並走状態から車線変更があった場合の過失割合~事故状況の証明|静岡の弁護士が解説

並走状態から車線変更されて、横からぶつけられた!
加害者は、私が後ろからスピードを上げて衝突してきたと主張し、事故状況について争いがある。

こんにちは!静岡の弁護士の山形です。
今回は、隣の車線を並走していた車が突然、車線変更してきたという事故について解説しています。
保険会社が事故状況を争っているという方はぜひ参考にしてみてください。

なお、並走状態から車線変更があった場合の過失割合の考え方については、次の記事を参考にしてみてください。

静岡法律事務所
弁護士 山形祐生(やまがたゆうき)
静岡県弁護士会所属
事務所所在:静岡市葵区馬場町43番地の1
連絡先:054-254-3205
日本交通法学会に所属し、交通事故に関する最新判例等を研究している。
静岡市を中心に静岡県内で交通事故について多くの依頼を受け、特に、後遺障害、死亡事故、主婦(主夫)の休業損害に関する依頼が多い。
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事故状況の立証方法 

事故状況を証明する証拠として、最初に検討されるべきは、実況見分調書です。
実況見分調書に記載された内容に争いがない場合には、通常、実況見分調書に基づいて事故状況が認定されることになります。

例えば、次の裁判例でも、当事者間で実況見分調書に記載された事故状況(並走状態からの車線変更があったこと)について争いがなかったことから、実況見分調書に基づいて、事故状況について認定されています。

静岡地方裁判所・平成31年3月14日判決

 証拠によれば,本件事故から約2か月後の平成28年11月4日に,当事者双方立会いの下で,当事者双方の指示説明に基づき,警察官によって見分図面を含む実況見分調書が作成されたことが認められるのであって,原告と被告は,いずれも,それぞれが指示説明したとおりに本件実況見分調書が作成されたことを認めているのであるから,本件事故の態様については,本件実況見分調書中の見分図面や当事者双方の指示説明等に基づいて事実関係を認定するのが相当というべきである。
 ・・・原告が法定速度を遵守して原告車両を運転して片側2車線直線道路の第1車線を直進走行していたところ,第2車線をほぼ並走して直進走行していた被告の運転に係る被告車両が安全確認を怠ったまま第1車線への車線変更を開始し,既にほぼ真横にいた原告車両に一方的に衝突してきたのであり,車線変更開始から衝突(接触)まで僅か1.5秒にも満たなかったというのであるから,原告からすればおよそ結果回避可能性がなかった事故というべきであり,本件事故発生に対する過失割合は,原告0%,被告100%と認めるのが相当である。

しかし、物損事故の場合、基本的には、簡易な報告書が作成されるだけで、実況見分調書が作成されることはありません。
また事故状況について争いがあり、実況見分調書に記載された当事者の説明内容が最初から食い違っている場合もあります。

そこで、実況見分調書がない場合や実況見分調書があってもその内容に争いがある場合、裁判所がどのような証拠に基づいて、事故状況を認定しているのか、実際の裁判例を見ていきましょう。

事故直後の車両の位置関係から両車両の速度を認定した事例

大阪地裁・平成25年6月14日判決

 本件事故後,被告車が原告車の前で停止したことにつき原告及び被告の供述は一致するところ,原告車と被告車の接触(本件事故)があった後にそのような状態になったということは,本件事故時に,被告車が原告車を追い抜いた可能性が高いといえ,したがって,被告車の速度が原告車よりも早かったといい得る。
 また,原告車及び被告車の損傷箇所は,原告車の右前タイヤ付近と被告車の左前ドア付近にあることからすれば,原告車と被告車は,ほぼ並走していた状態のときに接触したといえる。
 以上からすれば,本件事故は,被告車が原告車よりも速度が速く,被告車が原告車の後ろから来たところ,原告車と被告車が,ちょうど並走状態になったときに発生したものと見るのが相当である。そして,被告車が,原告車に気づかないまま,並走状態のときに,左に車線を変更したか,車線から左側に被告車をはみ出して走行したことによって生じたものといえる。
 さらに,原告は,原告車は,本件事故現場手前の脇浜町3丁目交差点の信号が赤色だったため停止し,信号が変わって発進した後に本件事故が生じ,かつ,本件事故現場から少し先で左折する予定であった旨供述するところ,同供述からすれば,原告車の速度はそこまで出ているとは考えにくく,一方,被告は,本件事故前,脇浜町3丁目交差点などの信号で停止した記憶がなく,同交差点の信号が青色のまま,すなわち,時速40kmから50kmのまま,交差点等で停止せずに走行していた旨供述するところ,これらの原告及び被告の供述と前記事故態様は一致する。

