ドラレコがなく、事故状況や過失割合が争いになっている。
車線変更、駐車場内の事故で保険会社が主張する過失割合に納得できない。

この記事は、このようなことでお悩みの方のために書きました。
ドライブレコーダーがない場合でも車の損傷状況から事故状況を証明するための方法について解説していますので参考にしてみてください。

本記事を執筆した弁護士

静岡城南法律事務所

山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、一人で年間120件以上の交通事故案件を手掛けている。慰謝料、後遺障害、過失割合に関する交渉・裁判を得意とする。

目次

事故状況を推認するために重要な証拠

交通事故が発生した場合、ドライブレコーダーの映像があれば、事故状況自体については争いはなく交渉や裁判を進められることが多いかと思います。

しかし、事故当時、たまたまドライブレコーダーが作動していなかったり、ドライブレコーダーを設置していなかったというケースも多くあります。
そのようなケースでは、どうしても事故状況に関する双方の主張が対立してしまうことが多くあります。

では、ドライブレコーダーの映像がない場合、どのようにして事故状況を証明していくのでしょうか。
事故当事者は、自分に有利なように嘘をついたり、意図的ではないにしても一瞬の出来事を正確に記憶して話すことは難しいので、当事者の説明は基本的には重視されません。
そのため、交渉や裁判では、客観的な証拠(動かしがたい事実)を軸に、事故状況が確定されていきます。
客観的な証拠としては、色々とありますが、今回は、車の損傷状況から事故状況を証明する方法について、実際に当事務所が扱ったケースを題材に解説します。

ケース1(相手方が後方から追い抜きながら車線変更をしてきた)

直線道路での直進車と車線変更車との事故です。

依頼者は右車線を走行する直進車側でした。依頼者の主張は、「相手方の車両が左車線から追い越しながら車線変更をしてきて、自分の車両に衝突した。」というものです。

図にすると、以下のようになります。
依頼者が㋐の地点で相手方は後方の①の位置を走行し、その後、相手方が加速して、依頼者が㋒のときに相手方が依頼者よりも前に出た③の位置で接触してきた、というものです。

 

 

それに対して、相手方の主張は、依頼者の車両が後方から加速して追い上げてきて衝突したというものです。

そのため、どちらの車が後方から追い上げてきたのか、速度が出ていたのか、という点が争いになっていました。

こちらの写真をご覧ください。依頼者の車のフロントバンパー左側の損傷を撮影したものです。

そこには、相手方車両の青白い塗料が付着しており、塗料は後方から前方に向けて面積を広げ、前方に堆積していることが分かります。

この点、一般的には、後方から前方への入力があった場合、損傷面が「薄い」から「濃い」に変化し、加えて、損傷面の付着塗料の面積が広くなります。また、後方から前方への入力があった場合、入力方向である前方に向かって塗料の堆積が形成されます(「物損事故事件における立証から解決まで」髙畠希之著)。

このことから、依頼者の車のフロントバンパー左側面には、後方から前方に向けた入力があったこと、つまり、相手方の車両が後方から当該部分に接触した可能性が高いことがいえます。

衝突部位の構造、部品の変形や素材の違い、衝突前後の車両の動きなどから、必ずしも事故状況を完全に証明できるわけではありませんが、事故状況を推認する1つの材料になるかと思います。

 

ケース2(駐車場内での事故・停止していたことの証明)

次は、駐車場内での事故です。

依頼者がバックで駐車区画に駐車しよう斜めに後退していたところ、相手方車両が駐車区画から退出してきたため依頼者側が停止したと主張するものです。
しかし、相手方は、依頼者車両の停止を争い、依頼者車両が停止していたか否かが争点の1つとなりました。

図にすると以下のようになります。以下、依頼者を「青い車」、相手方を「赤い車」として説明します。
※青い車の矢印は、仮に、停止していなかった場合の進行方向を示しています。

仮に、双方の車両が後進中であった場合、衝突時にまず、青い車のリアバンパーパネルの角が赤い車のリアハッチパネルに押し込みによる凹み痕を形成します。
このとき、青い車の速度をVoとして、XY座標に置いたとき、水平方向成分Vxと垂直方向成分Vyに分解できます。

 

このことから、仮に、青い車が後進中であった場合、左向きの速度成分Vxを持つことが分かります。
左向きの速度成分Vxがある場合、青い車のリアバンパーパネルの角は、赤い車のリアハッチパネルに押し込みによる凹み痕を形成したあと、左方へ移動していくことになります(下の図の四角で囲った赤矢印の部分です。)。

つまり、どんなに僅かな移動量であったとしても、仮に、青い車が後進していた(停止していなかった)のであれば、赤い車のリアハッチパネルの表面に右から左(車両の助手席側から運転席側)へ向けて擦過傷を形成することになります。
しかし、赤い車のリアハッチパネルの表面には、凹み痕はあるものの、擦過傷はなかったことから、青い車は後進していなかった、つまり停止していた可能性が高いといえます。

こちらについても、衝突部位の構造、部品の変形や素材の違い、衝突前後の車両の動きなどから、必ずしも事故状況を完全に証明できるわけではありませんが、事故状況を推認する1つの材料になるかと思います。
また、過失割合の検討において、衝突の直前に停止してもあまり意味はなく、停止したタイミングも重要な要素となりますのでご注意ください。

車線変更や駐車場内での事故についての無料相談

いかがでしたか?
今回は、車が停止していたことや相手方車両の追い越しについて、車の損傷状況から証明する方法について解説しました。

現在、車線変更や駐車場内での事故など交通事故についての無料相談を実施しています。

弁護士費用特約に加入されている場合には、実質無料で交渉や裁判をご依頼いただけますので、お気軽にご相談ください。

新規のご相談・ご依頼の受付停止のお知らせ

誠に恐れ入りますが、現在、多くのご相談・ご依頼をいただいており、新規案件の対応が困難な状況となっております。
そのため、現在、新規案件のご相談・ご依頼を一時停止させていただいております。

新規相談の受付再開の際には、当事務所のホームページにてご案内いたします。

何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

本記事を執筆した弁護士

静岡城南法律事務所

山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、一人で年間120件以上の交通事故案件を手掛けている。慰謝料、後遺障害、過失割合に関する交渉・裁判を得意とする。

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