ご相談に至るまでの経緯

ご依頼者様は、横断中に自動車と衝突するという交通事故に遭われ、頭部に重い傷を負われました。脳に損傷を受けたことで、急性期病院での治療、リハビリ専門病院での懸命なリハビリを経てもなお重い障害が残り、記憶・判断・意思疎通などに著しい支障が生じる「高次脳機能障害」と診断されました。ご自身の身の回りのことを一人で行うことが難しく、常に介護を必要とする状態となってしまいました。

事故後は、ご家族が中心となって介護や各種手続を担われ、ご本人については成年後見の手続も必要となりました。

ご家族は、「これだけ重い障害のある本人に代わって、保険会社との難しい交渉を自分たちだけで進めるのは難しい」「将来にわたる介護費用や、働けなくなったことの補償まで、きちんと受け取れるのか不安だ」とお考えになり、当事務所にご相談・ご依頼くださいました。

本件のポイント(3つの大きな争点)

高次脳機能障害をはじめとする重度後遺障害の事案では、賠償額が数千万円〜億単位になることも珍しくなく、その分、保険会社(相手方)も金額を大きく争ってきます。本件でも、特に次の3点が激しい争点となりました。

① 逸失利益の「基礎収入」をいくらと見るか

逸失利益(事故がなければ将来得られたはずの収入の補償)は、重度後遺障害の事案で最も金額の大きい項目になることが多く、その出発点となるのが事故前の年収=「基礎収入」です。

ご依頼者様は、親族が経営する会社に勤務していました。これに対して相手方は、

「その収入は、親族の会社における“恩恵的な給付(おまけのようなもの)”にすぎない。実際の稼働能力を反映したものではないのだから、基礎収入として評価すべきではない」

と主張し、逸失利益を大幅に減額しようとしてきました。基礎収入が認められるかどうかで、賠償額は数千万円単位で変わってきます。

② 事故前からあった障害(既存障害)の「加重」の扱い

ご依頼者様には、本件事故の前から一定の障害が残っていました。このように、もともと障害がある方がさらに重い後遺障害を負った場合、「加重障害」として、賠償額の算定が一段と複雑になります。相手方は、この既存障害を強調し、「もともと十分に働けていなかったのだから、補償も少なくてよい」という方向で争ってきました。

③ 過失割合

事故態様をめぐって、相手方は過失相殺(被害者側の落ち度による減額)も主張してきました。

当事務所の活動

「親族の会社の給与だから減額」という主張に正面から反論

当事務所は、相手方の「恩恵的給付だから基礎収入にならない」という主張に対し、次のように反論しました。

  • 収入は、身体能力や仕事内容だけで決まるものではなく、それ以外の事情によって決まることの方がむしろ多い。障害があっても、それを織り込んだうえで現に支払われていた給与は、立派な「基礎収入」として評価できる。
  • 国の助成を受けて障がいのある方を雇用し、他の従業員と同水準の給与を支払う例があるように、障害を考慮したうえで現実に支払われていた給与は、そのまま基礎収入として評価されるべきである。
  • ご依頼者様も、現に勤務して業務をこなし、その対価として給与を得ていた。事故によってその収入を完全に失った以上、「たまたま雇い主が親族だった」という一点で補償を減らすのは、公平な損害の評価とはいえない。

このように、現実に得ていた年収を基礎収入とすべきであり、労働能力喪失率は100%とすべきであることを、具体的な根拠とともに丁寧に主張しました。

重度後遺障害だからこそ漏らせない損害を、徹底して積み上げる

要介護の重度後遺障害では、目に見える治療費だけでなく、将来にわたって発生し続ける損害を漏れなく拾い上げることが、適正な賠償を受けるうえで決定的に重要です。当事務所は、次のような項目を一つひとつ根拠資料とともに積み上げました。

  • 将来介護費(ご家族による付添介護分・施設での療養費用を踏まえた算定)
  • 入院付添費・入院雑費
  • 近親者の慰謝料
  • 装具・器具の購入費用自宅・自動車などの改造費用
  • 成年後見の申立費用・後見人(監督人)報酬 など

これらを精緻に主張・立証したうえで訴訟を提起し、最終的に裁判所の関与のもとで和解協議を進めました。

解決結果

粘り強い主張・立証の結果、訴訟上の和解が成立し、すでに受け取っていた自賠責保険金などと合わせて、総額約8,150万円を獲得することができました。内訳は次のとおりです。

最も大きな争点であった基礎収入は当方の主張に沿った形で評価され、逸失利益を大幅に確保することができました。重度後遺障害に特有の将来介護費や近親者慰謝料なども含め、適正な賠償を実現できた事案です。

ご家族からは、「将来の介護のことまで含めて、これだけの補償を受け取れるとは思っていなかった。これで少し先の見通しが立った」とのお言葉をいただきました。

弁護士からのひとこと(解決のポイント)

高次脳機能障害などの重度後遺障害の事案は、賠償額が大きくなる一方で、保険会社も逸失利益や将来介護費を全力で争ってきます
しかし、現に得ていた収入や、現に必要となっている介護の実態を、法的な裏付けとともに丁寧に主張すれば、適正な賠償を勝ち取ることは十分に可能です。

将来介護費・近親者慰謝料・家屋改造費・成年後見人報酬など、重度後遺障害に特有の損害項目は、ご本人やご家族だけで漏れなく請求するのは容易ではありません。「保険会社の提示額や説明は本当に正しいのか」と少しでも不安を感じられたら、示談を成立させてしまう前に、ぜひ一度ご相談ください。

重度の後遺障害でお悩みのご家族へ

当事務所では、重度後遺障害の事案を数多く取り扱っております。

  • ご本人に代わって、ご家族からのご相談・ご依頼を承ります
  • 成年後見が必要なケースのサポートも可能です
  • ご相談は何度でも無料です

「これからの介護や生活のために、受け取れるものはきちんと受け取りたい」——そのお気持ちに、私たちが全力でお応えします。まずはお気軽にお問い合わせください。

この事件を担当した弁護士

静岡城南法律事務所

山形祐生(やまがたゆうき)

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

静岡県交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新の裁判例等の研究をしている。静岡県外からの相談・依頼も多く、一人で年間150件以上の交通事故案件を手掛けている。慰謝料、後遺障害、過失割合に関する交渉・裁判を得意とする。

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