第1車線を走行していた原告車と第2車線から第1車線に車線変更した被告車の接触事故(被告車が左に寄って発生した事故)です。

裁判所は、原告車と被告車が接触した後、「被告車が原告車の前で停止した」という事故直後の両車両の位置関係に基づいて「本件事故時に,被告車が原告車を追い抜いた可能性が高いといえ,したがって,被告車の速度が原告車よりも早かったといい得る」と判断しています(①)。
つまり、仮に、原告車の速度の方が被告車よりも速かった場合、前方にいた被告車が進路変更した(判例タイムズ【153】図参照)という事故状況になる場合がありますが、裁判所は、これを否定しています。

そして、原告車の右前タイヤ付近に損傷があること、被告車の左前ドア付近に損傷があるという両車両の損傷箇所を基に「原告車と被告車は、ほぼ並走していた状態のときに接触したといえる。」と判断しています(②)。

事故直後の位置関係から両車両の速度を認定し、両車両の損傷箇所から走行時の位置関係を認定している点は参考になります。

また、「原告は,原告車は,本件事故現場手前の・・・交差点の信号が赤色だったため停止し,信号が変わって発進した後に本件事故が生じ,かつ,本件事故現場から少し先で左折する予定であった旨供述するところ,同供述からすれば,原告車の速度はそこまで出ているとは考えにく」いと判示するとおり、事故前の状況や進行予定も事故状況の立証に役立つ場合もあります。

なお、本件では、原告車両と被告車両の損傷の入力部位からすると、原告車の方が被告車より速かったと考える余地もありましたが、裁判所は以下のとおり、「原告車と被告車の並走の間,一時的に原告車の速度が被告車より若干速い状態のときはあると考えられ,・・・これらの損傷が前記事故態様と矛盾するとまではいえない。」と判断しています。

 原告車の損傷は,12時方向及び12時30分方向からのものであり,一方,被告車の損傷は,11時方向及び9時方向からのものであることからすれば,原告車が後ろから,被告車よりも速度が若干早い状態(原告車が被告車を追い抜くような状態)で接触したと考えるのが自然とも思われる。
 しかし,損傷の状態については,原告車と被告車の並走の間,一時的に原告車の速度が被告車より若干速い状態のときはあると考えられ,また,被告車には9時方向の損傷があることからしても,これらの損傷が前記事故態様と矛盾するとまではいえない。

擦過痕の入力方向から両車両の速度を認定した事例

名古屋地裁・平成31年3月6日判決/自保ジャーナル・第2049号

 ・・・被告らは、事故態様について、進路変更しようとした被告車にその後方から直進してきた原告車が衝突したものである旨主張し、被告乙山も、被告車の左後方を走行していた原告車が被告車よりも速い速度で走行し、被告車に追い付いて本件事故が発生した旨供述する。
 しかし、・・・原告車の右側面には、後方から前方にかけての入力方向5時からの擦過痕が生じており、かかる損傷は、被告車が原告車よりも速い速度で原告車の後方から衝突したことにより生じたと考えられるところ、被告乙山の上記供述を前提にすると、本件事故発生時、原告車の方が被告車よりも速い速度で走行していたこととなるのであるから、被告乙山の上記供述は、原告車の損傷状況と整合しないものであって、採用し難いといわざるを得ない。

第2車線を走行していた原告車と第3車線から第2車線に車線変更した被告車が衝突したという事故です。

被告は、「進路変更しようとした被告車にその後方から直進してきた原告車が衝突した」と主張していました。
つまり、判例タイムズの【153】図の進路変更車と後続直進車との事故であるから、原告にも30%の過失があると主張していたわけです。

