転車を運転して、東西道路の右側歩道上を西方向から本件交差点に向かい本件交差点を右折しました(右折するためにブレーキを強めて速度を落としたものの,本件交差点の南方向からくる車両の有無や動静を確認はしていませんでした。)。
被害者は、自転車を運転して、南北道路の左側歩道上を南方向から本件交差点に向かって走行していました(日傘の柄を握った右手をハンドルに乗せるようにして走行していました。)。
本件交差点を右折した加害者は、被害者の自転車に気付き衝突を避けようとしましたが、加害者の自転車の前輪が、被害者の自転車の前輪付近に衝突してしまったという事例です。
加害者は、被害者には前方などを注視・減速して直進進行する義務に違反した過失があったため過失相殺するべきであると主張をしました。
また、車両等の運転者は、ハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作して他人に危害を及ぼさないような方法で運転する義務を負っている(道交法70条)ので、日傘を差しながら運転していた被害者にも過失があるとも思え、過失相殺されるべきかが争点となりました。
しかし、裁判所は、つぎのように加害者の主張を認めず、過失相殺はしませんでした。
名古屋地判 H20.2.29
本件事故当時,・・・・・・未だ本件交差点に差し掛かる以前であった原告には本件交差点左方の注視義務は認められない。さらに,原告車両の速度は,原告の年齢等の属性や前記運転態様に照らすと,相当に低速であったものと推認されるところ,未だ本件交差点に差し掛かる以前であった原告に減速義務は認められない。
・・・・・・
本件事故態様に鑑みると,・・・・・・原告が,両手でハンドルを把持していたとしても,・・・・・・本件事故態様の下では,原告にとって本件事故及びこれによる損害の発生は避けられなかったものと解される。
自転車同士の事故に関する無料相談
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このように自転車には自動車と違う特性もありますので、自転車で事故に遭われた方は、是非弁護士に相談することも検討してみてください。
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