しかし、裁判所は、「原告車の右側面には、後方から前方にかけての入力方向5時からの擦過痕が生じており、かかる損傷は、被告車が原告車よりも速い速度で原告車の後方から衝突したことにより生じたと考えられる」として、被告の主張を認めませんでした。

入力方向というのは、接触時に発生した力の作用する方向のことで、時計の方向(1時~12時)で表されます。
入力方向として示されるベクトルは、両車両の衝突によって発生した2つの力が合わさったものという点に注意してください。
つまり、単純に、相手の車が衝突してきた方向を意味するとは限りません。

例えば、以下のような交差点での衝突事故があったとします。

調査の結果、赤い車への入力方向は11時の方向だったとします。

この入力方向を分析すると以下の図のようになります。

①が入力方向です。
②青い車が赤い車に加えた力の方向です。
③赤い車が青い車に加えた力の反力です。
④赤い車が青い車に加えた力です。

つまり、青い車が11時方向から赤い車に衝突したわけではなく、9時方向からの力(②)と赤い車が青い車に加えた力(④)の反力(③)が合わさって、11時の入力方向となるわけです(①)。

どのような擦過痕であれば、どのような入力方向があったといえるのかということを理解するには、専門的な知識が必要になります。
そのため、入力方向から事故態様を立証しようとする場合、可能であれば、専門の鑑定を依頼して意見書を証拠として提出することをオススメします。
鑑定費用は高額なので、物損事故の場合には、費用対効果が微妙なこともあります。
しかし、もし、弁護士費用特約を利用できる場合には、鑑定費用も弁護士費用特約から出せることが多いので、積極的に利用することを検討してみてください。

実況見分調書の信用性が争いになった事例

大阪地裁・平成30年6月28日

 本件事故現場付近は、大阪市内でも交通量の多い場所であり、別紙図面の停車車両の位置に車両を停止することは、著しく通行の妨げになるのであって、むしろ歩道に接する位置に停車するのが自然であること、上記のとおり交通頻繁である上、上記実況見分は本件事故の約30分後に開始されたものであることからすると,警察官が本件事故現場に臨場した時点で、停車車両が本件事故当時と同じ位置に停止したままであったのかは疑わしく、別紙図面の停車車両の位置は、被告の指示説明に基づくものである可能性があるところ、被告においては、原告車と接触する直前まで原告車の存在や動静を意識していた形跡がなく、ましてや原告車の左方に停止していた停車車両の位置を正確に認識していたとは考え難いことに照らせば、上述した別紙図面の性質を考慮してもなお、停車車両の位置に関する別紙図面の記載は、その正確性に疑問の余地があるといわざるを得ない。また、別紙図面の被告の指示説明も、原告車が第2車線内に進入したとするものではないし、接触地点が第2車線内であったとするものでもない。以上によれば、被告の主張は採用することができない。

第1車線を走行する原告車と第2車線を走行する被告車とが接触した事故です。
被告は、実況見分調書を証拠として、原告車が第1車線に停車中の車両を避けるため車体の一部を第2車線に進入させたと主張していました。

しかし、裁判所は、実況見分調書について、「停車車両の位置に関する別紙図面の記載は、その正確性に疑問の余地があるといわざるを得ない。」として、被告の主張を退けました。

本件で争いになった停止車両の位置が記載されていたのは、実況見分調書に添付されていた交通事故現場見取図です。
現場見取図は、警察官が現場で実況見分を行ったうえで作成するものですから、一般論としては、信用性が高いものと考えられます。
しかし、本件のように裁判所が指摘するような信用性を減殺する事情(引用判決文の太字部分)がある場合には、信用性が否定される場合があるということで紹介させていただきました。

まとめ

いかがでしたか?
今回は、並走状態から車線変更があった場合の事故状況の証明方法について、裁判例を中心に解説しました.
そもそも並走状態だったか否か争いになっているという場合は、参考にしてみてください。

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弁護士 山形祐生(やまがたゆうき)
静岡県弁護士会所属
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静岡市を中心に静岡県内で交通事故について多くの依頼を受け、特に、後遺障害、死亡事故、主婦(主夫)の休業損害に関する依頼が多い。
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